高脂血症
 高脂血症は『生活習慣病』です。
体内で血液中の脂質が増える状態を高脂血症といいます。
動脈硬化になる危険因子ですので、食事や運動・特定保健用食品などを
うまく組み合わせて予防しましょう。
高脂血症とは・・・
 
 血液は赤血球・白血球・血小板・血漿(けっしょう)で構成されています。
この血漿から繊維素を除いたものを血清といいます。
血清にはグルコース・アルブミン・ホルモン・ミネラル・脂質などが含まれています。
 脂質は大きく分けると、コレステロール・中性脂肪・リン脂質・遊離脂肪酸があり
この四つの脂質を血清脂質といい、どれか一つでも血清濃度が高い状態を
高脂血症】といいます。

 通常はコレステロールと中性脂肪の過剰を問題にしており、
前者を高コレステロール血症・後者を高中性脂肪血症といい、
この二つをまとめて高脂血症というのが一般的です。

 高脂血症は動脈硬化を進行させる最大の危険因子とされ、放置しておくと
狭心症や心筋梗塞などといった虚血性疾患や脳梗塞などの脳血管障害を
引き起こします。
 高脂血症は身体症状が現れにくい病気で上記などの理由から『死の四重奏』とも
サイレントキラー(自覚症状もなく殺戮するという意味)』とも呼ばれます。

 また、血中の脂質が増えることから糖質の代謝に以上が生じ、
代謝に重要な働きをする肝臓や膵臓の病変を招き、脂肪肝や急性膵炎、
胆石を発症する場合もあります。

 高脂血症は食生活の欧米化により、脂肪の摂取が増えてきたことが原因とされています。
以前は中高年の病気とされていましたが、近年は30歳未満の若い方にも高脂血症が増えており、
原因は子供のころからの血清脂質の増加につながる食生活や運動不足、肥満、
受験などのストレス、喫煙年齢が若年化してきたといった生活環境が要因とされ、
今後ますます増えていくと予想されています。

生活習慣病と血液


 
体内の脂質とは・・・

 中性脂肪やコレステロールは水に溶けないので、肝臓や小腸で脂質の表面をたんぱく質の一種である
アポたんぱくで覆った親水性のリポたんぱくに変換されて、体内の隅々に運ばれます。
 このリポたんぱくは粒子の比重によって、カイミクロン、超低比重リポたんぱく(VLDL)、
低比重リポたんぱく(LDL)、中間比重リポたんぱく(IDL)、高比重たんぱく(HDL)の
5種類に分類されます。よく血液検査の結果に出てくるものです。
 摂取した脂質はまず小腸で分解吸収され、カイミクロンが小腸壁で合成され血液中に入り、
全身をめぐります。よって食後すぐの血液中にはカイミクロンが増加しており、
その80〜90%は中性脂肪です。このときに【リポたんぱくリパーゼ】という酵素によって
一部が分解されエネルギー源になり、残りは肝臓へ運ばれます。
 その後、肝臓でVLDLが合成され、からだ中の組織に脂肪分を運びますが、
その約55%が中性脂肪です。
 中性脂肪は途中で細胞に蓄えられたり、エネルギーとして消費されたり、
リポたんぱくリパーゼによってIDLとなります。

 LDLの半分近くはコレステロールです。LDLは細胞の表面にあるLDL受容体と結合して
細胞内に取り込まれたんぱく質と脂質が分解されます。脂質の分解で生じた遊離コレステロールは
細胞膜の形成などに利用されますが、過剰になった遊離コレステロールは細胞内に貯蔵されます。
 動脈壁の最も内側の細胞下の遊離コレステロールがたまってくると、動脈硬化を引き起こす危険が
あることから、一般に悪玉コレステロールといわれます。
 よく勘違いされている方がおられますが、「コレステロール=悪いもの」ではありません。
コレステロールは、細胞膜を形成したり、その弾力性を維持するのに重要な働きをしています。
また、コレステロールの半分以上は脳や筋肉に集まっています。
神経線維には10〜30%のコレステロールが含まれていて、神経の電気信号をスムーズに
脳や器官に送る働きもしています。
 HDLは肝臓や小腸で作られ、ほとんど中性脂肪を含まずに、約50%のアポたんぱくと、
コレステロールや リン脂質からなります。
HDLは細胞表面のコレステロールを受けとり、肝臓へ送る働きをするため
善玉コレステロールとよばれます。
 コレステロールが多いと動脈硬化を促し、少なすぎると血管壁が弱くなって
脳卒中などの危険が高まります。
健康な状態では、総コレステロール、LDL、HDLのバランスがとれていますが、
総コレステロールとLDLが高い値を示すようになると危険な高脂血症となります。


高脂血症の診断基準と異常度
・診断基準                  (mg/dl)
血清脂質 正常値 高脂血症境界線
総コレステロール 150〜219 220以上
LDLコレステロール 70〜139 140以上
中性脂肪 50〜149 150以上
HDLコレステロール 40以上 40未満
・異常値                         (mg/dl)
血清脂質 軽 度 中等度 高 度
総コレステロール 220〜259 260〜299 300以上
LDLコレステロール 140〜179 180〜219 220以上
中性脂肪 150〜299 300〜749 750以上
HDLコレステロール 39〜35 34〜30 29以下
厚生労働省・日本医師会編「高脂血症診療のてびき」より
 高脂血症は血清脂質から測定します。血清中の総コレステロール、中性脂肪、
HDLコレステロールを測定し、LDLコレステロールは測定式から計算されます。
高脂血症の異常度は治療の際の参考になるように、軽度、中等度、高度に分類されます。


高脂血症の治療
 基本的には食事療法と生活の改善ですが、その他に薬による治療などがあります。

・生活の改善
  家族性高脂血症を除いて、症状が軽い場合は生活習慣の改善により、
血清脂質値を下げることができます。
生活面で特に改善が必要なのが、運動不足、飲酒と喫煙です。
 運動は、長時間たまにするより短時間でも回数を多くし、
ウォーキングやエアロビクスダンス(30分程度)といった有酸素運動
を継続するほうが、
LDLが減少しHDLが増加して体重が減少します。
 定期的に運動するには、スポーツジムやスイミングに通う以外に日常生活でも、
出来るだけ体を動かすことです。
体が軽くなったり、動くのが苦でなくなったと感じる頃には、
体重も減り血清脂質の値も下がっています。
 アルコールは過飲すると中性脂肪濃度やVLDLを増やします。
また急激に大量のアルコールを口にするとHDLが低下するという動物実験の結果もあります。
しかし、適度なアルコールはHDLを増加させるという調査もありますから、
血清脂質や代謝に影響を与えない程度の飲酒であれば問題ないといえるでしょう。
一般に、1日25mg程度で、ビールなら大ビン1本、日本酒なら1合、
ウイスキーならシングルで2杯ぐらいが適量です。
 喫煙は善玉コレステロールを低下させ、悪玉コレステロールを増加させて
動脈硬化を促すことが、実験で確かめられています。
タバコの本数を減らしたり、禁煙しましょう。

・食事療法
  血清脂質に影響を与える食事の因子としては、総エネルギー量、
脂肪の摂取量、コレステロール量、脂肪酸の種類、たんぱく質の量と種類、
炭水化物の量と種類、ビタミンとミネラルの摂取量、食物繊維の種類と量などがあげられます。
 総エネルギーの過剰の原因が脂肪の取りすぎにあるとコレステロール値が増え、
炭水化物の取りすぎが原因であれば中性脂肪値が上昇します。
性別や年齢、労働量により多少違いますが、
肥満のひとは1日1600Kcalを目安に節食します。(通常、平均2000kcalとされています)
 また、総エネルギーに占める脂肪摂取量の割合も考慮しなければいけません。
1日の脂肪の総摂取量は総エネルギー量の25%以下に抑えましょう。
特にWHO分類でI型やV型の高脂血症の人は、
脂肪量を1日20g以下(エネルギー換算で180Kcal以下)
にします。動物性脂肪を少なくして、大豆や植物性脂肪で半分以上を補います。
 コレステロールの摂取量が多いとコレステロール値が高くなります。
1日の量は300mg以下に抑えます。家族性高脂血症では100mg以下に抑えます。
コレステロールが多い、鶏卵、レバー。魚卵など動物性食品は控えめにします。
イモ類、穀類、根菜類、海藻等に多い食物繊維はコレステロールの排泄を促すので、
積極的にとりましょう。
食物繊維では、特にバナナ、アンズなどに多いペクチン、こんにゃくに含まれる
マンナンなどの水溶性のものが血清コレステロールを低下させます。

 脂肪酸には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、があります。
このうち、獣肉やバターなどに多い飽和脂肪酸は血清コレステロールを増加させ
植物油やマグロ、サバ、イワシなどの青魚に多い多価不飽和脂肪酸は
血清コレステロールを低下させます。なかでも、青魚に含まれるエイコサペンタエン酸
(EPA)やドコサヘキサエン酸には、血清脂質を低下させ、
善玉を増やし血栓の形成を抑える働きがあります。

 また、一価不飽和脂肪酸はオリーブ油、ナタネ油、落花生などに含まれていますが
善玉コレステロールを低下させずに、悪玉コレステロールを減らし、
虚血性心疾患の予防に有効です。飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸、
多価不飽和脂肪酸の割合を1:1.5:1にします。
 タンパク質では、動物性タンパク質の摂取は血清コレステロールを増加させ
大豆などの植物性タンパク質は血清コレステロールを低下させます。
動物性タンパク質と植物性タンパク質は2対1の割合で摂取するとよいでしょう。
 炭水化物では、しょ糖などの糖質が血清中性脂肪を増加させるので
ジュースやお菓子の摂取は注意が必要です。
 そのはか、ビタミンCが血清コレステロールの低下に関係しています。
ミネラルでは、マグネシウムや銅などが不足すると血清コレステロールが上昇します。

・薬による治療
  運動や食事によっても高脂血症が改善されない人や、
高血圧、糖尿病など血清脂質値が上昇する病気を
合併している人、あるいは重度の高脂血症の人には、薬物療法を行います。
LDLコレステロールを1%低下させ、7年間維持すれば、
虚血性心疾患の発症を2%予防できる報告もあります。
 高脂血症の治療薬は、脂質代謝改善薬です。別名、動脈硬化治療剤ともいいます。
高脂血症のうちでも、高コレステロール血症か高トリグリセライド血症か、
さらに症状の重さによっても薬の種類は異なります。
 軽症の高コレステロール血症で、血清総コレステロール値を低下させる薬には、
γーオリザノール、ソイステロール、メリナミドなどがあります。
やや軽症の高コレステロール血症に対しては、パンテチン、
ニコチン酸誘導体、クロフィブラートといった薬が使われます。
中等度以上の高コレステロール血症に使われる薬は、
プロブコール、コレスチラミン、ブラバスタチンナトリウムなどです。
 高中性脂肪血症で、中性脂肪を軽度に低下させる薬は、パンテチン、
ニコチン酸誘導体、デキストラン硫酸ナトリウムなどです。
30%以上低下させるときにはクロフィブラート、たんぱく同化ホルモン、
デキストラン硫酸ナトリウム高用量とニコチン酸誘導体といった薬を使います。
高コレステロール血症と高中性脂肪血症の療法に効く薬にはフィブラート系の薬などがあります。
 薬によっては嘔吐、皮疹、かゆみなどの副作用が出ることがあります。また合併症によっては、
あるいは妊娠時には服用してはいけない薬があるので、そのようなときは必ず医師に告げます。
服用中に副作用が出たら、服用を中止し、医師の診察を受けて下さい。

コレステロールを含む食品

食品名 含有量mg/100g 目安量(g) コレステロール(mg)
ウナギ(蒲焼) 240 100 240
鶏卵(全卵) 470 50 235
鶏卵(卵黄) 1300 18 234
イカ(生) 300 60 180
タラコ(生) 340 50 170
豚レバー 250 50 125
牛レバー 240 50 120
アユ(養殖) 110 70 77
鶏肉(若鶏もも) 95 80 76
クルマエビ 150 40 60
牛肉(肩ロース) 65 80 52
ヒラメ(生) 65 80 52

 コレステロールが多い食品は、鶏卵の卵黄、豚や牛のレバー、ウナギやイカ
クルマエビといった魚介類です。これらの食品の過剰摂取はひかえましょう。


脂肪のとりすぎに注意し運動を継続する
 高脂血症は動脈硬化などを進行させる病気ですが、日常生活に注意すれば、十分予防ができます。
脂肪やコレステロールの取りすぎに注意したり、日ごろから運動を続けるなどを心がけます。
高脂血症の主な治療薬と副作用
分 類 薬剤名 副作用
コレステロール吸収抑制 γーオリザノール 眠気、めまい、ふらつき、悪心、嘔吐、便秘
下痢、腹部不快感など
ソイステロール 発疹、食欲不振、下痢、軟便、便秘、
胃腸障害など
コレステロール合成抑制 ブラバスタチン
シンバスタチン
肝機能障害、胃腸障害など
脂肪組織からの
脂肪酸放出抑制
ニコチン酸誘導体
(ニコチン酸
トコフェロール)
食欲不振、下痢、便秘、発疹、温感、
みずおちの痛みなど
リポたんぱく
リパーゼの活性化
エチルナンドロール 悪心、嘔吐、発疹、熱感、浮腫
女性はかれ声、多毛、月経異常など
男性は陰茎肥大、持続性勃起など
クロフィブラート 発疹、肝腫脹、胆石、悪心、食欲不振、
腹部不快感など
パンテチン 下痢、軟便、食欲不振、腹部膨満、
嘔吐など
デキストラン硫酸ナトリウム 食欲不振、胃部膨満感、下痢など
胆汁酸吸収阻害 コレスチラミン 胃・腹部膨満感、胃・腸不快感、嘔吐、
胸やけ、腹痛など


DEAGOSTINI メディファイルより参照
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