新生児黄疸
生後2〜3日すると、ほとんどの赤ちゃんの皮膚が黄色くなります。
生理的黄疸の場合は1〜2週間で消えていきます。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・白目の部分が黄色くなっていますか?
・皮膚の色が黄色いですか?
・便の色が白っぽくなっていますか?
・母乳やミルクをあまり飲みませんか?
・元気がありませんか?
・一日中うとうとしていることが多いですか?


新生児黄疸とは?
出生後の赤ちゃんの適応現象
 赤ちゃんは、胎内にいるときには臍帯(さいたい)を通して、母体から送られる酸素や栄養で
成長を続けます。子宮の中で羊水に包まれて、外界に触れることなく保護されています。
しかし、出生後は自分で呼吸し、母乳やミルクを飲んで、自力で消化吸収していかなければなりません。
 出生後は、胎内から外界への環境の変化に適応していくために、新生児特有の現象が
いくつか起こります。全身が黄色くなる黄疸もその一つで、出生直後の赤ちゃんの9割以上に
現れることから、新生児黄疸といわれています。


原因
血液中のビリルビンが増加する
 人の体内を流れている血液は、血球とよばれる有形成分と、血漿とよばれる体液成分から
なっています。赤血球は有形成分の大部分を占め、酸素や二酸化炭素を運ぶ役目があります。
赤血球は成人の場合120日前後、胎児赤血球は90日前後で寿命がきて、壊れていく溶血という
現象を起こします。
 溶血の際、赤血球に含まれているヘモグロビンが分解されてビリルビンという色素ができます。
間接ビリルビンといい、血液中では大部分がたんぱく成分のアルブミンと結合した形に
なっています。その後、肝臓にとり込まれてグルクロン酸という物質と結びついて直接ビリルビンとなり、
胆道を経て胆汁の成分として十二指腸に分泌され、大部分は便とともに排泄されます。
間接ビリルビンと直接ビリルビンを合わせて総ビリルビンといいます。
便が黄色いのは、ビリルビンの黄緑色の色素のためです。
 黄疸は、ビリルビンが血液中に増えて、皮膚や白目が黄色くなる症状です。
新生児期は溶血が盛んでビリルビンが増加するのに、肝臓の働きが不十分で十分に処理できません。
さらに、腸に分泌されたビリルビンが腸管壁より再吸収される腸肝循環(ちょうかんじゅんかん)という
現象があるために、黄疸が起こりやすいのです。
 ビリルビンについては害にばかり目が向けられていましたが、毒性のある酸素の代謝物と
結びつくことで中和剤の役割を果たし、酸素の毒性から赤ちゃんのからだを守っているとの
報告があります。
 常にビリルビンが新生児の体内にめぐっているのは、適応現象の一種との
考え方も出てきています。


種類
生理現象と危険な病的黄疸
 新生児に現れる黄疸の大部分は生理的なもので特に治療の必要はありませんが、
治療が遅れると危険な病的黄疸もみられます。

出生後、入院中にみられる黄疸
[生理的黄疸]
 赤ちゃんが母体の外の環境に慣れていく過程で起こる一時的な黄疸を、生理的黄疸といいます。
新生児黄疸の8割以上は生理的黄疸で、出生後、肝臓の働きが熟成してくるにつれて消えるため、
特に治療の必要はありません。
 黄疸は生後2〜4日で、目で見てわかるくらいに現れ、5〜7日ころにピークに達した後、
次第に薄くなり、だいたい2週間までには消えていきます。
 血中の総ビリルビン値は、正常児では出生直後は母体とほぼ同じ1mg/dl程度で、
日々数値が上がり、ピーク時には10〜18mg/dlくらいになった後、徐々に下がって、
多くは2週間以内に正常値に戻ります。
 この生理的黄疸の範囲を超えると、病的黄疸となります。生後24時間以内に黄疸症状が現れたり、
総ビリルビン値が高かったり、生後2週間以上黄疸が続く場合などです。
 また、低出生体重児(未熟児)は、黄疸の頻度も程度も高くなりますが、医療技術が進歩し、
NICU(新生児集中治療室)の増加や救急医療体制が整ってきたために、早期から適切な治療が
行えるようになっています。

[ビリルビン脳症(核黄疸)]
 新生時期の黄疸で、最も気をつけなければならないのがビリルビン脳症です。
新生児黄疸の主な治療の目的は、ビリルビン脳症の予防にあるともいえます。
 間接ビリルビン値が生理的黄疸の範囲を超えて異常に高いと危険で、なかでもアルブミンと
結合していない非結合ビリルビン値が高いと危険性が強まるとされています。
アルブミン非結合ビリルビンは大脳に付着しやすいため、中枢神経細胞を侵して
脳障害を起こす原因になります。
重症の場合は脳性麻痺や聴力障害、言語障害などの後遺症が残る場合や、
死に至る危険もあります。
 早期治療が普及して、めったにみられなくなりましたが、危険性が高いときには
交換輸血を行います。

[血液型不適合による黄疸]
 血液型不適合には、Rh式とABO型があり、いずれも早発性黄疸で、出生後24時間以内に
黄疸が現れます。
 Rh式血液型不適合は、母親がRh陰性(−)、赤ちゃんがRh陽性(+)の場合に
起こりやすくなります。第一子の妊娠中や分娩時に、赤ちゃんの血液が母親の血液に入って
抗体をつくります。第一子のときは問題ないものの、何回か妊娠を繰り返すと妊娠中に、
この抗体が胎盤を通って赤ちゃんの血液に入り、赤血球を壊して黄疸を引き起こします。
 出生直後、強い黄疸症状を現しますが、出生前からすでに貧血による心不全や胎児水腫を
起こしていたり、胎内で死亡することもあります。母親がRh陰性の場合は、病院では
妊娠早期から細心の注意が払われます。
 ABO型血液型不適合は、母親がO型で赤ちゃんがA型またはB型のときにごくまれに現れます。
Rh式と違い、初めての妊娠でも起こることがありますが、黄疸が現れても程度は軽く、
赤ちゃんが死亡することは、まずありません。

家庭で注意する黄疸
[母乳性黄疸]
新生児黄疸が3〜4週間たっても消えない場合を遷延性黄疸といい、多くは母乳を飲んでいる
赤ちゃんにみられる母乳性黄疸です。
 間接ビリルビン値が高くなって黄疸の症状が現れ、便の色も黄色くなりますが、黄疸以外に
異常がなければ、治療の必要はありません。
 母乳の場合に黄疸が多く現れる理由は明らかになっていませんが、一般には母乳中に
含まれる女性ホルモンのプレグナンディオールが、ビリルビンとグルクロン酸との結びつきを
抑制するためといわれています。
 かつて母乳性黄疸の場合は、いったん授乳を中止していたそうです。
しかし、せっかく出始めた母乳を中断する必要はないと考えられるようになりました。
むしろ母乳の回数を多く、たくさん飲んだ赤ちゃんのほうが、初期の黄疸を防ぐことができます。
腸の発達や便の排泄が早いなど母乳ならではの効果もあります。
 母乳性黄疸は、病的なものではなく、赤ちゃんも元気です。ただし、黄疸のある赤ちゃんが
一日中うとうとしていたり、元気がなかったり、哺乳力が低下している場合は、
遷延性黄疸を生じる感染症や代謝異常、肝臓内胆汁がうっ滞する新生児肝炎や胆道閉鎖症などの
疑いもあるので、医師の診察を受けましょう。

[肝機能や胆道の異常による黄疸]
 生理的黄疸が消えずに、しかも生後2週間前後から黄疸の症状がかえって目立つようになるときは、
新生児肝炎や胆道閉鎖症のおそれがあるので、すぐに小児科医の診察を受けましょう。
新生児期の肝炎と先天性の胆道閉鎖は、いずれも胆汁が排出できずに全身にたまって強い黄疸が
現れます。また、ビリルビンが便中に排泄されないため便の色が白っぽくなります。
 胆道閉鎖症は生後60日以内に手術をしないと予後が悪いため、早期の診察が大切です。
ただし、新生児肝炎と胆道閉鎖症の見分けは非常に難しく、手術によってはじめて正確に
診断がつくこともあります。


検査と診断
血液検査で原因を特定
 白目の部分や全身の皮膚の色から、まず診断を行います。
皮膚の色は、間接ビリルビン値が高い場合は比較的明るい黄色、直接ビリルビン値が高い場合は
やや黒っぽい感じになります。

[経皮的ビリルビン濃度測定法]
 病院では、ミノルタ黄疸計を使用して、皮膚の色からビリルビンの濃度を簡易測定します。
多くは赤ちゃんの安静時に黄疸計を皮膚にあて、表示値から血液中のビリルビン値を推定します。

[血液検査]
 黄疸計による測定でビリルビン濃度が高い場合は、血液検査を行い血清総ビリルビン値を調べます。
必要に応じて間接・直接ビリルビン値、肝臓の状態を知るGOT、GPT、非結合ビリルビン値などを
測定し、原因を特定します。

[その他の検査]
 血液型不適合が疑われる場合は、クームス試験で抗体の存在を調べます。
新生児肝炎や胆道閉鎖症のおそれがあれば、腹部超音波断層法やCT(コンピューター断層撮影)、
MRI(磁気共鳴映像法)などを行います。検査は黄疸の程度を知り、原因疾患が何であるか、
緊急性の判断などのために行われます。


治療
光線療法でビリルビンを破壊
 治療法は主に光線療法と交換輸血ですが、現在よほどの重症例黄疸でない限り、
交換輸血は行いません。ビリルビン値の急上昇や高ビリルビン血症などを早期に発見して、
光線療法によって抑える治療が中心です。

[光線療法]
 体内にたまったビリルビンを、からだの外から光線(光エネルギー)をあてて破壊することができます。
光線療法はきわめて有効な治療法で、治療を必要とするほとんどの黄疸に実施されています。
一般には副作用の少ないブルーライトかグリーンライトが使用されます。
 副作用として、体温の上昇、発疹、下痢などの症状が現れたり、皮膚や尿の色が暗灰色になる
ブロンズベビー症候群が起こることもあります。
いずれも治療が終われば消えていく一過性の症状です。

[交換輸血]
 黄疸の管理が早期から始められるようになり、光線療法による治療が効果を上げて、
交換輸血を行うことは非常に少なくなりました。
ビリルビン脳症の危険が高い場合や、重症の血液型不適合の場合などに行われます。


まとめ
ほとんどは自然に消える黄疸
 新生児黄疸は、出生後入院中に現れる生理的黄疸がほとんどで、退院時に症状が
多少残っていても、大部分は次第に消えていきます。病的な黄疸も入院中に発症することが
多いので、すみやかに治療が施されますから心配はいりません。
 だだし、退院後1ヶ月しても黄疸が消えなかったり、黄疸が強くなってくる場合には、
すぐに出産した産婦人科医又は小児科医の診察を受けましょう。

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