おたふくかぜ
耳の下からほおが腫れてくるのですぐにわかります。
子どものうちにかかったほうが軽くすむことが多い感染症です。


どんな病気ですか?
主に耳下腺が腫れるウイルスの感染症
 ムンプスウイルスが体内に入ることから発病する、急性伝染性疾患です。正しくは、
流行性耳下腺炎といいますが、左右両方の耳下腺(唾液を分泌する唾液腺のひとつ)が腫れると、
おたふくの顔のようになるために、一般的にはおたふくかぜと呼ばれています。しかし実際には
片側だけですんでしまったり、片側ずつ順に腫れたり、乳児ではほんのわずかしか腫れないこともあり、
両ほおがいっぺんに腫れておたふくのような顔になることはあまりないようです。
 耳下腺だけでなく、あごの下にある顎下腺や、舌の下の舌下線といったほかの唾液腺、
また膵臓や精巣、卵巣などの内分泌腺、脳や髄膜、脊髄などを侵すこともある全身感染症で、
子どもがよくかかる感染症のなかでは、比較的重い病気といえます。こじらせると髄膜炎を引き起こす
可能性も高いのですが、生命にかかわったり、重い後遺症を残すような合併症を起こすことはまずありません。

原因
ムンプスウイルスの飛沫感染で発病
 ムンプスウイルスに感染している人と話していて飛んできた唾液を吸い込んだり、感染した人の
くしゃみや咳で空気中にウイルスが飛び散って感染します。これを飛沫感染といいます。
感染力は強いのですが、ウイルスが体内に入り込んでも発病しない人(不顕性感染者)が30%ほどいると
いわれています。しかし、その人からは感染するので、注意が必要です。
 ウイルスは口を通って体内に入り、直接耳下線に達します。また、鼻咽頭の粘膜上皮や、気道の粘膜上皮で
増殖したのち、リンパ節でさらに増殖して血液の流れとともに全身の臓器に広がることも考えられています。
 冬から春にかけて多発する傾向がありますが、近頃では季節的な差はあまりないようです。
幼稚園や小学校などで集団生活をしている園児や児童に多くみられます。
4月に幼稚園や小学校がスタートすると間もなく、子どもたちがおたふくかぜで次々に休んでいくといった
状況は、珍しくありません。
 また、兄弟などからうつって乳児でもかかることがありますが、年齢が低いほど症状は軽くてすみ、
発熱もなく、耳下腺の腫れもごくわずかで気づかないことが多く、発病しても見逃されていることがあるようです。
 おたふくかぜは一度かかると、生涯免疫ができ、二度と発病することはありません。

症状
耳の下の腫れに痛みがあり、80%は発熱
 潜伏期間は、14〜24日ですが、感染から17〜18日ほどで発病することが多いようです。
食欲不振や頭痛、だるさなどを感じ始め、1〜3日ほどたつと、耳下腺が腫れてくるようになります。
 腫れは右か左のどちらかから起こります。そのまま片側だけのこともあり、1〜5日ほどしてもう片方が
腫れることもあります。左右同時に腫れることはめったにないようです。腫れた部分を押したり、
食事をしたときに、痛むようになります。とくに、すっぱいものを食べると痛むことが多くなります。
発熱は腫れとほぼ同時に起こりますが、小さな子どもではほとんど発熱することはなく、あってもあまり高くは
なりません。年齢の高い子どもほど発熱しやすく、小学校高学年程度に成長した子どもでは、
40℃ほどの高熱を出すこともあります。全体の割合としては、約80%が発熱しており、幼児の発熱なら
2〜3日で、高熱を出した場合でも4〜5日で治まります。
 耳下腺などの腫れも、2日目前後がピークで、以降、徐々にひいていき、1週間から10日もすれば、
ほぼ完全に治ります。

治療
特効薬はなく、対症療法で対応
 原因となるムンプスウイルスに対する特効薬はありません。ですから、症状に合わせた、対症療法が
行われます。薬としては、発熱、頭痛、耳下腺の痛みなどがある場合に解熱鎮痛剤が使われます。
また、耳下腺などの腫れや痛みに湿布を使うこともあります。
 発熱や腫れがある間はなるべく安静にし、発熱による脱水症状を予防するために水分は
たっぷりととるようにします。

子どもの合併症
髄膜炎を合併しやすい
・ウイルス性(無菌性)髄膜炎
 おたふくかぜの合併症で最も多いのが、ウイルス性髄膜炎です。症状の出ないごく軽いものを含めると
おたふくかぜの患者の約半数がかかっているといわれています。症状が出るのはおたふくかぜにかかった
うちのおよそ10%ほどです。唾液腺が腫れてくる1週間前から、晴が出た週間後までに、発症しますが、
頭痛や発熱、嘔吐などの症状ですみます。
 とくに効果的な治療法はありませんが、安静にしていればほとんどが2週間ほどで治ります。
嘔吐や頭痛の症状が激しいときは、医師の判断で入院治療が必要な場合もあります。
・膵炎
 重症なものはごくまれですが、軽い膵炎を合併することは多いようです。唾液腺の腫れから1週間目ほどで、
みずおちあたりが圧迫されるように痛む、気分が悪く嘔吐感がある、軽い発熱がある、などの症状が出ます。
これ以上の重い症状はほとんどなく、約1週間で治ります。
・腎炎
 唾液腺が腫れだした10〜14日後に起きることがあります。致命的になることもごくまれにありますが、
ほとんどが軽いもので、尿中にウイルスがみられる程度で症状が出ないことが多いようです。
・難聴
 1万5千人に1人の割合で、片耳の難聴が起こります。しかし、ほとんどの場合は唾液腺の腫れがひくに
伴い、徐々に治っていく一過性のもので、回復せずに難聴が残るケースはまれだといわれています。
 ほかに子どものおたふくかぜでは甲状腺炎や、心筋炎、乳腺炎、関節炎、視神経炎、血小板減少紫斑病
などの合併症が極めてまれに起きることもあります。

合併症・ウイルス性髄膜炎はこわくない?
 おたふくかぜの合併症でもっとも頻度が高いのが、髄膜炎です。髄膜炎というと、危険な病気と
思われがちですが、ムンプスウイルスが原因の無菌性(ウイルス性)髄膜炎は、髄膜炎のなかでも
症状が軽い病気です。
 髄膜炎とは、脳や脊髄を包んでいる膜にウイルスや細菌が侵入して炎症を起こす病気です。
細菌性のものはけいれんや意識障害などの重い症状を起こすことがありますが、ウイルス性は、
頭痛や発熱、嘔吐などの軽い症状ですみます。また、細菌性髄膜炎が、知能障害や手足の麻痺などの
後遺症を残すことがあるのに対し、ウイルス性では後遺症が残りません。
 しかし、ウイルス性か細菌性かは、病院で髄液の検査をしないとわからないため、発熱や頭痛、
嘔吐などの髄膜炎に共通の症状があれば早めに検査を受けるようにします。
 赤ちゃんの場合、おむつを替えるときに泣く、首を曲げると泣くなども重要な症状のひとつなので、
よく注意しておきましょう。

ワンポイントアドバイス
家庭での看護
 食べのもを噛むと、唾液が出て腫れた唾液腺が痛むため、子どもの食事には気をつけてあげましょう。
牛乳やおかゆ、うどん、野菜スープなど、栄養があってさほど噛まずにすむ流動食を中心にし、
アイスクリームやプリンなどの好みのものを食べさせましょう。
 辛いもの、すっぱいものなどの刺激物や、脂肪分の高いものは、唾液の分泌を促し痛みを増幅させるとともに
膵臓に負担をかけるので、避けるようにします。
 痛みが激しいようなら、医師に痛み止めなどを処方してもらいましょう。
また、頭を痛がるなら氷枕で冷やしてやると少しらくになります。

思春期以降の発病
精巣や卵巣の合併症に注意
 おたふくかぜは、子どものうちに感染することがほとんどで、15歳以下で85%の人が感染していると
いわれています。感染する年齢が高くなるにつれて、症状が重くなることが多いようです。
それに加え、子どものころならほとんど起こらない合併症を起こすことも多くあります。
・精巣炎・副精巣炎
 思春期以降では14〜35%の患者に起こります。唾液腺の腫れがひいてから8日以内に発症することが
多いようですが、まれにそれ以上期間をおいて起こることもあるようです。
 精巣が急激に赤く腫れてきて、激しい痛みを感じます。約70%は片側だけで、両方の精巣とも腫れるのは
30%程度ほどです。また、軽い発熱や悪寒、頭痛、嘔吐感、腹痛なども起きることがあります。
これらの症状が4〜5日ほど続いてから治まってきます。
 精巣炎や副精巣炎になると、30〜40%に精巣の萎縮がみられます。不妊になることは少なく、
精子ができないなどの後遺症が残るのは、発症したうちの約13%程度だといわれています。
・卵巣炎
 思春期以降におたふくかぜにかかった女性のうち約7%ほどが、卵巣炎を合併します。
骨盤内が痛みますが、それ以外の症状がでることはほとんどありません。
将来、不妊の原因になるかどうかは、はっきりとは解明されていませんが、不妊になることは
ほとんどないと考えられています。

予防
ワクチン接種とうがい、手洗いを
 おたふくかぜの流行を防止するには、生ワクチンの接種が唯一の方法です。
病原性を弱めた弱毒ウイルスを用いて免疫をつけるのが生ワクチンで、麻疹(はしか)、風疹、ポリオなどの
ワクチンもこれにあたります。おたふくかぜのワクチンも生ワクチンで、1回の注射で効果があります。
とはいえ、接種を受けてもおたふくかぜにかかる確立は5〜10%ほどあり、はしかや風疹のワクチン接種と
比べて少し高い数字が報告されています。
 また、ワクチン接種がほぼ徹底しているアメリカの報告では、予防接種から長期間たつと、
次第に免疫力が落ちていき、13%程度は免疫がなくなっていくといいます。
 いずれにしても、さまざまな感染症に対する一般的な注意としては、外から帰ってきたら必ずうがいや
手洗いをする、などの基本的な予防策は守るようにします。
 また、おたふくかぜにかかったら、少なくとも唾液腺の腫れが完全にひくまでは、外出を避けましょう。

予防接種
現在は任意のかたちで受けられる
 予防接種法で決められたもの以外の予防接種は任意接種といい、希望者のみ接種を受けます。
おたふくかぜの予防接種は1981年から、この任意接種のかたちでスタートしましたが、
当時は接種を受ける人があまりいなかったためか、流行は毎年繰り返されたそうです。
 このため89年からははしか、風疹とおたふくかぜの3種類のワクチンを混合で接種する、MMRワクチンが
導入されました。しかし、MMRワクチンによって髄膜炎を起こす確立が逆に高くなるとの報告があり、
93年4月に中止されています。
 これらの経緯を経て、現在はおたふくかぜの原因となるムンプスウイルスに対する生ワクチン接種が、
1歳以上のまだおたふくかぜにかかっていない子どもや成人を対象に、任意のかたちで行われています。
 生ワクチン接種は、からだの中に自然感染のウイルスが残っていたり、ほかのウイルスに対する
ワクチンがあると効果がでにくくなります。はしかや風疹、水ぼうそうにかかったら、治って1ヶ月以降に、
また、これらの予防接種を受けていれば、それから1ヶ月してから、おたふくかぜの予防接種を受けるように
してください。発熱していたり、体力が弱っているときも、予防接種は受けないようにします。

MMR
 MMRとは、はしか、風疹、おたふくかぜの3種類を混合したワクチンのことをいいます。
これを受けると無菌性髄膜炎を約千人に1人という高い確率で発病することが報告され、
中止になりました。
これは「ワクチンの病原性が強かったため」や「はしかウイルスと混ぜたために免疫が低下し、
副作用が出た」などの説がありますが、はっきりとは解明されていません。
 おたふくかぜは人間しかかからないため、ワクチンウイルスの病原性がどの程度弱まっているかを
評価するのに適当な実験動物がいないことも、副作用多発の要因の一つと考えられています。
現在は混合ワクチンではなく単独ワクチンで、任意のかたちで予防接種が行われています。
子どもの様子をみて早めの治療を
 唾液腺が腫れているときの食欲不振や、発熱時の脱水症状などに気をつけて安静にしていれば、
予後のよい病気です。ちょっと様子がおかしいなと思ったら、すぐに病院で診察を受けて、
早めに治療を始めると、髄膜炎などの合併症の予防につながります。低年齢でかかれば比較的軽く
すみますし、生涯免疫もつくので、あまり神経質になる必要はありません。
学校や幼稚園でおやふくかぜが流行しているようでしたら、子どもの様子に気をつけておきましょう。

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