あせも
乳幼児に多いあせもは、吸湿性のよい衣服を着せ、汗をかいたらこまめに
ふいたり、入浴やシャワーなどで予防することが大切です。


どんな病気ですか?
エクリン汗腺がつまって起こる発疹
 人には、口唇、陰茎、亀頭、陰核以外の皮膚に約200万〜400万個のエクリン汗腺があり、
暑いときにここから汗を出して体温を調節しています。
 エクリン汗腺の汗の排出管である汗管がさまざまな理由によってつまり、汗が体外へ出ないで、
汗管内にたまったために起こる発疹をあせもといいます。専門的には汗疹とよばれ、
汗貯留症候群の一種とされています。
 高温多湿で汗をかきやすい夏に起こることが多く、乳幼児や肥満者に多いのが特徴です。
また、季節を問わず、調理師などの高温多湿の環境下で仕事をする職業の人にもみられます。
よくできるのは、髪の毛の生え際や肘の内側、膝の裏側、首筋など皮膚や毛がこすれるところです。
ときには胸や背中全体などにもみられることがあります。小児では顔面にもしばしば発生します。
 あせものできる割合に男女差はありませんが、過度な日焼けの後、あるいは急性疾患による
発熱の後などに急激に起こることが多いようです。
 また、アトピー素因をもっている乳幼児にできやすいという特徴もあります。
原因
多量の汗と皮膚表在菌が関係
 あせもの一番の誘因は、過度に汗をかくことです。多量の汗に加えて、紫外線などの物理的な刺激、
せっけん、絆創膏貼付などの化学的な刺激、皮膚表在菌などが原因となって、汗管の出口付近である
汗孔がつまってあせもが起こります。汗孔がつまることで、汗管が破裂して、汗が表皮内に
もれ出ることがあせもの原因になることもあります。
 これまで、汗孔がふさがれるのは、汗の温熱性刺激のために汗管の角質が増殖し、
角栓ができるためと考えられていました。
しかし、その後の研究で皮膚の表在菌が大きくかかわっていることがわかりました。多量に汗を
かくことで、皮膚の表在菌が増加し、その細菌の毒素が汗管壁細胞を障害し、無定形物質の
塊をつくりだします。その結果、汗管の出口がふさがれ、あせもが生じます。
 乳幼児の場合、からだは小さくても成人と同じ数の汗腺をもっています。
ところが新陳代謝が盛んで、体表面積1u当たりの発汗量は成人の2倍以上あります。
そのうえ、成人に比べて皮膚の角質は薄いのですが、汗腺の部分だけは厚くできているため、
汗がたまってつまりやすく、あせもができやすいわけです。
種類と症状
最も多いのが紅色汗疹
 あせもは、汗のたまる位置や特徴によって、水晶様汗疹、紅色汗疹、深在性汗疹の
3種類に分かれています。
[水晶様汗疹]
一般的に、白いあせもといわれるものです。皮膚の浅い部分の汗管がつまって汗がたまったもので、
直径1〜2mmの透明の小さな雨粒のような水泡が密生しています。炎症は伴いません。
上半身や手足、額、ときには顔など広い範囲にできます。生後数日以降からみられ、
発熱や日焼けの後に特にできやすくなります。通常、かゆみなどの自覚症状はありません。
涼しくしておけば、水泡は1日から数日で破れてうろこのようなあとができますが、
自然にわからなくなります。
[紅色汗疹]
しばしば赤いあせもとよばれるタイプです。赤い栗粒大から半米粒大の水泡、あるいは漿液(しょうえき)
とよばれる水分を含んだ発疹です。
 一般的にあせもとよばれるのはこの紅色汗疹で、汗疹のなかで最も多くみられます。
汗管が閉塞したために、表皮内汗管が破れて汗が表皮内にもれ出て、汗腺の周囲に炎症を
起こしたためにできるものです。
 夏季、あるいは高温多湿の環境で、比較的急速に密生してできやすく、生後10日ごろから生じます。
首や腋(わき)の下、肘や膝の裏側など皮膚と皮膚、あるいは皮膚と衣服の触れあうことろや
関節部分にできやすのが特徴です。乳児では、顔や額などにできることもあり、ときには
水晶様汗疹も混在することがあります。
 熱感や強いかゆみがあり、ひどくなると汗でひりひりします。乳幼児の頭部や顔面などに
多発したときには、摩擦やかきすぎのために二次感染を起こし、「あせものより」とよばれる
多発性汗腺膿瘍を起こすこともあります。
 また、もともと接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎など炎症性の皮膚炎があるところに、
紅色汗疹ができると、多発性汗腺膿瘍が起こりやすくなります。
[深在性汗疹]
熱帯地方などに多く、極端な高温の環境に長くおかれるときに起こりやすくなります。
表皮と真皮との境界部あたりの深い汗管が閉塞して、真皮に汗がたまることによって生じます。
からだ中の広い範囲に、平たい赤みのあまりない発疹ができ、かゆみはほとんどありません。
 運動や高温など、発汗刺激が加わるたびに発疹は大きくなるものの、汗は出ずに皮膚は
乾燥していきます。
 ひどくなると、汗が減ったり、ほとんど出なくなって疲労感や吐き気、めまいなどの
全身症状を起こすこともあります。
あせもから生じる疾患
あせもをひっかくと化膿することも
 紅色汗疹をひっかいたりして黄色ブドウ球菌に感染すると、化膿性汗孔周囲炎や
多発性汗腺膿瘍を生じてしまう場合があります。
 化膿性汗孔周囲炎は、皮膚の表面に近いエクリン汗管にブドウ球菌が感染したもので、
毛穴とは無関係に、膿をもった赤い小さな発疹ができます。
 多発性汗腺膿瘍は、皮膚のさらに深いところに化膿性の炎症を起こしたもので、
はじめは小豆粒大の硬いしこりができます。このしこりがだんだん大きくなって赤くなり、隆起してきます。
やがて、硬かったしこりは中心が軟らかくなり、自然に破れて膿が出てくることもあります。
1ヶ所だけでなく、いっぺんに何ヶ所もできたり、次々にできたりすることが多いのが特徴です。
 二つの病気の原因は同じですが、必ずしも化膿性汗孔周囲炎が深部に及んで
多発性汗腺膿瘍になるわけではなく、はじめから汗腺膿瘍だけができることもあります。
 これらの病気は乳幼児に多く起こります。乳幼児の皮膚は脂肪酸が少なくて、殺菌力が成人に比べ
劣っているためです。よくできるのは額や後頭部、顔面、首、背中、おしりなどです。
 化膿性汗孔周囲炎も多発性汗腺膿瘍も通常、痛みがあり、リンパ節が腫れることもあります。
また、重症になると発熱や食欲不振などの全身症状を伴うケースもみられます。
治療が遅れるとあとが残ったり、頭髪が抜けてしまうことがあり、再発することも少なくありません。
アトピー性皮膚炎がある子どもに合併しやすいといわれています。
あせもに似たほかの病気
治りにくいときはほかの病気を疑う
 あせもと思っていたのに、なかなか治らない場合、次のようなほかの病気も考えられます。
[皮膚カンジタ症]
カンジタ・アルビカンスという真菌(カビ)の一種が、皮膚に感染して炎症を起こすものです。
真菌の一種といっても、特別なものではなく、口腔や粘膜、腸管内に常在しているものですが、
生体が弱っているときや、汗や摩擦の刺激などカンジタにとって好条件が整えば、炎症を起こすことが
あります。
 よくできるのは、乳幼児のおむつに覆われている部分や、首、あごの下、腋の下、
衣服とこすれあうところなどです。
これらの場所にあせもやおむつかぶれに似た赤い細かい発疹ができます。
 そのうち一面に皮膚が赤くなって、その縁に薄いオブラートのようなうろこ状の皮がつくのが
皮膚カンジタ症の特徴です。ひどくなると皮がむけて、小さな膿をもつこともあります。
 皮膚カンジタ症の場合、あせもやおむつかぶれの薬を使うと悪化してしまいます。
抗真菌作用の軟膏を使う必要があるので、あせものように思えても、長引くようなら医師や薬剤師に
相談してください。
[伝染性膿痂疹]
いわゆる「とびひ」のことです。虫刺されやあせもをかいたあとなどの皮膚の小さな傷から、
ブドウ球菌や連鎖球菌などが感染したものです。
 子どもに多く、最初は薄い膜の小さな水泡ができて、その数が増えてきます。
そのうち、赤みをおびて水疱が大きくなり、破れて膿の混じったような水が出てジクジクしてきます。
 でき始めにかゆみを伴うことがあり、それをかいた手に、水疱の内容物がつくと、とびひという名前の
とおり、すぐにからだ中に広がります。また、ほかの子どもにうつすこともあります。
 あせもがひどくなって、ジクジクするようなら伝染性膿痂疹のおそれもありますから、
それ以上ひどくしないように、石鹸で洗って、よく乾燥させて抗生物質の軟膏を塗布します。
基本的にガーゼなどは、しないほうがよいですが、子どもがかくようなら、ガーゼをあててください。
あせもができた子どものお風呂の入れ方
乳幼児にあせもができたときは、いつもより気をつけて入浴させてください。
・夏場は日中にシャワーも
 1日最低でも1回入浴させます。夏場でよく汗をかくときは、日中、シャワーを浴びさせて
汗を流すようにすることも大切です。
・入浴剤は硫黄(いおう)を含んだもの
 あせもがあるときには、硫黄を含んだ入浴剤を使うとよいといわれています。
・軟らかいタオルでやさしく
 あせもやかぶれができたとき、石鹸を使わないという人がいますが、皮膚に汚れが残ってしまいます。
石鹸を使い、特に首や太もも、腋の下、肘や膝の裏など、汚れがたまりやすいところを念入りに
洗います。洗うときは、手、軟らかいガーゼやタオルを使い、あまり強く肌をこすりすぎないように
しましょう。硬い材質のあかすりのようなものを使うことは厳禁です。
 洗浄後は、石鹸をよく洗い流してください。なお、石鹸は薬用である必要はありませんが、
低刺激のものを使ってください。
・入浴後に薬を塗るのを忘れずに
 入浴前からバスタオルや着替えを用意しておき、手早くからだを拭き、衣服を着せます。
着替えは吸湿性のよい綿のものがよいでしょう。
 入浴後は塗った薬も落ちていますから、必ず薬を塗ります。化膿している場合は、患部を消毒してから
軟膏をつけます。
 あせもができているときに、ベビーパウダーを使う人が結構いますが、首筋や毛穴につまったりして、
逆に刺激のもとになります。あせもの軟膏はほとんど乾燥剤が入っていますので、
軟膏だけを塗っておき、あせもが治って、あせも予防で使用してください。
 あせも予防で使用する際も、ベビーパウダーを親の手ですり合わせ、その手でなでる程度にしておきます。
治療
軽症ならばスキンケアと軟膏塗擦
 まず、大切なことは汗を拭き、肌を清潔にすることです。ぬれたタオルでこまめに汗を拭き取り、
毎日入浴を欠かさないようにします。夏場では、1日に2回くらいシャワーを浴びさせてもよいでしょう。
軽いあせもなら、この程度で簡単に治ります。
 炎症がないあせもでは、肌を清潔にしたうえで、あせもの軟膏、非ステロイド系の軟膏を1日2〜3回
塗ります。かゆみが強いときには、ステロイド系の軟膏を数日間1日2〜3回使用します。日中は、
非ステロイド剤を1日2回くらい塗り、入浴後にステロイド剤を使用するという方法もあります。
それでもかゆみが強いようなときには、かきむしることで起こる二次感染を防ぐために
抗ヒスタミン剤を内服することもあります。
 化膿性汗孔周囲炎や多発性汗腺膿瘍になっている場合には、抗生物質の軟膏を塗るか内服します。
膿瘍は、早めに切開して膿を出し、そのうえに抗生物質の軟膏を塗布します。なお、この場合も、
スキンケアは欠かせません。
予防
真夏の昼間はクーラーを使用
 子どものあせもは、家庭で少し気をつけていれば、簡単に予防することができます。
汗をかいたら、こまめに蒸しタオルや冷たいタオルで汗をふきとったり、シャワーを浴びさせます。
入浴では、せっけんを使用して、腋の下や首筋、太もも、膝の裏側など皮膚がこすれるようなところを
念入りに洗います。真夏には、暑いからといって裸にしておくのは、汗を吸い取るものがないので
逆効果です。吸湿性に優れたTシャツ型の木綿の肌着を1枚着せておくとよいでしょう。
 部屋の環境は、風通しのよい涼しいところが望ましく、真夏の昼間は1〜2時間くらいクーラーをかけます。
昼寝時に、水枕を使うのも効果的です。
 あせもの予防に、ベビーパウダーを使用することがありますが、使いすぎると、首筋やももの付け根などに
固まって、逆に不潔になります。パウダーを使うときは、手でこすり合わせて、軽くなでるように
つけておけば十分です。
 意外に見落としてしまうのが寝具です。吸湿性のない合繊を使用した敷布団や、パッドや敷き布団が
防水性のもので覆われていると、あせもや湿疹の原因になるので、吸湿性のよい木綿わたを入れた
タオルを選びましょう。
 あせもができるのは、夏だけとは限りません。暖房装置の発達で、冬場でもあせもができることもあります。
暖房のきかせすぎや、衣服の着せすぎにも気をつけましょう。乳幼児の背中に手を入れたときに、
汗ばんでむっとするようなら、衣服の着せすぎです。
 なお、アトピー性皮膚炎のある子は、あせもから化膿性汗孔周囲炎や多発性汗腺膿瘍になる
確立が高いため、夏場には特にアトピー性皮膚炎の症状をコントロールし、スキンケアに気を配るように
する必要があります。

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