胆石
肝臓でつくられる胆汁中の成分が固まって、胆道内に結石ができる病気です。
手術をしないで治療することもできます。
| どんな病気ですか? 胆汁の通り道に石が形成される 胆石は、肝臓から十二指腸に続く胆汁の通り道(胆道)に石ができる病気です。ときとして右上腹部に 激痛が起きますが、まったく無症状のまま経過するケースも多くみられます。 胆石は、体内にとり込まれた脂肪やたんぱく質などの消化を促す胆汁の成分が固まって、 石状に形成されたもので、大きさや形はもちろん、できる場所、種類、形成・成長過程なども 実にさまざまです。 胆汁中には、胆汁酸、リン脂質、コレステロール、ビリルビン(胆汁色素)などの成分が含まれています。 胆石の種類は構成成分によって、コレステロール胆石と色素胆石、その他の胆石に分けられます。 コレステロール胆石は、さらに純コレステロール石、混成石、混合石に分類できます。 純コレステロール石は、球形あるいは卵形で、真っ白か少しクリームがかかった色をしています。 割ってみると、中心部からコレステロールの結晶が放射状に伸びていて、通常は一つしかできません。 混成石は、中心部は純コレステロール石や混合石の特徴をもち、その周りを囲む外層の成分は、 ビリルビンカルシウム石や黒色石などに近く、茶褐色をしています。成分が多様なので、外観だけでは 鑑別が困難なケースも多くみられます。 混合石の主成分はコレステロールですが、ビリルビンなどの胆汁色素を多く含んでいるほど色が 濃くなり、石の数は数個から数十個になることもあります。胆石のなかでは最も頻度が高く、 外観は多様です。 一方、色素胆石にはビリルビンカルシウム石と黒色石があります。 ビリルビンカルシウム石は、コレステロール胆石に比べて軟らかく、茶褐色をしているのが特徴です。 黒色石は一般的に硬く、その名のとおり黒い色をしています。砂状のもの、金平糖のようなもの、 球形のものなど形はさまざまで、小さな石が数多くできることがあります。その他も胆石として、 炭酸カルシウム石や脂肪酸カルシウム石もまれにみられます。 胆石は、発生部位によって胆のう結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。 胆のう結石は、胆のう内にできた結石で、コレステロール石と黒色石が圧倒的に多く、胆石のなかで 最もよくみられるものです。総胆管結石は、胆管内にある結石で、大半は胆のう内にできた結石が 胆管に押し出されてきたものです。 肝内結石は、肝臓内の胆管にできる結石で、胆のう結石や総胆管結石と比べると発生率の低い 胆石です。 日本では、胆石保有者数が年々増える傾向にあり、現在、成人の5〜10%の人が胆石をもっていると 推測されています。また、第二次世界大戦前には約80%が色素胆石だったのに対し、近年は コレステロール胆石が70%以上を占めるようになっています。 胆石保有者が増えている要因の一つに、検査技術の向上や人間ドックなどの普及によって 胆石がみつかりやすくなった点があげられます。また、食生活が欧米化して、脂肪などの摂取量が 増えたことも関係していると考えられます。 胆石ができやすいタイプは、Fecund(多産)、Female(女性)、Fatty(体格がよく、小太り)、 Forty(40歳以上)の「四つのF」という特徴があるといわれています。 実際、胆石のできる割合は男性より女性のほうが1,5〜2倍ほど高く、やせている人より 太っている人のほうが多いことも明らかです。また、年齢が高くなるにつれて胆石ができやすくなり、 60〜70代がピークです。このほか、食事の時間が不規則だったり、ストレスが多いことも 胆石ができやすい条件になります。 |
| 原因と症状 コレステロールの過飽和などが原因 ・コレステロール胆石の形成過程 コレステロール胆石の患者数は年々増加しており、全胆石の大半を占めるといわれています。 成因については、解明されていない点も多くあります。結石ができるまでの3段階は、まず胆汁が 過飽和の状態になり、次に核が形成されたり、コレステロールが結晶化し、さらに、肉眼でわかる 大きさの結石に成長すると考えられています。 コレステロールは水に溶けないので、胆汁中では、胆汁酸とレシチンで形成されるミセルという 形態に包み込まれたり、ベジクルというリン脂質の膜で覆われた状態で存在しています。 しかし、ミセルとベジクルがコレステロールを取り込む量には限度があるため、何らかの原因で 胆汁中のコレステロールが増えすぎるか、逆に胆汁酸やレシチンの割合が低くなると、 コレステロールをそれ以上ミセルとベジクルに取り込めなくなります。この状態を過飽和といいます。 胆汁中のミセルとベジクル、コレステロールのバランスが崩れた結果、胆石ができやすくなるのです。 コレステロールが増えすぎる原因としては、コレステロールの摂取量や腸管から吸収される量の 増加、肝臓でのコレステロールの合成量の増加などがあげられます。また、胆汁酸とレシチンが 減少する原因としては、腸の手術後や、腸の炎症によって胆汁酸をうまく吸収できなくなるか、 先天的な胆汁酸を生成する機能の異常などが考えられます。 これらの理由から、胆汁が過飽和の状態になると、胆汁中のベジクルが集まって塊となったり、 コレステロールの結晶が形成されます。さらに、胆のうの機能障害などが加わり、胆石に成長していく といわれています。 ・色素胆石の形成過程 色素胆石は、ビリルビンカルシウム石と黒色石の2種類に分けられますが、その成因は、 胆道への細菌感染や寄生虫の侵入、ファーター乳頭という、胆管の出口にある小さな突起の炎症 (乳頭炎)や傍乳頭憩室のよる胆汁の流れの停滞、低脂肪で炭水化物に偏った食事などです。 特に、大腸菌やそのほかの細菌による胆道感染が起こると、これらに含まれる ベータ・グルクロニダーゼという酵素によって水溶性のビリルビンが分解され、水に溶けにくい性質に 変化します。このビリルビンが胆汁中のカルシウムと結合して、ビリルビンカルシウム石が できると考えられています。 胆汁のpH(水素イオン指数)がアルカリ性に傾いたり、胆汁酸の濃度が低下しても、 ビリルビンカルシウム石ができやすくなるといわれています。一方、黒色石は、溶血性黄疸や 肝硬変が原因になったり、心臓の弁置換手術後や胃の切除手術後などに形成されることが 多いのですが、形成されるメカニズムについては、まったく明らかにされていません。 ・せん痛発作が現れる 胆石で最も特徴的な症状は、せん痛発作といわれる、さし込むような激しい腹痛です。 せん痛発作は、胆汁を分泌しようとして胆のうが収縮するときに、胆石が胆のうから総胆管や 十二指腸のほうへ動かされて内壁とこすれ合うと生じます。また、胆のう頸部や総胆管などに 胆石がつまる胆石かん頓によっても起こります。胆のうは食事でとった脂肪分を処理するために 働くので、せん痛発作は脂肪分の多い食事や料理を食べたり、暴飲暴食の後に現れやすくなります。 最初は、上腹部の圧迫感や不快感などで始まりますが、しばらくすると右上腹部に刺すような 痛みを感じるようになります。痛みは、10分程度で治ることもあれば、数時間持続ずることもあり、 市販の鎮痛剤では治まらないこともしばしばです。また、せん痛発作の前ぶれとして、 吐気や悪寒、右肩のコリといった症状が現れるケースもみられます。 上腹部のほかに、右肩や右腕、背中などに痛みが起こることもあります。この痛みは放散痛といわれ、 内臓の痛みの刺激が脊髄にある知覚神経に影響を与えるために現れるものです。 腹痛とともに右肩への放散通があれば、胆石である可能性が高いといえます。 せん痛発作のほかに、黄疸や発熱がみられることもあります。黄疸は、胆石によって胆管がつまり、 胆汁の流れが悪くなったときに現れます。また、発熱は37〜38℃程度で、せん痛発作に伴う 一時的なものがほとんどですが、高熱が何日も続いたり、上がったり下がったりを繰り返すような場合は、 胆管炎や胆のう炎を併発している場所や種類によって異なります。例えば、せん痛発作は ビリルビン胆石よりもコレステロール胆石のほうに起こりやすいといわれています。 コレステロール胆石は軽くて小さく、胆汁の中で動きやすいため、発作を誘発しやすいと考えられます。 また、胆石があっても、まったく症状が現れないこともあります。このような胆石を サイレントストーン(無症状胆石)とよびますが、胆のう内結石の多くがこの無症状胆石のため、 健診などで偶然にみつかるケースが少なくありません。 |
| 検査と診断 腹部超音波検査がポイントとなる 胆石の診断に最も広く用いられているのが腹部超音波検査です。超音波検査は患者に苦痛を与えず、 短時間のうちに臓器の病変が確認できます。特に胆のう内胆石の発見に関しては、ほぼ100%の 診断が可能です。 しかも、胆石の存在の有無だけでなく、胆石の種類や、胆のう壁や胆管の様子まで診断がつくように なっています。胆石の質的診断は、溶解療法や体外衝撃波胆石破砕法(ESWL)が適応するか どうかの判定や、治療効果の予測などにきわめて重要です。 超音波検査で胆石が確認された場合、排泄性胆のう造影法で胆のうの機能を調べます。 排泄性胆のう造影法は、造影剤を用いて胆のうや胆管の様子をX線撮影する方法です。経口薬の 造影剤を服用して行う経口胆のう造影法と、造影剤を静脈に注射して行う経静脈胆のう造影法が あります。経静脈胆のう造影法のなかでも、特に点滴静脈注射をする点滴静注法(DIC)が 広く行われています。DICは、胆のうと胆管が造影できるため、超音波だけでは診断しにくい 総胆管胆石の診断にも有効です。 ただし、排泄性胆のう造影法は人によって写りが悪いことがあります。そのような場合は、 造影剤を直接胆道に注入する直接胆道造影法を行います。直接胆道造影法には、 経皮経肝直接胆道造影法(PTC)と逆行性内視鏡的胆管膵管造影法(ERCP)がありますが、 一般的にはERCPが行われています。ERCPは、胆道系の検査のなかでは最も精度の高い検査で、 総胆管胆石や胆管がんなどが診断できます。 このほか、必要に応じて、CT検査、MRCP検査、尿検査、血液検査などが行われます。 |
| 治療 手術をしなくてもとり除ける 胆石の治療法は、手術をしないで胆石だけを取り除く保存療法と、手術によって胆のうごと摘出する 手術療法に大別されます。 保存療法には、溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法、内視鏡的療法があります。 溶解療法は、溶解剤を用いて胆石を溶かす方法で、経口薬を服用する場合と、胆のうにチューブを 挿入して胆石に直接溶解剤をかける場合があります。ただし、すべての胆石に有効なわけでは ありません。溶解療法が適応できるのは、胆石が胆のう内にあることが条件で、さらに直径1〜1,5cm 以下の純コレステロール石で、表面が石灰化していないものに限られます。また、胆のうに変形や 萎縮がなく、せん痛発作などの激しい症状がみられないことも条件です。 体外衝撃波胆石破砕法は、体外から衝撃波をあてて胆石を細かく砕く治療法です。 砕いた石は、さらに溶解剤を服用して溶かす必要があります。体外衝撃波胆石破砕法も 溶解療法と同様、胆のう内の胆石であること、石の大きさが直径2cm以内で、数は最大3個まで といった適応条件があります。また、適応条件をクリアしても1回だけでは破砕できず、何回も 行わなくてはならないケースもあります。 総胆管結石に対しては、溶解療法や体外衝撃波胆石破砕法は適応となりませんが、 内視鏡を用いた十二指腸乳頭括約筋切開術で摘出できる場合があります。 内視鏡を十二指腸まで挿入し、十二指腸が下行している部分である下行脚に位置する ファーター乳頭の括約筋を一部切開し、総胆管にある胆石の自然排泄を待ったり、機械を用いて 切石します。また、胆石をバスケットという器具を使って摘出したり、切石除去する方法もあります。 結石が大きすぎて切開部を通らない場合は、衝撃波やレーザーで結石を小さくしてから とり出します。 溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法は、手術をせずにすむので苦痛が少ないという長所がある半面、 適応範囲が狭いことと、胆のうを残しているために再発が多いことが最大の難点です。 また、破砕した石片が胆のう管に引っかかると、胆のうが機能しなくなるケースもみられます。 まださまざまな問題が残されており、根本治療という意味では限界があります。 ・腹腔鏡下胆のう摘出術が主流に せん痛発作をたびたび繰り返したり、保存療法で軽快しないときや、胆のう炎、胆管炎を合併していいる ような場合は手術の適応となります。 手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡下胆のう摘出術があります。 開腹手術は胆石のある場所によって、所要時間や手術方法、入院期間などが異なります。 最も多くみられる胆のう内胆石では、胆のうを切除するだけの簡単な手術で、1〜2時間前後で すみます。 総胆管結石の場合は、総胆管を切って胆石を取り除くとともに、胆のうも摘出します。 摘出後、胆汁が腹腔内に流れないように切開した部分にチューブを入れ、胆汁を体外に排出するなど 補助的な処理が必要となるため、胆のう内胆石の場合よりも入院期間は長くなります。 従来の開腹手術に対し、腹部を切らずに胆のうを摘出するのが腹腔鏡下胆のう摘出術です。 腹腔鏡下胆のう摘出術は、腹部に3〜5箇所の小さな孔をあけ、そこに内視鏡の一種である 腹腔鏡をいれて、腹腔内をモニターで観察しながら胆のうを取り出す方法です。 開腹手術のように腹部を大きく切開する必要がないため、手術後の痛みが少なく、傷もほとんど 残りません。開腹手術の入院期間が2週間から1ヶ月ほどかかるのに対し、3日から1週間で 退院できることから、画期的な治療法として広く普及してきています。 しかも、治療効果は開腹手術とほとんど変わらないので、今後は腹腔鏡下胆のう摘出術が 治療の主流になっていくと思われます。 保存療法、手術療法のどちらにしても、数多くの方法が開発されて選択肢はますます広がって います。治療にあたっては、胆石の種類や数、大きさ、胆のうの状態、全身状態などを把握し、 最適な方法が選択されます。 |
| 予防と日常生活の注意点 肥満を解消することが大切 胆石を予防するためには、最も気をつけたいのは肥満です。肥満はコレステロール代謝に 悪影響を与え、胆石が出来やすくなります。動物性脂肪の多い食事は控え、適度な運動を続けて 肥満にならないように注意しましょう。 また、ストレスを回避し、規則正しい生活を心がけることも大切です。 ・食事のとり方に注意する 胆石をもっている人は、いつせん痛発作を起すかわかりません。せん痛発作は食事が引き金になって 起こることが多いので、次のように食事のとり方や食べ方には注意しましょう。 せん痛発作を最も起しやすいのは、暴飲暴食の後です。また、朝食を抜いたりして食事と食事の 間隔が開きすぎると、胆汁が胆のうに長くとどまり、コレステロールがたまって胆石が形成 されやすくなります。 食事は規則正しくとるようにして、過食を避けるためにも、ゆっくりとよく噛んで食べる習慣を 身につけましょう。また、脂肪分の多い食事も胆のうの収縮を強めてせん痛発作のきっかけに なったり、消化に悪ので揚げ物や肉類などは控えることが大切です。刺激の強い香辛料や アルコール、コーヒーなどの嗜好品も避けましょう。せん痛発作が起きた後は食事を控えて、 白湯や水、果汁などで水分を補う程度にします。その後、スープやおかゆなどの流動食で様子を みながら、徐々に普通食に戻していきましょう。どんなに注意していても、せん痛発作が起きることが あります。発作を起こす可能性のある人は、あらかじめ鎮痛剤を持っておくとよいでしょう。 |
| 規則正しい生活を心がける 胆石があるからといって、食事以外に特に制限しなくてはならないことはありません。 せん痛発作の後、1〜2日は安静が必要ですが、それ以外のときは、体調を整える意味でも適度に からだを動かす事が必要です。家事や仕事もふだんどおりに行ってさしつかえありません。 ストレスや過労なども、発作の大きな誘因になります。生活のリズムを一定に保ち、睡眠を 十分にとるなどして、ストレスや疲れをためないようにすることが大切です。 無症状胆石の人や発作がしばらく起こってない人は、とかく病気のことを忘れがちです。 気づかないうちに胆石が大きくなっていたり、数が増えていることもあります。 症状がなくても、定期的に検査を受けるようにしましょう。 |