歯周病
虫歯と並んで、歯を失う原因の筆頭にあげられる病気です。
正しい歯磨きの習慣を身につけておくことが最大の予防になります。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・歯茎が赤く腫れていますか?
・歯磨きの時血がでますか?
・虫歯がないのに歯がしみますか?
・食べのもが歯につまりやすくなっていますか?
・歯が浮くような感じがしますか?
・歯が長くなった気がしますか?
・歯がグラグラしますか?
・歯茎を押すと膿や血がでますか?
・口臭を指摘されますか?
どんな病気ですか?
歯茎が細菌に侵される
 歯周病は歯茎の病気です。以前は歯茎の病気をひとくくりにして歯槽膿漏とよんでいました。
しかし最近では、歯槽膿漏という名前にふさわしい症状は、一部のケースと考えられるようになり、
あまり使われていません。代わって、歯のまわりの病気という意味で、歯茎の病気を総称して
歯周病とよんでいます。
 歯周病は歯を支えている歯周組織が、最近によって炎症を起こしたり、破壊されたりする
ことから発生します。主な歯周組織は、歯肉(歯茎)、歯槽骨(歯を支えている骨)、歯周靭帯
(歯槽骨と歯の間を結んでいるもので、歯根膜ともいいます)、セメント質(歯の根の部分を
覆っているもの)などです。
 歯周病には、大きく分けて歯肉炎と歯周炎があり、まず歯肉炎として始まった病気が悪化すると、
歯周炎になります。歯肉炎は歯肉が赤く腫れたり、歯を磨いた時やリンゴを食べたときなどに
出血するといった症状が現れます。炎症は歯肉に限定されていて、まだ歯槽骨などの組織には
及んでいない状態です。痛みがないため、早期治療の機会をのがしてしまうケースがほとんどです。
 歯肉炎が悪化すると、歯を支えている歯槽骨や、歯槽骨と歯の間を結ぶ歯周靭帯が破壊され、
歯がグラグラするようになります。このような状態が歯周炎で、放置すると歯が抜けてしまいます。
現在、歯槽膿漏という言葉を使う場合は、歯周炎をさしています。
 歯周病にかかっている人は性別にかかわらず多く、20〜30代で約60%、40代で約70%、
50代で約80%です。以前は年をとると歯が抜けるのは老化現象だと考えられていましたが、
実は歯周病が大きな原因だということがわかってきました。
65〜74歳の人では、約40%の人が自分の歯をすべて失い、義歯(総入れ歯)を余儀なくされて
いますが、この大半が歯周病によるものです。
原因
歯垢は細菌のかたまり
 歯周病は歯のまわりが清潔かどうかが大きなポイントです。歯磨きを丁寧にしないと、
歯の表面に歯垢(プラーク)が付着してしまいます。つま楊枝などで歯と歯の間をこすると、
先端に黄白色のねっとりとしたかたまりが付着することがありますが、これが歯垢です。
歯垢がつきやすいのは、歯の溝や歯と歯の間、歯と歯肉の間などです。
 歯垢は食べかすと思われがちですが、そうではありません。歯垢は口の中にいる細菌が
かたまりをつくったもので、歯垢1mgの中に10億もの細菌がいます。歯垢に集まった細菌は、
食べ物のカスや唾液に含まれるたんぱく質などを栄養にして繁殖します。放置すると1日に
約5倍に増えるので、歯磨きが欠かせません。
 歯垢に集まった細菌は、食べ物のカスなどを分解して、歯肉に炎症を起こさせる毒素をつくり
出します。歯肉に炎症が起こると、歯肉溝の弾力が失われ、食べカスや細菌が入り込みやすくなり、
ますます歯肉炎が悪化します。
 また、歯の付根の部分には、よく歯石ができます。歯石は歯垢に唾液のカルシウムが分が
付着して固まったもので、それ自体は無害ですが、表面がザラザラしていて歯垢がつきやすいため、
細菌の温床になります。歯石は歯肉溝の中にも広がっていき、病気を悪化させます。
 歯肉炎が悪化すると、歯肉溝がだんだん深くなります。これを歯周ポケットといい、
このポケットの中で細菌が繁殖すると、歯肉の炎症がますます進行して歯周病となります。
 口の中には約300種類の細菌がいて、そのうち10種類程度が歯周病を悪化させていることが
わかってきました。これらの細菌は、酸素をきらう嫌気性細菌が多いため、歯周ポケットの奥の
ように、空気中の酸素が届きにくいところで、活発に活動します。
 このほか、口を開けて呼吸する人は口の中が乾燥しやすく、歯垢が歯につきやすくなります。
また、歯並びやかみ合わせの悪い人は、特定の歯に強い力がかかってしまうので、
歯周組織をいためます。虫歯の治療が十分でなかったり、充填物が不適切だったりすると、
歯肉に負担がかかり、やはり歯周病を悪化させる原因となるので注意してください。
糖尿病、内分泌異常、肝機能障害、ビタミンCの欠乏といった全身症状なども、
歯周病の進行を早めます。
症状
進行すると歯がグラつく
 歯肉の色は本来ピンク色ですが、炎症を起こすと赤黒い色になります。痛みはありませんが、
歯磨きをしたときや、リンゴをかじったときなどに、血がでることがあります。炎症によって血管が
拡張し、充血しているため、外側から少し力がかかるだけで出血するのです。
 この状態は歯肉炎ですが、さらに進行して歯周炎になると、肉や野菜などの食べ物が、
歯と歯の間にはさまりやすくなります。歯が前に出てきた、歯が伸びてきたと感じることもあります。
これは歯が伸びたのではなく、歯肉溝が深くなって歯肉が下がった状態になるため、そのように
感じるのです。
 歯周炎になると、歯肉を押しただけで血や膿がでるようになり、口臭が悪化します。
また歯肉が下がり歯の根っこの部分が露出し、歯がグラグラするようになります。特に疲労時などに、
歯が浮き上がるような感じがすることもあります。
治療
歯石除去で進行をくい止める
 歯肉炎でも歯石がなければ、ていねいに歯磨きをして歯垢を除去することにより、炎症を抑える
ことができます。この段階なら、完全に治すことができます。
 歯石がある場合は、自分では取れませんので、歯医者に取ってもらってください。
歯科医のもとには、先端がかぎ形に曲ったスケーラーとよばれる器具があり、これで歯石を
削り取ります。超音波の振動を利用して歯石を取る器具もあり、最近よく使われるようになりました。
 また、歯周ポケットの中にある歯石を取り除いた後は、歯肉が再び歯とくっつくようにするため、
歯の表面をなめらかにするルートプレーニングという作業をします。
 歯周炎の治療も、歯石の除去と丁寧な歯磨きが基本です。失われた歯槽骨が元にもどることは
ありませんが、歯周炎の進行をくい止めることはできます。
 重症の場合は、歯周ポケットの歯石を取り除くだけでなく、ポケット内部の肉芽組織をかき出したり、
炎症でいたんでいる歯肉を切除し、ポケットをなくしてしまう手術を行うことがあります。
 歯がグラグラする場合は、隣同士の歯をステンレスの細いワイヤーで連結して固定したり、
歯を削ってブリッジのように冠をかぶせて歯と歯をつなぎ、セメントで固定するといった方法で、
歯がグラグラ動かないようにします。
 以前は歯周炎の症状があると、すぐに抜歯することが少なくありませんでしたが、最近は
なるべく抜歯しないようにするのが普通です。歯が多少グラグラしていても、かむ力は健康な人と
変わりませんが、義歯を入れると、かむ力が格段に落ちてしまうからです。
ただし、歯周炎が進行して、歯槽骨の3分の2以上が失われてしまった場合は、抜歯することも
あります。
 このほか、義歯や虫歯治療ではめた冠が適合しない場合は、これらをつくり替えなければ
いけません。また、歯並びやかみ合わせが悪い場合は、その調整を行います。
 炎症がひどくなり、歯茎が腫れ上がるようなときには、薬物療法を行う場合もあります。
抗生物質にグリセリンなどを加え、歯茎に付着させると、効き目が1週間ほど続きます。ただし、
症状を一時的に抑える程度で、歯周病を治すことはできません。
歯周病を薬物で治す研究も行われていますが、副作用の問題などから実用化は
まだ難しいようです。
予防
歯磨きを丁寧に
 プラーク・コントロールという言葉がよく使われますが、歯垢を除去することが、歯周病の予防に
最も有効です。そのためには、丁寧に歯磨きをしなければいけません。もちろん、これは虫歯予防
にも有効なことです。
 歯垢を十分取り去るためには、毎食後、約3分の歯磨きが必要とされています。
自分は長い時間歯磨きをしているほうだと思っている人でも、実際は20〜30秒程度ということが
少なくありません。一度、時計で計ってみるとよいでしょう。
 ブラッシング方法はさまざまな方法が提唱されていますが、人にはそれぞれブラッシングのくせが
あり、歯の生え方も一様ではありません。自分に合った方法を見つける必要があります。
歯垢を赤く染める歯垢検知液(錠剤のタイプもあります)を利用してみてもよいでしょう。
磨き残しがはっきりとわかるので、自分のくせを理解し改善するのに役立ちます。
 歯と歯の間は、ふつうの歯ブラシではなかなかきれいに磨けないので、極細のナイロン糸を張った
デンタルフロスとよばれる器具や、歯間ブラシがよく使われています。歯垢検知液、
デンタルフロス、歯間ブラシなどは、いずれも薬局で安価に入手できます。
 歯周病の予防には、食生活も無関係ではありません。食物繊維が豊富に含まれている野菜を
食べると、歯垢がつきにくくなることがわかっています。また、砂糖は歯周病を引き起こす細菌の
エサとなりますから、甘いお菓子やケーキなどを食べ過ぎないようにしましょう。また、甘いものを
食べた場合は、すぐ歯を磨いてください。
 歯周病は細菌による感染症の一種です。したがって、肉体的・精神的ストレス、過労、かぜなどで
全身の抵抗力が落ちると悪化します。ストレスをためないように注意し、睡眠を十分とり、
栄養のバランスを保つ食事をして、歯周組織の抵抗力を高めましょう。
 また、タバコを吸う人は、吸わない人に比べて、歯周病になる危険が2〜9倍も高まるという
調査があります。歯周病になりやすいばかりか、治療後の回復も悪いとされていますから、
禁煙するにこしたことはありません。
まとめ
異常に気づいたらまず歯科医へ
 虫歯は痛みがあるため、やむなく歯科へ駆け込む人がたくさんいますが、歯周病はあまり痛みが
ないままに病気が進行するのでやっかいです。歯磨きのときに出血したりして異常に気づいても、
たいしたことはないと決めつけて、治療に関心を示さない人もたくさんいます。
 しかし、歯周病には特効薬もなく、進行してしまった病気をもとに戻すことはできません。
異常に気づいたら、なるべく早い時期に歯科医の診察を受け、病気の進行をくい止めることが大切です。
これを怠ると、結局は治療に長い時間を取られ、治療費もかさんでしまいます。
 成人には親知らずを抜くと上下14本ずつ、計28本の歯があります。このうち20本が残っていれば、
どんなものでもおいしく食べることができます。80歳まで20本の歯を残そうという意味で、
厚生労働省や歯科医師会が中心となって「8020運動」が展開されています。
よい歯ブラシの選び方
 歯ブラシは形状、毛の硬さなどが異なるさまざまな種類のものが出回っていますが、機能的には
大差はありません。使いやすいものを選ぶとよいでしょう。電動歯ブラシは、手が不自由な人にとっては、
非常に使いやすい製品です。
 歯ブラシを上手に使うコツは、毛の先端を歯の表面に対して直角に当て、毛の弾力を利用して
ブラッシングすることです。歯ブラシの毛先や側面などを利用して、歯の曲面に沿って角度を変えて
ください。磨く強さは、ブラシの毛がしならない程度が適当です。力を入れなくても、毛が直角に
当たっていれば十分に歯垢を取ることができます。
 歯ブラシはよく乾燥させて使うことが大事です。毛先が開いてきたら、新しいものと交換しましょう。

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