睾丸の病気
男性生殖器の睾丸や副睾丸が障害されると、夢精子症や精子減少症を
起こし、男性不妊症を招くことがあります。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・陰のうが痛みますか?
・陰のうが赤く腫れていませんか?
・陰のうが大きくなりましたか?
・陰のうが重たく、下に引っ張られるように感じますか?
・陰のうに触れるとしこりがありますか?
・太ももの付根が痛みますか?
・熱が出ていますか?
どんな病気ですか?
睾丸の炎症や先天性異常などが原因
 睾丸(精巣)は、陰のう内にある卵円形をした左右1対の男性生殖器で、二つの重要な働きをしています。
その一つは、精子の形成です。精子は睾丸の精細管の中でつくられ、睾丸の後面に位置する副睾丸
(精巣上体)に運ばれます。精子は副睾丸に長期間とどまって成熟し、運動能力を得て、精管を経て
精のう腺にたくわえられます。
 もう一つの働きは、男性生殖器の発達を促す男性ホルモンの合成・分泌です。男性ホルモンのなかでも
最も大きな作用を持ち、二次性微をもたらすのがテストステロンです。テストステロンは、脳の下垂体から
分泌される黄体化ホルモンの刺激を受け、睾丸の間質組織にあるライデイッヒ細胞で合成・分泌されて
います。
 睾丸の働きは生殖活動に大きく関わっているため、睾丸の病気によって男性不妊症を招くケースが
出てきます。
種類と症状
最も多くみられるのは副睾丸炎
 ウイルスや細菌感染のよる炎症や先天異常が原因で、睾丸に痛みや腫れ、機能不全などの症状が
引き起こされることがあります。
・睾丸に炎症が起こる睾丸炎(精巣炎)
 ウイルスや細菌の感染が原因で睾丸に炎症が起こる病気で、経過によって急性睾丸炎と慢性睾丸炎
とに分けられます。通常は一方の睾丸だけに発症し、両方同時に起こることはめったにありません。
 急性睾丸炎は、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの感染でも発症することがありますが、
大半は流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスであるムンプス・ウイルスの感染によるのもです。
 急性睾丸炎になると、高熱とともに睾丸が赤く腫れて、強い痛みが現れます。睾丸の痛みは、
少し触れただけで跳び上がるほどの激痛ですが、下腹部や腰に広がる放散痛として感じる場合もあります。
 耳下腺炎性睾丸炎では、通常、耳下腺の腫れと同時に睾丸炎になりますが、まれに睾丸炎が先に
起こったり、耳下腺の腫れが完全にひいてから、睾丸炎を発症するケースもみられます。
また、後遺症として何らかの原因で睾丸そのものが萎縮して、無精子症や精子減少症が起こったり、
テストステロンの分泌が低下して、男性不妊症を招くケースが出てきます。
 一方、慢性睾丸炎は、睾丸が腫れて大きくなったり、でこぼこしたしこりができますが、痛みはありません。
以前は淋病、梅毒などの性感染症や結核の感染が原因で慢性睾丸炎になるケースが多かったのですが、
最近は少なくなっています。
慢性睾丸炎の症状は、がんなどの睾丸腫瘍でもみられるので、鑑別が必要です。
・発症率の高い副睾丸炎(精巣上体炎)
 副睾丸炎に細菌が感染して炎症が起こる病気です。大部分は尿道炎、膀胱炎、前立腺炎に併発します。
睾丸の病気のなかでは比較的発症率が高く、急性と慢性に分類されます。かつては淋菌性の
副睾丸炎が多くみられましたが、大腸菌やクラミジアの感染によるものが増えています。
また、膀胱内に挿入する尿道カテーテルが炎症の引き金になることもあります。
急性副睾丸炎では、39℃以上の高熱が出て、悪寒やふるえを伴います。副睾丸炎に痛みと腫れが
起こり、ときには睾丸にも炎症が及びます。重症になると、鼠経部(足のつけ根)も腫れて、
歩行困難を招くことがあります。
 慢性副睾丸炎の多くは急性副睾丸炎から移行したものですが、まれに結核菌や梅毒の感染で、
最初から慢性の形で発症するケースもあります。慢性副睾丸炎では、副睾丸炎にしこりができますが、
痛みや発熱などの症状はみられません。
・子どもに多い睾丸捻転(回転)症
 睾丸に出入りしている睾丸動脈、精管、精索静脈は、精索(せいさく)と総称され、全体が薄い膜で
覆われています。
 この精索がねじれて、陰のうの中で睾丸と副睾丸が回転する病気で、乳児期や10〜14歳に
多くみられます。
 睾丸は通常、陰のう底部にしっかりと固定されています。ところが、きちんと固定されていない場合には、
正常な位置より90℃ずれたり、ときには2回転することもあります。
 睾丸捻転症は、陰のうの部分が、ある日突然腫れて痛み始めます。吐気や嘔吐、発熱を伴うケースも
みられます。こうした症状は急性睾丸炎などでも生じますが、陰のうを持ち上げた時に、急性睾丸炎では
痛みが軽減するのに対し、睾丸捻転症では痛みが強くなることで判別できます。精索がねじれると、
睾丸に血液を送る血管が閉塞して、睾丸への血流障害が起こります。治療が遅れると、
睾丸が壊死して機能が失われるので、一刻も早く治療を受けることが大切です。
・陰のう内に体液がたまる陰のう水腫
 陰のう内で睾丸を取り巻いている睾丸鞘膜の膜腔内に、淡黄色で無臭の液体がたまる病気です。
陰のうが腫れて大きくなり、触ると液体がたまっているのがわかります。痛みはありませんが、
貯留した液体のために陰のうが重くなって不快感を感じたり、歩行しにくくなります。
睾丸や副睾丸に炎症や腫瘍があって、二次的に体液がたまるケースもありますが、多くは原因不明です。
 小児の陰のう水腫は、胎児のときに腹腔内にあった睾丸が陰のうに下降した後、腹膜の閉鎖が不完全
だった場合などに起こるものです。
・睾丸が陰のう内に下降しない停留睾丸
 睾丸は、胎児のときには腹腔内にあり、徐々に下降していきます。そして出産時には陰のう内に
収まります。停留睾丸は、睾丸が下りてくる際、下降経路の途中で止まってしまう病気で、
陰のうの発育が悪く、縮んでいるのが特徴です。
 睾丸は、陰のう内に収まらないと組織の発育不全をきたします。テストステロンの分泌量が減って
精子をつくる機能も低下するため、男性不妊症の原因になります。停留睾丸は悪性腫瘍に移行する
可能性も高いので、治療によって陰のう内に下降させることが必要です。
・思春期に症状が現れる睾丸機能不全症
 睾丸機能不全症(クラインフェルター症候群)は、左右両方の睾丸の先天的な発育不全で、
男性ホルモンの分泌が損なわれる病気です。睾丸は小さくて硬く、二次性微が現れません。
無精子症を伴ったり、女性のような乳房になるといった特徴がみられ、思春期以降に
症状がはっきりしてきます。
・精索静脈に変形が起こる精索静脈瘤
 精索の静脈はもともと蛇行していますが、静脈が拡張して通常よりも強く蛇行し、静脈瘤を形成した
状態を精索静脈瘤といいます。大半は左側の静脈に起こり、若い年代に多く発症します。
立ったときに、陰のう部にみみずがはしっているような静脈の形がはっきりと現れ、睾丸が引きつれたり、
鈍痛を感じるケースもみられます。軽症であれば自然に治ることもありますが、静脈の変形が
ひどい場合は、男性不妊症の原因になります。
・睾丸や副睾丸の周囲にできる精液瘤
 睾丸の上部や副睾丸頭部に、精液の入った袋状のしこりができる病気で、思春期以降に起こります。
痛み等の自覚症状がないため、のう腫があるていど大きくなってから初めて気づくことが多いようです。
放っておいても特に障害はありませんが、あまりに大きくなったり、内容液を除いても再発を繰り返す
ような場合は、摘出手術が必要です。
・その他の睾丸の病気
 睾丸損傷は、スポーツや事故などによって睾丸に強い衝撃が加わり、陰のうが破れて睾丸が外に
飛び出したり、正常な位置から腹部、恥骨部、鼠経部などに移動するものです。このほか、先天的に
睾丸がない無睾丸症、逆に3個以上の睾丸を有する多睾丸症などがあげられます。
検査と診断
泌尿器科できちんと病気を鑑別
 睾丸の病気の診察では、まず問診、視診、触診が行われます。
触診では、睾丸や副睾丸の位置、膨張の程度、硬結(しこり)、圧痛の有無などを調べます。
 睾丸と副睾丸がひとかたまりになっている場合は、急性の睾丸炎副睾丸炎が疑われます。
陰のう内にあるはずの睾丸に触れることができないときは、停留睾丸か無睾丸症の可能性があります。
 睾丸の病気は、視診と触診でほぼ見当がつきますが、確定診断のためには、必要に応じて透光検査や
超音波検査などが行われます。透光検査は陰のう水腫の診断のために行うもので、懐中電灯を
陰のう部にあてて、陰のうが透けて見えたら陰のう水腫と診断されます。
 このほか、男性不妊症の診断のためには、精液を採取して精子数や運動率などを調べる精液検査や、
精子の形成機能をみる睾丸生検などを行います。
治療
膿瘍ができると手術が必要
 急性睾丸炎と急性副睾丸炎の治療では、抗生物質や消炎鎮痛剤が処方されたり、陰のう部を軟らかい
サポーターで固定したうえで冷湿布を行います。通常1〜2週間で徐々に症状は治まり、1〜2ヶ月で
完治します。しかし、急性睾丸炎で睾丸に膿瘍を形成したケースや、慢性睾丸炎、慢性副睾丸炎の
多くは、睾丸あるいは副睾丸の摘出手術が必要となります。
 睾丸捻転症では、睾丸が壊死を起こさないように、発症後6時間以内に治療をする必要があります。
捻転が軽度の場合には、陰のうの外側から精索のねじれを手で治すこともありますが、大部分は
手術で回転を元に戻します。睾丸がすでに壊死を起こしている場合には、睾丸を摘出しなければ
なりません。
 停留睾丸は、黄体ホルモン放出ホルモンを投与してしばらく様子をみますが、睾丸が下降しなければ、
睾丸を陰のう内に下降させて固定する精巣固定術が行われます。
 陰のう水腫は通常、陰のうに針を刺して液体を抜く穿刺法で治療しますが、再発がみられるケースは、
根治手術の対象になることもあります。
 また、睾丸機能不全症では、男性ホルモンや性腺刺激ホルモンの充てん療法により、
二次性微や受精能力を回復させることができます。
 なお、手術で一方の睾丸を摘出しても、もう一方が正常であれば不妊症になることはありません。
まとめ
治療中は安静を心がける
 急性睾丸炎や副睾丸炎などの治療中は、安静を心がけ、腫れが完全に治るまで刺激の強い
飲食物はなるべくとらないようにします。また、飲酒や性行為も控えるようにしましょう。
 睾丸の病気のなかには自覚症状に乏しいものもあり、気づいたときにはかなり症状が進行し、
手術が必要になるケースも多くあります。入浴時に陰のう部のしこりや腫れの有無をチェックする習慣を
つけておくとよいでしょう。子どもに起こる病気もあるので、親が日ごろからチェックするようにします。
 睾丸の病気になると、性生活や不妊症に対する不安を抱きやすいものですが、ほとんどは適切な治療に
よって改善します。恥ずかしがらずにパートナーと十分に話し合って、ともに病気を理解し、
協力しながら治療に臨む姿勢が大切です。

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