肝臓がん
肝臓がんの発症には、C型肝炎ウイルスが大きく関わっていると考えられています。
C型慢性肝炎や肝硬変の人は定期的な検査が大切です。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・皮膚が黄色みをおびていませんか?
・白目が黄色くなっていませんか?
・尿が番茶色になっていますか?
・腹部の膨満感がありますか?
・息苦しさがありますか?
・体重が減少していませんか?
・食欲不振がありませんか?
・お酒がまずく感じるようになりましたか?
どんな病気ですか?
原発性と転移性のものがあります
 肝臓がんは、組織学的にみると実に多くの種類に分類されますが、通常は原発性肝臓がんと転移性肝臓がんに
分けて考えます。
 原発性肝臓がんは、がんが最初から肝臓に発生するタイプで、肝細胞に生じる肝細胞がんと、肝臓内の胆管の
細胞に起こる胆管細胞がんが95%を占めています。
 特に成人の場合には、肝細胞がんの占める割合が原発性肝臓がん全体の90%にもぼります。
したがって、一般的に肝臓がんといえば、原発性の肝細胞がんを指しています。
 原発性肝臓がんには、そのほかに肝細胞・胆管細胞混合がん、未分化がん、胆管のう胞腺がんなどが
含まれますが、これらは極めてまれなタイプです。
 転移性肝臓がんは、ほかの臓器のがんが肝臓に転移して起こるケースです。肺がんからの転移が最も多く、
次いで胃がん、膵臓がん、大腸がん、胆のうがん、乳がん、食道がん、子宮がん、腎臓がんの順になっています。
 肝臓には、血液が流入する大きな血管ルートが二つあります。肝臓を養う肝動脈と、消化管から来る門脈という
静脈系のルートです。がんは、血液を介して転移することも多いので、二つのルートを通じて大量に血液が
送り込まれる肝臓は、がんが転移しやすい臓器といえます。
また、肝臓から送り出される血液も大量です。このため原発性肝臓がんは、肺や骨などのほかの器官に
転移を起こしやすいがんでもあるのです。
原因
患者の大半は肝炎ウイルスに感染
 肝臓がんの原因は、はっきりと解明されているわけではありませんが、いくつかの誘因があげられています。
肝臓がんの誘因のうち、特に重要視されているのが肝炎ウイルスの関与です。肝臓がんの人の約20%は
B型肝炎ウイルスに、約70%の人はC型肝炎ウイルスに感染していることが明らかにされています。
B型あるいはC型肝炎ウイルスの作用によって、正常な肝細胞に突然変異が起こり、細胞ががん化するのでは
ないかと推定されています。
 ただし、たとえB型、C型肝炎ウイルスに感染しても、すぐに肝臓がんになるわけではありません。
ウイルスに感染してから肝臓がんに至るまでは、長い年月がかかります。
・数十年かけて肝臓がんに移行
 B型、C型肝炎ウイルスは、血液を介して感染します。主な感染ルートとしては、母子感染、ウイルスを含んだ
血液の輸血、性行為、入れ墨、麻薬の回し打ち、医療従事者の事故などがあげられます。
 母子感染については、妊娠中の血液検査から母親の感染之有無がわかるので、B型肝炎の場合には、
新生児にワクチンを投与して感染を抑えることが可能です。
C型肝炎の母子感染は非常にまれです。
 輸血血液に関しては、血液中の肝炎ウイルスの有無を調べる検査が実施されるようになっています。
特にC型肝炎は感染原因の大半が輸血にあったので、C型肝炎患者の血液をふるい落とすための
スクリーニング検査が行われるようになって、感染者は激減しています。
 肝炎ウイルスが肝臓に侵入して増殖すると、ウイルスに対してつくりだされた抗体がウイルスを撃退し始めます。
すると、ウイルスが感染している肝細胞が破壊されて炎症が起こり、急性肝炎が発症します。
急性肝炎はそのまま治癒することもありますが、症状が6ヶ月以上続くと、慢性化したと判断します。
 肝臓に侵入した肝炎ウイルスが少量の場合には、からだの免疫機構がウイルスを撃退せず、まったく炎症が
起こらないキャリア(ウイルス保持者)という状態が続くことがあります。キャリアのうち約10%の人は、
やがて慢性肝炎に進むといわれています。
 また、C型急性肝炎の場合には、自覚症状が現れにくいので、本人が気づかないうちに発症し、
そのうち約60%が慢性肝炎に進むといわれています。
 いったん肝炎が慢性化すると、数年から数十年という年月を経て病気が少しずつ進行します。
そして次第に肝硬変に移行します。
 特に、肝臓の炎症や、炎症後の線維化が強い活動性のC型慢性肝炎の場合、肝硬変になりやすいと
いわれています。
 肝硬変の程度が進につれて、肝臓がんを発症する確立が高くなります。肝硬変から肝臓がんに移行するには、
1年間につき約7%とするデータもあります。B型、C型肝炎ウイルスの感染者や慢性肝炎患者、
なかでも肝硬変の人は、肝臓がんになりやすいハイリスク・グループといえます。
 また、統計的にみてハイリスクの人が多量の飲酒を続けると、肝臓がんを発病しやすくなります。
さらにはアルコール性肝硬変から肝臓がんになるケースもみられ、その場合にもC型肝炎ウイルスが
関わっていると推測されています。
 肝炎ウイルスのうち、最も新しく発見されたG型も肝臓がんの発生に関係があると考えられていますが、
詳しいことはまだ明らかにされていません。
 なお、胆管細胞がんの原因は、現在のところ不明です。
症状
肝臓がんの80%が肝硬変を伴う
 肝臓がんの80%は、肝硬変を伴っています。肝臓がんの症状には、がん自体が招く症状だけでなく、
肝硬変によって引き起こされる症状も含まれています。
 肝硬変による主な症状としては、全身倦怠感、疲れやすさ、食欲不振、吐気や嘔吐、歯肉からの出血や鼻血、
腹水、急激な体重増加、むくみ、腹部膨満感などがあります。
 一方、肝臓がん自体が招く自覚症状には、体重減少、発熱、黄疸、呼吸困難、腹部膨満感、吐血、
突然の腹痛、貧血から生ずるめまいや脱力感、頻脈、冷や汗といった症状があります。
 突然の腹痛と貧血症状は、肝臓がんが破裂したり、出血した際にみられる肝臓がん特有の症状です。
突然の腹痛、貧血症状が現れたときには、肝臓がんがかなり進行していると考えられます。
検査と診断
血液・画像・組織検査から判断
 肝臓がんの診断は、血液検査と画像検査によって行われます。
・腫瘍マーカーを調べる血液検査
 血液検査では、肝機能の確認と同時に、腫瘍マーカーという、がんがつくりだす特別なたんぱく質の有無が
調べられます。腫瘍マーカーは、肝臓がんの発見に欠かせない、有効な検査といえます。
 肝臓がんの腫瘍マーカーには、AFP(アルファ・フェトプロテイン)やPIVKA−U(異常プロトロンビン)などが
ありますが、なかでもAFPが有効な検査対象になります。
 ただし、肝臓がんの人からAFPが検出されるわけではなく、また肝炎や肝硬変の場合でもAFPが陽性になる
ことがあります。
このため、血液検査だけでなく、必ず画像検査も並行して行われます。
・超音波検査とCT検査で画像診断
 画像診断の方法はいろいろとありますが、肝臓がんの場合には、主に超音波検査とCT検査(コンピューター
断層撮影)検査が用いられます。
 超音波検査は、体外から臓器に向けて超音波を照射し、反射波を画像化して臓器の実質(切り口)や
血管の状態を観察する、レーダーのような検査です。X線のような人体への悪影響がなく、検査時間も
10分程度ですみます。
 X線を使用するCT検査は、超音波では観察しにくい肝臓の裏側も調べることができます。二つの検査が
併用されるケースも多く、どちらの検査も外来で受けることができます。
 超音波検査やCT検査で肝臓がんの疑いがあると診断された場合には、MRI(磁気共鳴影像法)検査の
対象となります。
 さらに詳しく調べる必要があれば、入院して肝動脈血管造影検査が行われます。
太もものつけ根の大動脈からカテーテルという細い管を挿入し、肝動脈に達したところで造影剤を注入して、
X線撮影をする検査で、がんの個数や広がり具合などの情報が得られます。
・確定診断に役立つ組織検査
 血液検査と画像検査の結果だけでは肝臓がんと確定できない場合には、針生検による組織検査が実施
されます。超音波によって映しだされた画像を見ながら、がんが疑われる部位に細い針を刺し、組織を採取して
顕微鏡で観察し、がんかどうかを調べます。
 なお、医療機関によってはがんの確定診断のためではなく、肝炎についての詳しい検査を目的として
血液検査や画像検査と並行して、組織検査を行うところもあります。
治療
外科的肝切除と内科的治療が中心
 治療の中心は、手術による外科的な肝切除と内科的な肝動脈塞栓術(TAE)、経皮的エタノール注入法(PEIT)
の3療法です。
 根治治療としては外科的肝切除が有効といえますが、肝臓がんは再発率が高いので、繰り返して行える
内科的な治療法も大きな役割を担っています。
 治療方法は、がんの個数や分布状況、肝機能の状態といったさまざまな条件を考慮したうえで選択されます。
・外科的肝切除
 近頃、効果の高い内科的な治療法が開発されてきましだが、根治治療としては外科的肝切除が最も優れて
います。ただし、切除についてはいくつかの適応条件があります。
 具体的には、がんがほかの臓器に転移していないこと、肝硬変があまり悪化していないことがあげられます。
ほかにも肝機能の低下がみられずに腹水や黄疸などの症状が現れていないこと、糖尿病などの病気を
合併していないこと、高齢でないことも条件となります。また、がんが小さく、数も少なく、狭い範囲に限局している
ほうが手術の成功率は高くなります。
 切除範囲は、門脈による血流の支配状態から、肝臓を4区域か8区域に分けたうえで決められます。
この区域の境界に沿ってメスを入れれば、出血量が少なくてすむからです。
 手術の前には、画像検査でがんの位置や広がり具合を正確に把握し、手術中にも超音波検査を行って、
病巣や血管の状態を確認します。
 肝切除のマイナス面は、手術が原因で起こる、肝機能の低下や感染症といった合併症がわずかながら
みられる点です。また、入院期間も長期になります。手術後には1〜1、5ヶ月の入院が、さらにその後も
1〜2ヶ月の自宅療養が必要になります。
 低下した体力を回復させて通常の日常生活を送ることができるようになるまでに、半年前後かかります。
・経皮的エタノール注入法(PEIT)
 PEITは早期肝臓がんに対しては、外科的肝切除と同じぐらい治療効果が高いため、最も注目を集めている
治療法です。
 純度100%のエタノールをがん組織に繰り返し注入し、たんぱく質凝固作用によってがん細胞を死滅させて
しまうものです。
超音波の画像でがん病巣を性格に確認しながら、腹部の体表から0.7mmか0.8mmの太さの長い注射針を
刺して、エタノールを注入します。
 適応されるケースは、がん細胞の大きさが最大径3cm以下の早期がんで、個数も3個以下と限られていますが、
腹水や黄疸が現れていなければ肝機能のかなり低下した人にも行われます。
 1個のがんに対して、1日につき1〜2回エタノールを注入します。1回の治療時間は10分程度ですみます。
3〜4日の間隔で数回繰り返して注入し、治療の全体が終了するまで3〜4週間必要になります。
 副作用はほとんどみられません。針を刺した部分が痛んだり、発熱することがありますが、数時間から半日
ほどで治ります。
 また、PEITは肝臓自体に対する負担も少なく、ほかの治療に比べて肝機能を悪化させることが
ほとんどありません。そのため、たとえがんが再発しても、何度でも繰り返し行えるという点があります。
・肝動脈閉塞術(TAE)
 TAEは、がん細胞に酸素や栄養を供給している肝動脈をふさいで、がん細胞を死滅させる方法です。
肝臓がんが進行していて肝切除が行えない場合にも行われる方法で、最も適応範囲の広い治療法です。
 肝臓には門脈と肝動脈の二つのルートから血液が送り込まれますが、肝臓に発生するがん細胞の大半は、
肝動脈からしか血液の供給を受けることができません。
 そこで、肝動脈血管造影検査のときと同じように、太もものつけ根の大動脈からカテーテルという細い管を
入れて肝臓の方向へ押し進め、肝動脈に到達したところで、1〜2m大の閉塞物質(ゼラチン・スポンジ)の
細片と抗がん剤、造影剤を混ぜて注入します。
 ただし、肝臓がんの一部は門脈からも酸素や栄養を受け取ることができるので、TAEだけで完全に治癒する
確率は10%程度とされています。
 1回の治療時間は1〜1.5時間ですみ、7〜10日間で退院できます。
カテーテルを挿入する際に肉体的な負担がかかり、腹痛や吐気、食欲不振、発熱などが現れることがありますが、
こうした副作用はだいたい4〜5日で治まります。
・その他の治療法
 マイクロ波療法は、がん組織に針を刺し、針先からマイクロ波を照射して、がん細胞のたんぱく質を凝固させる
方法です。肝細胞がんが小さいケースに有効とされている、新しい治療法です。
 がんが進行して血管に浸潤していたり、ほかの臓器に転移している場合には、抗がん剤による化学療法や、
放射線療法が行われます。
・肝細胞以外の肝臓がんの治療
 胆管細胞がんの根治療法でも、基本的に外科的肝切除が行われます。しかし、早期発見が難しいために、
がんが進行していて、手術の対象にならない場合もよくあります。
 一方、転移性肝臓がんの場合は、肝硬変を伴わないケースがほとんどなので、肝機能がそれほど低下
していないため、肝切除が適応となる症例がしばしばあります。
・治療後の生活上の注意点
 一般的に肝臓がんの治療を受けると、肝機能が低下する傾向があります。肝機能が低下していると、
胃・十二指腸潰瘍をはじめ、さまざまな合併症につながることも少なくありません。
 腹水がたまって体重が急に増加することがあります。体重チェックは毎日行う必要があります。
 食事については、食べてはいけない食品は特にありませんが、肝機能が低下して腹水がみられるような
場合は、塩分の摂取量を控えるようにします。さらに、食べ過ぎに注意し、腹8分目を守るようにしましょう。
 便秘をすると、治療後の体調を崩したり、肝性脳症の誘因となることがあります。
そこで、食物繊維の多く含まれる食品を食べることも大切です。ときには、積極的に下剤を服用しまければ
ならない場合もあります。
 合併症がない場合は、適度な運動を続けるようにしましょう。肝切除を受けて長期入院していた人は、
体力や脚力が低下しているので、歩行などの軽い運動から始めて、徐々に運動量を増やしていきます。
肝臓がんの病期と可能な治療法
・ステージ(がんの進行程度)
ステージ1 単発した直径2cm以下のがん腫で、がん細胞が血管に侵入していない。
ステージ2 単発した直径2cm以下のがん腫であるが、がん細胞が血管に侵入している。または、左右どちらか
一葉に限局した最大腫瘍径が2cm以下の多発性がん腫、または単発した直径2cmを超える
がん腫であるが、がん細胞が血管に侵入していない。
ステージ3 単発した直径2cmを超えるがん腫で、がん細胞が血管に侵入している。
または、一葉に限局した最大腫瘍径が2cmを超える多発性がん腫。
ステージ4 一葉を越えて存在する多発性がん腫、またはがん細胞が門脈あるいは肝静脈の
一次分枝の血管に侵入している。
*がん腫・・・粘膜や皮膚などの上皮細胞に発生した悪性腫瘍
・臨床病期(肝機能の程度)
1期 肝障害の自覚症状がない。
2期 症状をたまに自覚する。
3期 いつも症状がある。

・各病態と可能な治療法
ステージ/臨床病期 1期 2期 3期
ステージ1 肝切除、PEIT、TAE 肝切除、PEIT、TAE PEIT、TAE
ステージ2 肝切除、PEIT、TAE 肝切除、PEIT、TAE PEIT、TAE
ステージ3 肝切除、TAE 肝切除、TAE TAE
ステージ4 肝切除、TAE 肝切除、TAE TAE
予防と日常生活の注意点
高危険群の人は定期検診が必要
 肝臓がんでは、発病しやすいハイリスク・グループの存在が指摘されています。ウイルス性の慢性肝炎や
肝硬変の人は、ハイリスク・グループに当てはまります。自分の病気を理解し、医師の指示を守りながら
日常生活を送ることが重要になります。
 特に大切なのが、定期的な受診を受けることです。自覚症状が現れてから受診したのでは、
治療が困難になることがあります。
 検査を受ける頻度は、B型、C型肝炎ウイルスの感染者や慢性肝炎患者で特に症状が現れていない場合、
1年に1回で十分です。肝機能に何らかの異常があれば、半年に1回、血液検査でAFPの値が少しでも
高くなっていれば、3ヶ月ごとに受けるのが目安です。
 たとえ肝臓がんを発症しても早期に発見されれば、治療効果の高いPEITによってがん病巣を壊滅させることが
可能です。また、治療後にも定期検診を続けていれば、再発してもその都度、PEITを繰り返して対処していく
ことができます。
 日常生活では、原則として禁酒し、栄養バランスのとれた、たんぱく質の豊富な食事をとりましょう。
当たり前のようですが、十分な睡眠時間をとり、疲れを残さないようにすることも肝臓の炎症を抑えるためには
大切な心がけです。
増加の傾向のある肝臓がん
 肝臓がんの患者数は、年々増加傾向にあります。1995年の部位別がんの死亡数をみると、
男性では肺がん、胃がんに次いで第3位、女性では胃がん、肺がん、結腸がんに続いて第4位となっています。
 B型肝炎ウイルスのワクチン開発による母子感染之防止や、血液製剤におけるC型肝炎ウイルスの
スクリーニング検査によって、B型、C型肝炎ウイルスの新たな感染者は減っています。
将来的には、肝臓がんの患者数も激減するのではないかという指摘もあります。しかし一方で、B型、C型肝炎の
患者数はキャリアを含めて400万人にのぼるといわれる現状があります。
 肝臓がんはハイリスク・グループがはっきりしている病気です。ハイリスク・グループに該当する人は
定期検診を怠らず、医師の指導をきちんと守ることを心がけましょう。
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