肝炎
ウイルス性の肝炎が多く、その一部は慢性肝炎から肝硬変へと移行します。
早めの検査と治療で、病気の進行をくい止めましょう。


どんな病気ですか?
肝臓が炎症し機能が低下
 ウイルスやお酒の飲みすぎ、薬などによって肝臓に炎症が起きた状態を肝炎といいます。肝炎になると
肝臓の働きが低下し、結果としてからだ全体に障害が起きます。とくに、日本人は肝炎ウイルスを保有している
率が、先進国のなかで飛びぬけて高く、ウイルスが原因で肝炎が起きるケースが大半を占めています。
また、ウイルス性肝炎の一部は、慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓がんへと進行します。
肝臓がんの原因の85%はC型肝炎ウイルスによるもの、10%はB型肝炎によるものとみられています。
 ウイルスが肝炎を起こす仕組みは、体内に入ってきたウイルスが、肝臓の細胞の中に入り込んで増殖します。
それを、人間のからだの免疫機構が発見し、排除排除し様とします。しかし、ウイルスは細胞の中に隠れている
ため、ウイルスだけを攻撃することができません。このため、免疫機構はウイルスに感染した細胞を
まるごと破壊するので、炎症がおきるのです。
 肝炎はその原因なぢによって、主に次のように分けられます。
・急性肝炎
 主にウイルスによって起きる急性の炎症をいいます。急性肝炎の原因になるウイルスは、A型とB型、C型、
D型、E型などですが日本でD型、E型に感染することは、まずありません。C型急性肝炎のうち約60〜80%は
慢性肝炎へと移行します。感染や感染経路は、ウイルスの種類により異なります。
 ウイルス性の急性肝炎のうち約2%の人は、劇症肝炎という重い病気に移行します。そのほとんどはB型から
発病し、急性肝炎の症状が現れてから8週間以内に意識障害が起こり、危険な状態になります。
脳浮腫や腎不全、感染症などを合併することもあります。
・慢性肝炎
 6ヶ月以上にわたり症状や検査値の異常が持続するものをいい、肝細胞の変性や壊死などがみられます。
自覚症状がなく、かぜと思うことも多いようです。ほとんどがウイルスによって起こり、B型ウイルスが20%、
C型ウイルスが70%を占め、それ以外は、アルコールや薬による肝炎から移行するケースです。
 慢性肝炎から肝硬変や肝がんに進行するケースもあります。なかでも、C型ウイルスは1989年に
発見されたばかりで、まだよく解明されていない部分も多いのですが、肝硬変や肝がんに移行する率が
高いとされています。
・アルコール性肝炎
 長期間の慢性的な飲酒者が、さらに大量の酒を飲んだことがきっかけとなって起きるもので、
肝細胞が壊死したり、線維化するなどの異常が進んだ状態をさします。B型、C型肝炎と合併した場合、
進行が早くなり、その結果肝がんの発生率が高くなるといわれています。
・薬物性肝炎
 医薬品や毒物などの化学物質により起きる肝障害のことで、薬剤が肝細胞を直接破壊するケースと、
薬物がアレルギー反応を誘発して炎症が生じる場合があります。
ヘルスチェック
こんな症状に注意!
すべてに該当するとアルコール性肝炎、飢えの項目に該当すると急性肝炎の疑いがあります。
・吐気がしますか?
・熱があり、からだがだるくてたまりませんか?
・全身の皮膚が、黄色っぽくなっていますか?
・食欲のない状態が続いていますか?
・毎日、日本酒に換算して3合以上の酒を飲んで、5年以上たちますか?
原因
B型、C型は血液で感染する
 それぞれのウイルスは次のように感染します。A型ウイルスは経口感染します。便に混じり体外に排出
されるのが特徴で、汚染されたA型ウイルスの混じった水を飲んだり、汚染された魚介類を食べたりすると
感染します。B型ウイルスは、血液から感染します。また、母親がこのウイルスを持っていると、出生時に
子どもに感染します。C型もB型と同じように、血液を介して感染しますが、B型に比べると性交による
感染や母子感染は少ないようです。
 アルコール性の肝障害は、5年間、60gのアルコール(日本酒3合もしくはビール大瓶3本に相当)を
毎日飲むと発症の危険度がたかくなるといわれています。
また、女性ホルモンの影響で、男性より女性のほうが少ない量のアルコールで発病しやすいようです。
 薬物性の肝炎では、抗生物質、抗不整脈薬、降圧剤などが原因になりやすいといわれています。
しかし、アレルギー性のものは、アレルギー反応が出るかどうかに個人差があるため、
どの薬で発病するか予測はできません。
症状
倦怠感や食欲不振から始まる
 急性肝炎の場合、A型では約30日間の潜伏期間、B型では1ヶ月から6ヶ月おいてから症状が出始めます。
全身の倦怠感、脱力感、食欲不振、嘔吐、発熱が1週間ほど続いた後、黄疸が現れ、やがて全身症状は
軽くなり、快方に向かっていきます。C型急性肝炎は症状がほとんど出ませんが、そのうち70%程度は
慢性化していきます。
 劇症肝炎は最初は急性肝炎とまったく同じ症状で始まります。急性肝炎では黄疸が出ると症状が
快方に向かうのに対し、劇症肝炎は黄疸が出ると、ますます症状が重くなります。
意識障害が起こるのも特徴で、軽いうちはほとんど自覚しない程度でも、重症になると1日中眠ったり、
昏睡状態に陥ることもあります。
 慢性肝炎は全身の倦怠感、食欲不振、体重減少、悪心、みずおちの不快感などが主な症状ですが、
検査で異常がみられるだけで、自覚症状がまったくない場合もあります。また、症状が進むと、指の付根や
指先、てのひらが赤くなったり、男性でも女性のように乳房が大きくなってくることがあります。
アルコール性肝炎でも、このような症状がでます。
 薬物性肝炎では、薬物や毒物を服用すると、発熱や発疹、食欲不振、皮膚のかゆみ、黄疸などを起こし、
また、灰白色の便が出ることもあります。
診断
血液検査を行うのが基本
 ウイルス性の急性肝炎では、肝機能検査と血清学的検査が行われます。肝機能検査は、肝細胞が
破壊されたときに血液中に放出されるGOTやGPT、ビリルビンなどの量を調べるものです。血清学的検査は、
血液中のウイルスの抗原や抗体をみて、ウイルスに感染しているか、症状はどのように進むのか、
感染力の強弱などの指標をみる検査です。ウイルスの遺伝子(DNAやRNA)を合成する酵素を直接調べる
場合もあります。慢性肝炎では、これらの検査に加え、腹腔鏡による検査や肝生検を行います。
これは、肝臓組織の一部を取り出して顕微鏡で観察し、障害の進行状況や、これからどう進んでいくのか
推測する検査です。
 劇症肝炎で意識障害が起きてくると、両手を水平に上げた時、鳥が羽ばたくような動きがみられることが
あります。これは劇症肝炎の特徴で、診断基準の1つになります。これに加え、血液検査、ときには
脳波検査、肝臓の画像診断が行われることがあります。
 アルコール性の肝炎の場合は、まず飲酒量が調べられます。1日日本酒3合以上の飲酒を毎日続けていて、
自覚症状や肝機能検査で異常があると、アルコール性が疑われます。腹部超音波検査、腹部CT検査、
MRI(磁気共鳴画像)、肝シンチグラフィーなどの検査や、肝生検などで、進行状況を調べます。
 薬物性の肝炎では血液検査で白血球が増殖しているかどうかを調べます。アレルギー性の場合は、
原因と思われる薬物を皮膚に塗り、アレルギー反応が起きるかどうかを調べます。
検査と検査値
主な肝機能の血液検査と正常値
項 目 検査の目的 正常値
GOT 肝細胞の破壊や変質による肝炎、肝硬変、脂肪肝 10〜40lU/l
GPT 肝細胞の破壊や変質による肝炎、肝硬変、脂肪肝 5〜40lU/l
γーGTP アルコール性肝障害、胆道閉塞 50lU/以下
ALP 胆道閉塞、肝内胆汁うっ滞 50〜260lU/l
総ビリルビン 肝炎、黄疸、胆石、溶血性貧血 0.2〜1.0mg/dl
アルブミン 肝炎の肝硬変への移行、肝障害 3.5〜5.5g/dl
血小板 肝炎の肝硬変への移行 20万〜40万/ul
プロトロンビン時間 劇症肝炎、肝硬変 10〜12秒間で80〜100%
治療
安静と栄養で再生力を
 慢性肝炎を根治する治療法は、今のところありません。まず、栄養のある食事をとり、食後は肝臓への
血流量を多くするために横になりましょう。これで、肝臓の再生力を養います。また、肝臓に負担をかける
飲酒や喫煙はやめ、カフェイン飲料もとり過ぎないよう注意します。
 薬物療法では、ウイルス性肝炎の場合、ウイルスの増殖を抑えるインターフェロン治療や、炎症を抑える
グリチルリチン製剤がよく使われます。慢性では、小柴胡湯、柴苓湯などの漢方薬が処方されることも
あります。また、免疫機構による肝細胞の破壊を抑えるために、ステロイド剤や免疫抑制薬が用いられる
こともあります。
 劇症肝炎の場合、絶対安静でブドウ糖やビタミン類、血液製剤、輸血の投与が行われます。
また、肝機能が著しく低下して血液中に有害物質がたまるため、新しい健康な血液と交換する方法も
行われます。
 アルコール肝炎では、まず禁酒です。重症の場合は、劇症肝炎と同じような治療をします。
薬物性肝炎でも、原因物質の服用をやめることが第一です。
予防
ワクチンと輸血検査を
 A型ウイルスの予防には、衛生状態の悪い国に旅行する際にはワクチンを注射しておき、旅行先では飲食物に
注意するようにします。B型は出生時に、母親から子どもに感染することがもっとも多かったのですが、
ワクチンの完成により、1980年代後半からそのような母子感染はほとんどなくなりました。
また、輸血の血液も事前によくチェックされるようになり、感染率は激減しています。
性交による感染もあるため、不特定多数との性交は危険です。C型は主に輸血で感染します。
現在は輸血血液のC型ウイルスの検査もおこなわれていますので、新しい感染は少なくなっています。
早めの検査が大切
 ウイルス感染は単なる診察や健康診断ではわかりません。症状があればすぐに病院で検査を受け、
慢性化や症状の進行を早めに抑えるようにしましょう。
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