腎臓のがん・膀胱のがん
前立腺がんと並ぶ代表的な泌尿器のがんで、初期には血尿が現れます。
年に1回は腹部エコーなどの検査を受け、早期発見に努めましょう。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・血液が混ざった尿が出ますか?
・下腹部に違和感がありますか?
・発熱がありますか?
・背中に痛みがありませんか?
・動悸や息切れ、めまいといった貧血症状がみられますか?
・体重が減少していませんか?
・腹部の体表に静脈が浮き上がって見えますか?
どんな病気ですか?
泌尿器に発生する悪性腫瘍
 腎臓のがん、膀胱がんは、ともに泌尿器に発生する悪性腫瘍です。腎臓のがんには、腎臓の
腎実質の尿細管上皮に発生する腎細胞がんと、尿路の上部にあたる腎盂(じんう)に発生する
腎盂がんがあります。腎臓のがんというと、一般には腎細胞がんのことを指します。
ほかの臓器のがんに比べると発生率は少ないものの、1980年代から少しずつ増加しています。
腎細胞がんや腎盂がんは、初期にあまり目立った症状があらわれないため、健康診断などで
偶然に発見されるケースが多いものです。がんが進行すると、体重減少や発熱、全身倦怠感などが
現れ、やがては肺や骨に転移します。
 腎臓のがんにかかる人の年齢をみると、40代から徐々に増え始め、50〜60代がピークと
なります。また、女性より男性にやや多い傾向があります。
 一方、膀胱がんのほとんどは、膀胱の粘膜に発生します。
膀胱がんを発症すると、初期には、痛みを伴わない無症候性血尿や下腹部の違和感などの
症状が現れます。がんが進行すると、尿が出にくい、尿の回数が多い、残尿感があるといった
症状がみられるようになります。そして、骨盤内のリンパ節、肺、骨、肝臓などへ転移します。
 膀胱がんの発生率は、年々増加する傾向がみられ、男性が女性の3倍ほど多くなっています。
また、年齢的には50歳以上が約90%を占めています。
腎臓のがんの原因と症状
腎細胞がんと腎盂がんに分類
 腎細胞がんと腎盂がんがありますが、ほとんどは、腎細胞がんです。
[腎細胞がん]
腎細胞がんの原因は、はっきりとわかっていませんが、脂肪の摂取量などにかかわりがあると
いわれています。また、長期間、人口透析を受けている人は腎細胞がんを発症する可能性が
高いといわれています。
 腎細胞がんの初期症状で最も多くみられるものは、血尿です。肉眼でも、薄いピンクや赤い色を
しているのがわかります。この血尿は、発熱や腹痛といった症状を伴わない無症候性血尿と
いわれるもので、しばらくすると自然に消失してしまいます。
 しかし、がんが進行してくると、再び血尿が現れ、背中やわき腹の痛みや腫れのほか、発熱、
貧血、食欲不振、体重減少などの全身症状もみられるようになります。
 腎細胞がんのなかには、ホルモンや、ホルモンに類似した物質をつくるものがあります。
がん細胞からこれらの物質が産出されると、赤血球増多症や高カルシウム血症などを招くケース
もみられます。
 腎細胞がんは静脈内に広がりやすく、下大静脈という腹部で最も大きな静脈に浸潤し、
腫瘍血栓をつくる場合があります。血栓によって下大静脈が閉塞すると血流がとどこおるため、
周囲の血管が腫れたり、陰のう内の静脈が目立ってくる精巣静脈瘤とよばれる症状が
生じるケースもみられます。
 腎細胞がんは進行が早い場合があり、血液を介して骨や肺に転移することが多いものです。
転移した部位の症状が先に現れることもあります。骨に転移した場合は、骨折しやすくなります。
また、肺に転移した場合は、息切れ、咳などの症状が現れるケースがみられます。
[腎盂がん]
腎盂がんは、かつて染色や塗装などに使用されていた化学物質に長期間さらされたり、
鎮痛薬などに含まれるフェナセチンを長期にわたって服用した場合に発症しやすいことが
明らかになっています。
 また、喫煙も腎盂がん発生の大きな危険因子となります。
腎細胞がんと同様、腎盂がんでも初期には無症候性血尿がみられます。がんが周囲の組織に
浸潤すると、背中やわき腹が痛んだり、腎盂炎を併発して発熱することもあります。
 また、腎盂がんによって、尿管が少しずつ閉塞して尿の流れがとどこおると、腎臓の機能が
低下してきます。この状態が長期間続くと、腎臓がまったく機能しなくなる無機能腎に陥る
ケースもみられます。
検査と診断
腹部エコーがスクリーニングとして有効
 腎臓がんの診断のためには、尿検査、血液検査のほか、腹部エコー(超音波)検査、
CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴映像法)などの画像検査が行われます。
 腹部エコーかCTによって腎臓のがんであることがわかったら、胸部X線検査や肺CT、
骨シンチグラムなどを行って、ほかの臓器への転移の有無を調べます。
 腎臓がんは、腫瘍の大きさや浸潤の程度などによって、四つの病気に分類されます。
T期、U期は、腫瘍がまだ腎被膜内にとどまっている状態です。周囲の組織や腎静脈、下大静脈
への浸潤やリンパ節への転移がみられるケースはV期と診断されます。また、腸管や肝臓、
背中やわき腹の筋肉といった隣接する組織への浸潤や、肺、骨、脳などへの遠隔転移が
認められる場合はW期に分類されます。
腎細胞がんの病期
 腎細胞がんの病期は、日本泌尿器科学学会、日本病理学会、日本医学放射線学会が
UlCC(国際がん連合)が定めたTNM分類に基づいて作成した分類に従って判断されます。
T期 腎に限局し最大径が2.5cm以下
U期 最大径が2.5を超えるが腎に限局する
V期 主静脈、副腎、腎周囲組織に浸潤するが、ゲロタ筋膜を超えない腫瘍でN1以下、
あるいは腫瘍は腎に限局するがN1
W期 ゲロタ筋膜を超え腫瘍が浸潤、またはN2以上、または遠隔転移を認める
*ゲロタ筋膜・・・腎臓の周囲の筋膜
*N1・・・所属リンパ節に1個の転移が認められる段階
*N2・・・所属リンパ節に2個以上の転移が認められる段階
治療
外科療法が治療の基本
 腎臓のがんに対しては、外科的手術によって腎臓を摘出することが、現在のところ最も
効果的な治療法です。
 腎細胞がんの手術療法では、基本的に根治的腎摘出が行われます。
根治的腎摘出は、がんが発生したほうの腎臓を摘出するほか、副腎や周囲の脂肪組織も摘出
します。リンパ節の切除が行われる場合もあります。
 転移を伴う場合も、症状を緩和させたり、進行を抑えるために全摘手術の適応となることが
あります。
 しかし、腫瘍が小さい段階で発見されれば、腫瘍だけを切り取り、腎臓を残す手術も行われる
ようになってきました。
 手術後は、一時的に腎機能低下が起こり、尿量が減少したり、血圧が不安定になることが
ありますが、3週間ほどで腎機能は回復してきます。
 なお、片側の腎臓を摘出しても、残った腎臓が低下した機能を補うので、時間の経過とともに
通常の生活が送れるようになります。
 転移した部位に対しては、通常、免疫療法が行われます。インターフェロンやインターロイキンー2
という薬剤を用いて、自己免疫力を高める治療法です。免疫療法で腫瘍の大きさや数が減少
しないときは、手術によって転移部位を切除することもあります。
 このほか、必要に応じてホルモン療法や放射線療法も行われます。
腎細胞がんは、腫瘍が小さいうちに発見されれば、治癒が期待できます。しかし、直径5cm以上の
大きな腫瘍や転移がある場合は、手術後再発することが多いとされています。
 また、体重減少や発熱などの症状を伴うがんは、予後が不良です。
腎盂がんの治療も、外科的療法が主体となります。腎盂がんの手術は、基本的にがんが発生した
ほうの腎臓と尿管、膀胱壁の一部を切除する腎尿管全摘術が行われます。
 しかし、リンパ節やほかの臓器などに転移している場合は、手術の適応になりません。
転移を伴う腎盂がんに対しては、シスブラチンという抗がん剤を中心とした化学療法や、
放射線療法が行われます。
膀胱がんの原因と症状
血尿が発見の糸口になる
 膀胱の表面は、移行上皮という粘膜で覆われています。膀胱がんは、この移行上皮が
がん化するものです。
 膀胱がんの誘因としては、2−ナフチルアミン、ベンチヂン、4−アミノビフェニールなどの染料が
よく知られています。これらの化学色素は、発がん性が明らかになったため、1970年に製造が
中止されましたが、日本でも染料工場の元従業員の間で膀胱がんが多発しています。
 また、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれるベンツビレンという化学物質も、発がん物質である
ことがわかっています。ベンツビレンは、タバコの煙にも大量に含まれていて、喫煙者は
非喫煙者の2〜3倍も膀胱がんになりやすいといわれています。
 膀胱がんの主な初期症状としては、無症候性血尿があげられます。また、下腹部の違和感が
現れる場合もあります。下腹部の違和感は膀胱炎でもみられる症状ですが、膀胱がんの場合、
抗生物質を服用しても治りにくいのが特徴です。
 がんが進行して尿道が狭窄してくると、排尿困難、頻尿、残尿感などの排尿障害が現れてきます。
また、尿管口が閉塞すると、腎臓から膀胱に尿が流れにくくなり、腎盂・尿管が拡張する水腎症も
みられます。水腎症になると、背中やわき腹に鈍痛が生じます。さらに進行すれば、リンパ節、
肺、肝臓などへの転移を起すようになります。
検査と診断
大半は膀胱鏡検査で診断がつく
 膀胱がんの診断には、膀胱鏡による検査が最も有用です。膀胱鏡の検査では、腫瘍の有無は
もちろん、がんの性質を鑑別することができます。膀胱がんのほとんどは、膀胱鏡検査と
尿細胞診によって診断がつきますが、確定診断として膀胱粘膜生検が必要です。
 がんであることが判明したときは、CTや胸部X線検査、腹部エコーなどを行って、がんの大きさや
広がり具合、ほかの臓器への転移の有無を調べます。
 膀胱がんは、形状によって乳頭がんと非乳頭がんに分類されます。乳頭がんは、表面が
カリフラワーのようにでこぼこしていますが、非乳頭がんは比較的平板で、こぶのように
盛り上がっているのが特徴です。膀胱がんは、さらにその性質によっても、表在性がん、
浸潤性がん、上皮内がんの三つに分類されます。
 表在性がんは、膀胱の粘膜にとどまることが多く、転移や浸潤がみられないものです。
浸潤性がんは、膀胱壁を破って壁外の組織へ浸潤し、転移しやすい性質をもっています。
 上皮内がんは、膀胱粘膜に沿って進行する性質があり、早期に転移のみられる最も悪性度の
高いがんです。
 膀胱がんの病期は、主に国際がん連合(ClUU)の定めたTNM分類によって決められます。
TNM分類では、局所でどのくらい進展しているか(T分類)、リンパ節に転移がないか(N分類)、
ほかの臓器に転移していないか(M分類)の3項目を組み合わせて判定します。
膀胱がんの病期


T0 原発腫瘍を認めない
Ta 乳頭状非浸潤がん
Tis 上皮内がん
T1 上皮下結合組織に浸潤する腫瘍
T2 筋層に浸潤する腫瘍
  T2a 浅筋層に浸潤する腫瘍(内側1/2)
  T2b 深筋層に浸潤する腫瘍(外側1/2)
T3 膀胱周囲脂肪組織に浸潤する腫瘍
  T3a 顕微鏡的
  T3b 肉眼的(膀胱外の腫瘍)
T4 次のいずれかに浸潤する腫瘍:前立腺、子宮、膣、骨盤壁、腹壁
  T4a 前立腺または子宮または膣に浸潤する腫瘍
  T4b 骨盤壁または腹壁に浸潤する腫瘍
N

N0 所属リンパ節への転移なし
N1 最大径が2.0cm以下の1個のリンパ節転移
N2 最大径が2.0cmを超え、5.0cm以下の1個のリンパ節転移、または
最大径が5.0cm以下の多発性リンパ節転移
N3 最大径が5.0cmを超えるリンパ節転移
M

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり
治療
経尿道的切除術と膀胱全摘術
 膀胱がんの治療は、がんの性質や進行度などによって、大きく異なります。
外科的療法としては、膀胱を残すTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)や膀胱部分切除術、
膀胱をとってしまう膀胱全摘出術があげられます。
 一般に、TNM分類で病期がT1の表在性の膀胱がんには、TUR-Btを実施します。
TUR-Btは、膀胱内部に膀胱鏡を挿入して、電気メスでがん組織を切除する方法です。
 がんが粘膜を破り、筋層内に達している場合は、膀胱部分切除術の適応となります。この方法では
腫瘍部分と筋層まで含めたやや広い範囲を切除します。
 病期がT2やT3の浸潤度の高い膀胱がんに対しては、膀胱全摘出術が必要となります。また、
T4がんでは、化学療法と放射線療法が併用されます。
 膀胱全摘出術では、全身麻酔を行って膀胱を摘出します。男性の場合は前立腺と精のうを、
女性の場合は子宮や尿道を一緒に切除します。
 また、骨盤内のリンパ節をとり除く手術も同時に行われます。
膀胱を摘出したら、尿を体外へ排泄するための尿路を新たにつくる尿路変更術が行われます。
尿路変更術には、回腸導管法、蓄尿型代用膀胱形成術、自然排尿型代用膀胱形成術などの
方法があげられます。
 回腸導管法は、左右の尿管を小腸とつなげて導管をつくります。導管の先を体外に出して
ストーマとよばれる排出孔をつくり、そこに尿をためる袋をつけて体外へ排尿できるようにする
方法です。この方法は、袋を定期的に交換する必要があるため、日常生活が制約されるという
欠点があります。
 蓄尿型代用膀胱形成術では、回腸または結腸で代用膀胱をつくり、腹壁のストーマからカテーテル
という細い管を使って排尿します。蓄尿型代用膀胱の場合、回腸導管法のように、尿をためておく
袋の交換をする必要はありません。代わりに、カテーテルの衛生管理や、生理食塩水を用いた
代用膀胱の洗浄といった自己管理が重要となります。
 自然排尿型代用膀胱形成術は、回腸や結腸を用いて代用膀胱をつくり、尿道とつなげることに
よって排尿を可能にする方法です。この方法は、手術前とほぼ同様に排尿することができるのが
大きな利点です。ただし、膀胱がんは尿道に再発する可能性があるため、再発の危険性が少ないと
診断された場合のみ、この手術が適応となります。
 尿路変更術はそれぞれにメリット、デメリットがあるので、どの方法にするかは、医師と十分に
検討したうえで選択するようにしましょう。
 転移を伴うものや進行がんに対しては、化学療法が行われます。化学療法では、一般に
2種類以上の抗がん剤を使用します。現在最もよく行われているのは、メトトレキサート、
ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンを組み合わせたM−VAC療法です。
 また、転移がなくても、がんが膀胱の筋層に浸潤している場合は、手術後の再発や遠隔転移を
防ぐために、化学療法を併用することがあります。
 このほか、がんの状態や性質によって、放射線療法やBCGあるいは抗がん剤の膀胱注入療法
などが行われるケースもみられます。
 膀胱がんは再発する可能性が高く、TUR−Btを行っても、5年以内に約50%が再発しています。
表在性のがんの場合、生命の危険に至ることはありませんが、何度も再発するのが特徴です。
再発を繰り返すうちに、性質が浸潤性のがんへと変化することもあるので、定期的に検査を
受けなければなりません。
 また、尿路変更術を行った場合も、代用膀胱やストーマの状態、腎障害が起きていないかどうか
などを定期的にチェックしてもらうことが重要です。
喫煙を控えて定期的に検診を受ける
 腎臓のがん、膀胱がんはともに、中高年に発症することが多く、初期には無症候血尿がみられる
点が特徴的です。血尿が出たからといって、必ずしもがんというわけではありませんが、
泌尿器系の異常を示す重要なサインだということを覚えておきましょう。血尿に気づいたら早めに
泌尿器科を受診して、きちんと検査を受けることが大切です。
 また、膀胱がんの発生には、喫煙が大きく関与していることがわかっています。予防のためには、
禁煙を心がけましょう。
 腹部エコーやCTといった診断技術の進歩により、以前は見過されていたような小さながんも、
高い確率で発見されるようになっています。腎臓のがん、膀胱がんも早期発見、早期治療が
何より重要です。特に50歳以上の人は、1年に1回程度、尿検査や腹部エコーなどの検査を
受けるようにするとよいでしょう。

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