咽頭がん・喉頭がん
女性より男性に圧倒的に多くみられます。のどの痛み、声のかれなど、
かぜと似た症状が現れるので、見逃さないよう注意が必要です。


どんな病気ですか?
男性に多いのどのがん
 咽頭と喉頭はのどにあたる位置にあって、入り口に近い部分が咽頭、気管に近い奥のほうが喉頭です。
咽頭は平均12cmほどの長さがあり、上部・中部・下部に分かれます。上咽頭は鼻腔に続き、
中咽頭は口腔へ、下咽頭は喉頭蓋と食道にそれぞれ続いています。咽頭は、細菌やウイルスなどの
侵入を防ぐという、生体防御に大切な役割を果たしています。
 咽頭の下にあって、気管につながるじょうご状の部分を咽頭とよびます。
呼吸をするとき、通常、空気は鼻から入って、咽頭、喉頭、気管、気管支を通って肺に運ばれます。
一方、飲食物は口から入り、咽頭、食道を経て胃に運ばれます。このように、のどには空気と
飲食物の二つの入り口がありますが、空気と飲食物が混ざらずに振り分けられるのは、
咽頭にふたがついていて、呼吸する時には開き、食べのもを飲み込む時には閉じるようになっているからです。
あわてて食べ物を飲み込んだりすると、むせてしまうのは、振り分け機能が上手に働かずに、
食べのもや飲み物が間違って気管に入ってしまうためです。
 また、咽頭には発声に関係する声門があります。声門とは、咽頭腔の側壁にある、甲状軟骨の裏から
前後に走る上下の2対のひだと、その間の狭い空間(声門裂)の総称です。上方のひだを仮声帯、
下方のひだを声帯とよびます。
 咽頭、喉頭にできるガンを、それぞれ咽頭ガン、喉頭ガンとよびます。咽頭ガンは耳鼻咽喉部の
ガンの約5%、喉頭ガンは約15%を占めています。
 年代別では、咽頭ガンは50〜70代に多くみられ、喉頭ガンの60〜80代よりやや若めになっています。
男女比ではいずれも男性に多くみられます。
 咽頭ガンと喉頭ガンの原因ははっきりわかっていませんが、喫煙や飲酒、声の出しすぎ、口腔内の
不衛生などが発声と関係があるのではないかといわれています。特に喫煙と密接な関連が指摘され、
男性に多いのはそのためだと考えられています。例えば、喉頭ガン患者のうち喫煙者は男性93%、
女性78%にのぼり、死亡率は喫煙本数の多いほど高くなるという相関関係もみられます。
 そのほか、咽頭ガンはEB(エプシュタイン・パール)ウイルス、喉頭ガンは子宮頚ガンの原因とも
指摘されているヒトパピローマウイルスとの関連が疑われています。

咽頭ガンの症状と治療
転移後に発見されることも多い
 早期に頸部リンパ節に転移しやすいので、のどの変調がみられるときには早めに受診しましょう。
・上咽頭ガン
[症状]腫瘍が細胞表面に膨らんでくるのではなく、深部に向かって増殖していくことが多いため、
初期には自覚症状があまり出ないのが特徴です。上咽頭はリンパ流に富み、かなり早い時期に
頸部リンパ節に転移する傾向があります。そのため、リンパ節が腫れていることから発見される
ケースが多いようです。
 上咽頭は鼻や耳とつながっているので、腫瘍が大きくなると鼻づまりが起きたり、鼻出血や悪臭のある
血性膿性鼻汁が出るほか、耳鳴りや難聴などの症状も現れます。腫瘍によって耳管が閉じて
中耳炎を起こすこともあり、単なる中耳炎と間違われて、ガンの発見が遅れることもあります。
また、上咽頭部分には神経や骨の接合部などがたくさんあるため、脳神経症状として激しい
片頭痛を起こしやすくなります。
[治療]腫瘍が周囲の組織に広がっていることが多く、手術で摘出は困難です。
むしろ放射線のほうが効果が高いので、コバルト照射やリニアックなどによる治療が主体になります。
同時に、転移を予防するため化学療法も併用されます。最近は、放射線療法の前に化学療法が
行われるケースも多くなっています。頸部リンパ節に転移している場合は、病巣とともにリンパ節を
取り除く郭清術が行われます。
 放射線療法の進歩により、以前に比べて予後はかなりよくなってきたとはいえ、
5年生存率は今なお30〜50%程度です。
・中咽頭ガン
[症状]初期症状として、のどの痛みや食べ物を飲み込んだりするときの痛み等がありますが、
単なる咽頭炎と思って治療を受けないまま放置し、初診時にはかなり進行しているケースも
多いようです。進行すると、口を開けるのが困難になります。
[治療]転移がみられない場合には、放射線治療、凍結手術、レーザー手術で治療します。
進行して、腫瘍が最大径4cmを超えている場合は、化学療法と放射線療法、さらに頸部郭清を含む
広範囲手術を行います。
 頸部リンパ節への転移が場合の5年生存率は約60%ですが、転移例では40%と、
予後はよくありません。
・下咽頭ガン
[症状]下咽頭ガンのうち、咽頭食道接合部に発生するものは、男性よりも女性に多い傾向があります。
のどがつかえるような感じから始まり、次第に、声がかれる、のどにつかえて食べにくい、
飲む込むときに痛いなどの症状がみられます。
 下咽頭ガンは広がりやすく、頸部の食道や喉頭にまで及んでいる場合が多く、頸部食道ガンと
よばれることもあります。
早期発見が難しいケースが多く、頸部リンパ節転移が起こってはじめて発見されることが多いようです。
[治療]放射線療法だけでは治らないことが多いため、放射線と手術を併用し、さらに転移の防止を
兼ねて化学療法も加えられます。転移がある場合は、頸部リンパ節取り除く郭清術を行います。
 手術では、下咽頭部の一部のみを切除することもありますが、多くの場合、下咽頭と喉頭を全部
摘出します。そのため術後、食道を切除し胃をつり上げて下咽頭断端と縫合したり、
空腸を移植して咽頭や喉頭の欠損部を補うなどの再建術が必要になります。
 多くの場合、嚥下困難による慢性の低栄養状態になります。そのため、高カロリー点滴などで
栄養改善が図られます。
 下咽頭ガンは症状が現れるのが遅いうえ、ファイバースコープなどでも見づらい部位に
発生するため、どうしても進行してからの発見が多くなります。したがって予後は悪く、
5年生存率は30%以下です。

喉頭ガンの症状と治療
進行すると全摘出が基本
喉頭ガンは、声帯に発生する声門ガン、声門の上にできる声門上ガン、声門の下にできる
声門下ガンに大別されます。声門ガンが妬く0%と多く、次いで約20%が声門上ガン、
残りの約10%が声門下ガンとなっています。
 喉頭ガンの進行期は4段階、あるいは5段階に分類されます。
治療法は一般に、初期は放射線、進行例では喉頭の全摘出が行われますが、ガンの部位、
広がりの程度などによって選択されます。
 喉頭ガンは頭頸部のガンの中でも最も予後が良好で、5年生存率は60〜70%となっています。
ただし、喉頭を全摘出すると声帯を失うため、声が出なくなるなど機能障害が残ります。
リハビリで機能回復も可能なので、治療を開始する前に、治療後の生活について
十分医師と相談しておくことをおすすめします。
・声門上ガン
[症状]声門より上にガンが出来ると、声の異常はすぐには現れず、最初はのどの違和感や
異物感があって、食べ物を飲み込むときに痛みを生じたりすることが多くなります。
腫瘍が大きくなって声帯の振動に影響を与えるようになると、声がかれてきます。
さらに増大し、気道をふさぐと呼吸困難に陥ることもあります。
[治療]T1では、手術による部分切除になりますが、ごく初期には多くの場合、放射線治療で治ります。
T2以上に進行した場合は、喉頭部の全摘出が原則となります。手術の前後に
放射線治療を併用することもあります。
・声門ガン
[症状]声門にガンが発生すること、ごく早い段階で声がかれてきます。専門医の間では
「頑固なかれ声に油断するな」といわれるほどで、かれ声が1ヶ月以上続くときには声門ガンが
疑われます。進行するとますます声がかれてきて、声が出なくなってしまうこともあります。
声門が狭くなると、喘鳴や呼吸困難が起こってきます。
[治療]T1a,T1bまでは放射線、T2以上は、状態に応じて喉頭部の部分切除か全摘出になります。
最近では、初期の声門ガンにレーザー手術をする場合が増え、放射線や化学療法を
組み合わせての治療も行われます。
・声門下ガン
[症状]声門より下にガンができること、早期にはほとんど症状がなく、たまに咳や痰がでる程度です。
腫瘍が声帯に達すると、かれ声が起こります。腫瘍面が露出して潰瘍ができると、血痰が
出ることがあります。また、進行すると、息がかなり臭くなります。
[治療]T1は放射線、T2以上は手術で喉頭を全摘出することが多くなります。

喉頭全摘出後のケア
永久気管孔に水が入らないように注意
 喉頭を全摘出すると、永久気管孔といって、首の付根部分に呼吸のための丸い孔を開けることになります。
喉頭を摘出すると、鼻や口から呼吸ができなくなるので、気管から直接呼吸するために、
あけた孔に直接気管の出口が縫い付けられます。
 永久気管孔がつくられると声が出なくなり、首に孔があいたままの状態になりますが、
呼吸ができて食事もとれます。永久気管孔をつくった後は、次のようなことに注意しましょう。
 気管孔を露出したままだと、冷たい空気やほこりなどが、直接気管から気管支、肺へと
運ばれてしまうので、マスクの役割をする15cu程度の小さなエプロン(プロテクター)を
使うようにします。既製品がありますが、ガーゼやハンカチなどでも代用できます。
その場合は、紐をつけるなど自分で使いやすいように工夫しましょう。
 気管孔からほこりが入りやすいので痰の量も多くなりがちです。また、これまで鼻や喉頭で
補われていた湿気が不足するので痰が硬くなります。加湿器で室内の湿度を調節したり、
水分を多めにとって痰が固まらないように注意します。孔がふさがらないよう、こまめにチェックして、
清潔を保つことです。
 エプロンの上から、男性ならワイシャツを着てゆるめにネクタイをしめれば、エプロンは
ほとんどわかりません。女性の場合はスカーフなどを上手に利用するよいでしょう。
ハイネックの服は避けます。
 気管孔から水が入ると、気管に入って咳き込んだり、むせたりします。肺に大量に水が入ると
溺れた時と同じようになってしまい、大変危険です。したがって水泳は厳禁です。
 また、お風呂に入るときには細心の注意が必要です。すべって転んでお湯が気管孔に入ったりすると
危険なので、慣れるまでは誰かに介助してもらいましょう。湯船に入るときは、肩までつからないように
注意します。からだを洗うときも、水しぶきがかからないようエプロンをつけてたほうが安心です。
洗髪のときは、腰を直角に曲げて永久気管孔が真下を向いた状態でお湯をかけます。
最初は、美容院などで洗髪してもらったり、家族に手伝ってもらいながら、自分で出来るこつをつかみましょう。
 食事制限は特にありませんが、手術で食道の一部が狭くなっていることがあるため、
つかえないように、よく噛んで食べます。鼻に空気を吸い込めないため、うどんやラーメンを
すすることはできなくなります。熱いものを「フーフー」と息を吹いて冷ますことも出来ないので、
火傷をしないように注意してください。また、嗅覚がほとんどなくなってしまうので、腐った物を
食べないように気をつけてください。
 ただし、食道発声法を習得すれば、鼻に空気を吸い込めるようになり、嗅覚も戻り、
めん類をすすって食べることも出来るようになります。
 そのほか、排便のときにいきむことができなくなるため、便秘にならないように繊維質の物を食べる、
水分をたっぷりととる、運動不足にならない様にするといった点に気をつけましょう。
喉頭ガンの進行程度による分類
声門上ガン T1:声門上部に限局。声帯運動は正常である。
T2:声門に進展。声帯運動は正常あるいは制限される。
T3:声帯は動かないが、病巣は喉頭内に限局される。
T4:甲状軟骨を破壊して喉頭外に進展している。
声門ガン T1a:片側の声帯に限局。声帯運動は正常である。
T1b:両側の声帯を侵す。声帯運動は正常である。
T2:声門上部または声門下部に進展。声帯は動く。
T3:片側または両側の声帯が動かない。
T4:甲状軟骨を破壊して喉頭外に進展している。
声門下ガン T1:声門下に限局される。
T2:声帯に進展。声帯は動く。
T3:声帯が動かない。
T4:輪状軟骨や甲状軟骨を破壊して喉頭外に進展している。
音声リハビリテーション
自分に合った発声法をみつけましょう
 喉頭ガンの全摘出で発声器官も失うので、声が出なくなりますが、食道を利用した発声法や
器具を使った様々な発声法があります。リハビリで発声法をマスターすれば通常どおり会話ができます。
[食道発声法]喉頭の全摘出をした人の約80〜85%が食道発声法を行っています。
口から空気を吸って、食道の途中でいったん止めて逆流させ、食道の入り口部や下咽頭粘膜などの
新声門を振動させて声を出す方法です。完全にマスターして通常の会話が出来るようになるまで
3ヶ月〜1年かかりますが、特別な装置がいらず、経済的負担もなく肉声が出せるため、
広く普及しています。
 最初はこつをつかむまで体力を消耗しますが、焦らず自分のペースで訓練していけば、
誰でもマスターできる方法です。
根気よく訓練を続けることが大切です。
[パイプ式人工喉頭]気管孔と口とをパイプで連結する方法です。パイプの中に声帯の代わりになる
ゴム製の膜が入っていて、これを振動させて発声します。7日から2週間でマスターでき、
きれいな音声が出せる方法ですが、器具が大きく、話をするたびに常に両手でパイプを支えて
いなければならないので、実行している人は全体の5〜10%です。
[電気人工喉頭]電気器具をのどに密着させて発生する方法です。高齢で食道発声法を訓練する
時間と体力がない、パイプ式人工喉頭では気管孔が刺激されて痛いという人などが利用しています。
全体の約10%が行っています。
 音の質が機械的で、会話の際に片手がふさがる点や、器具が7万円〜10万円と高価な点がネックですが、
会話の際の体力の消耗は一番少ないようです。
 人工喉頭は何種類かあって、それぞれ特徴が異なるので、よく比較して自分にとって使いやすいものを
選びましょう。
 所得制限はありますが、自治体が電気人工喉頭を無償交付するシステムも設けられているので、
住んでいる地域の自治体に確認しておきましょう。

予防の第一は禁煙すること
 咽頭ガンや喉頭ガンの発生の原因は十分に解明されていないものの、喫煙や飲酒との関係が
指摘されています。特に喫煙については、発ガンとの相関関係がはっきりしているので、禁煙は
重要な予防法といえます。
 仕事でよく声を出す人は、なるべく仕事以外では声帯を休ませる工夫も必要です。
新鮮な空気のもとで、皮膚やからだを鍛えることも、気道粘膜の抵抗力の強化につながります。
室内の換気や湿気の調節など、環境にも配慮して、日ごろからのどをいたわるように心がけましょう。
 また、早期発見のためには、自覚症状に敏感であることが重要です。声がかれる、のどが痛いなどの
症状が長引く場合は、単なるカゼと思わず、必ず検査を受けましょう。なお、受診する際は、
内科より耳鼻咽喉科がよいでしょう。
身体障害者の認定手続きを・・・
 喉頭全摘出を受けた人は、身体障害者福祉法に基づく3級の身体障害者に認定されます。
身体障害者の認定を受けるには、居住地の福祉事務所に、指定された医師の診断に基づいて、
作成してもらった診断書と写真、印鑑を持参し、交付申請書を提出して申請手続きをします。
申請後、1〜2ヶ月で身体障害者手帳が交付されます。この障害者手帳の交付を受けておくと、
交通機関の割引や税金などの優遇が受けられます。
 また、条件を満たせば、障害年金も支給されます。5年以内に請求しないと時効になってしまうので、
国民年金の人は各市区町村、厚生年金の人は社会保険事務所で確認しておきましょう。

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