インポテンス
勃起が不十分なために、満足な性交を行うことができないケースです。
薬物療法や原因疾患の治療が行われますが、パートナーの理解と協力も欠かせません。


どんな病気ですか?
男性の性機能障害の一つ
 性交時に、男性の陰茎が十分に勃起しないため女性の膣に挿入できないか、
あるいは挿入できても勃起の持続時間が短く、すぐ萎縮してしまうケースを一般的にインポテンス
(勃起不全)といいます。
 陰茎は、海綿体というスポンジ状の組織でできていて、多くの血管が集まっています。
また、陰茎の内部には海綿体洞という血管腔が分布しています。性的に興奮すると、陰茎の動脈から
海綿体洞に多量の血液が流れ込みます。このとき、海綿体洞からの血液の流出口である静脈は
ふさがってしまうので、血液が充満した陰茎は硬くなり、勃起します。
 そして興奮が絶頂に達すると、脳からの指令によって、精巣上体(副睾丸)にある精子と、精のう腺液や
前立腺液とが混ざり合って射出されます。これが射精です。
 従来は、「性欲、勃起、性交、射精、極致感のいずれか一つ以上欠けるか、もしくは不十分なもの」と
いうのがインポテンスの概念でした。現在では、この概念を広く機能性障害としてとらえ、
インポテンスはそのなかの一つとして位置づけられるようになりました。
種類と原因
機能性、器質性、混合性に大別
 インポテンスは、機能性(心因性)インポテンス、器質性インポテンス、混合性インポテンスに大別されます。
3タイプのほかに、薬物が原因のインポテンスや、病態がまだ明らかになっていないものもあります。
・機能性インポテンス
 機能性インポテンスは、勃起不全を招く神経や血管系の病気がなく、勃起機能は正常であるにも
かかわらず、心理的要因などにより性交が出来ないケースです。
 機能性インポテンスは、本人の性歴を詳しく調べると、診断がつくことが多いようです。
例えば、過去に性交がうまくいかなかった体験があると、性交に対する不安やストレスが募って、
勃起しなくなるケースがあります。神経痛やうつ病、精神分裂症などの精神疾患が原因となっている
場合もあります。
・器質性インポテンス
 器質性インポテンスは、生殖器の病気や形態の以上によって勃起不全を招いているケースです。
具体的な原因としては、尿道下裂や矮小(わいしょう)陰茎といった外性器の先天異常や外傷、
陰茎海綿体の血流障害、下垂体や精巣の障害による男性ホルモンの分泌低下などがあげられます。
さらに脳の障害、脊髄損傷をはじめとする脊髄の障害、骨盤内手術に起因する末梢神経系の
障害なども原因となります。
・混合性インポテンス
 純粋な機能性、器質性インポテンスは比較的少なく、両方の要素が交じり合った混合性インポテンスが
最も大きな割合を占めています。なかでも、糖尿病や高血圧症、虚血性心疾患などの病気をもつ患者に、
精神的な要素が加わって起こるケースが多くみられます。
加齢に伴うインポテンスもこのタイプに含まれます。
検査と診断
勃起機能検査で機能性と器質性を鑑別
 インポテンスの治療は、機能性のタイプか器質性のタイプかによって異なります。そのため、
インポテンスの検査では原因を識別する必要があります。
 まず、勃起機能検査が行われます。この検査は、機能性と器質性のインポテンスを鑑別するためのものと、
陰茎海綿体の動静脈の障害による血管性インポテンスをスクリーニングするものに大別されます。
 鑑別検査としては、視聴覚の性的刺激による勃起機能検査や、睡眠時勃起機能検査などがあります。
検査ごとに勃起を誘発するメカニズムが異なるので、いくつかの検査を組み合わせることによって、
機能性インポテンスか器質性インポテンスかをより正確に見分けることができます。
 機能性インポテンスではないことが判明したら、血管系検査、神経系検査、内分泌系検査などが
行われます。これらの検査はインポテンスを招いている原因を突き止めるためのものです。
検査の結果によって治療法が選択されます。
・視聴覚性的刺激試験
 視覚、聴覚、嗅覚、イメージといった大脳への性的な刺激が勃起中枢を興奮させて起こる、
色情勃起のメカニズムを利用したものが視聴覚性的刺激試験です。
ポルノビデオや写真を見て、勃起が起こるかどうかを確かめます。
 見た目にもはっきり勃起すれば、機能性インポテンスということになります。
しかし、勃起が起こらないからといって、ただちに器質性インポテンスと診断することはできません。
視聴覚の性的刺激に対する感受性には個人差があり、検査時の環境の影響を受けやすいからです。
そのため、最近では色情刺激に対する客観的な診断方法として、リジスキャン(商品名)によって
陰茎の周径と硬度を測定する方法がとられています。検査の結果、陰茎の硬さが一定以上あれば、
膣内への挿入が可能と判断されます。
 ただし、この方法では、器具を陰茎に装着すること自体に違和感が伴うので、勃起が起こりにくく
なっている可能性もあります。
 そこで、被験者に別室を用意して、検査時の様子をビデオに収録して判定したり、
被験者に自己申告してもらうなど、さまざまな工夫がされています。
・睡眠時勃起検査
 健康な男性の場合は、レム睡眠期に勃起が認められるものです。この現象は睡眠時勃起(NPT)と
いわれています。レム睡眠時の勃起が起こるかどうかを調べることによって、機能性インポテンスと
器質性インポテンスとを鑑別するのが、睡眠時勃起検査です。
 検査の方法としては、リジスキャン、NPTテスト簡便方などがあります。
リジスキャンは、睡眠中の陰茎の硬度と膨張率を、時間を追って連続的に測定する検査です。
睡眠時勃起検査としては、最も信頼性が高いものです。
 NPTテスト簡便方には、スタンプテスト、スナップゲイジ、エレクチオメーターなどの方法があります。
スタンプテストは、郵便切手を陰茎に巻き、睡眠中に切手のミシン目が切れるかどうかをみるものです。
 スナップゲイジという陰茎硬度測定バンドを用いる方法もあります。バンドの一部に
プラスチックフィルムの部分が切れれば、睡眠時勃起が起こっていることがわかります。
 エレクチオメーターは、裏面がマジックテープでできている目盛りのついたバンドです。
起床時と睡眠時の陰茎の大きさを測定して、膨張率を調べることができます。
 これらの方法によって、睡眠時の勃起の有無、陰茎の硬度、膨張率などを測定できます。
ただし、性的に興奮した状態での勃起の有無を調べることが出来ないという欠点があります。
・血管性インポテンスのスクリーニング検査
 陰茎海綿体の動脈に異常があると、陰茎の海綿体洞に血液が十分に流れ込まれず、
勃起が起こりにくくなります。また、勃起したときに静脈が閉鎖されないケースも、インポテンスにつながります。
 血管平滑筋弛緩剤の塩酸パパベリンやプロスタグランジンE1(PGE)を陰茎の海綿体の内部に注射して、
勃起が起こるかどうかを調べると、こうした陰茎海綿体の血管障害の有無が明らかになります。
・その他の検査
 器質性インポテンスであることが判明したら、勃起不全を招いている病気を突き止めるために
さまざまな検査が実施されます。また、機能性インポテンスの原因を詳しく調べるために、
心理テストが行われることもあります。

治療
主体は薬物療法や原因疾患への対処
 混合性インポテンスも含めて、インポテンスの原因を機能性と器質性に分けると、7対3くらいの
比率になります。
 機能性の場合は、主に精神療法や薬物療法が、また器質性に対しては原因疾患に応じた
治療が行われます。
・機能性インポテンスの治療
 機能性インポテンスには、ほとんどのケースで緊張や不安がかかわっているものなので、
こうした精神的ストレスを取り除くことが治療の基本となります。
 機能性インポテンスの多くは、性交についての不安や焦りが原因となっています。
例えば、1〜2回、性交の際に十分な勃起が起こらかっただけで、これからも失敗するのではないかという
思いが頭をよぎり、結果的に勃起が妨げられているケースがあります。こうした時には、
カウンセリングによって不安を取り除き、自身を回復させる方法が治療の主体となります。
 また、ノン・エレクト法が行われることもあります。一般的に、パートナーに性交を拒絶されると、
かえって性的欲望がかきたてられて勃起が誘発されるものです。ノン・エレクト法は、
このパラドック現象を利用した治療法です。本人に「勃起させるな」と強く思わせる逆療法によって、
亀頭部に感覚を集中させる訓練が行われます。
 カウンセリングやノン・エレクト法は時間がかかります。そこで、だいたいは注射や内服などによる
薬物療法や、勃起補助具を使う方法が併用されます。
 経口薬剤には、塩酸トラゾドン、ビタミン剤、漢方薬などがあります。
塩酸トラゾドンは抗うつ剤として開発されたもので、副作用として勃起を誘発することから、
インポテンスの治療に応用されるようになってきています。
 ビタミン剤では、神経の働きを円滑にするビタミンB12や血液循環を改善する作用のある
ビタミンE、精神的ストレスを緩和するローヤルゼリーなどが用いられます。
 漢方薬はさまざまな種類が市販されています。なお、現時点で最も確実な薬物療法といわれるのが
バイアグラ(一般名:クエン酸シルデナフィル)の服用です。バイアグラには、勃起の持続を阻害する
体内酵素の作用を抑制する働きがあります。その結果として、勃起を促進させるのです。
しかし、バイアグラ服用後の死亡例も多く報告されていますが、半分以上が、心臓への悪影響に
よるものです。また、生命にかかわるのもではあいませんが、頭痛、顔面のほてり、色覚異常、
消化不良、めまい、下痢、鼻づまりといった副作用が報告されています。
こうした副作用は、特に高齢者や心臓病の患者に起こっています。
 服用後のからだの変調が多発している以上、興味本位な使用は避けるべきです。
プロスタグランジンE1を陰茎の海綿体に注射する注射療法もあります。ほかの方法に比べて
早く効果が現れることから、よく行われています。パートナーの了解を得た上で、注射によって
勃起させ、近くのホテルや自宅に急行して性交します。最近、増えている新婚インポテンスでは、
1〜3回の治療で約70%が治癒するとされています。
・器質性インポテンスの治療
 器質性インポテンスでは、原因疾患の適切な治療が前提となります。そのうえで、機能性インポテンスで
使用されているものと同様の薬が処方されたり、陰圧式勃起補助具が使用されるといった
治療方法がとられます。
 外傷などによる脳や脊髄、末梢神経系の障害が原因の神経性インポテンスでは、
障害発生後1〜2年は自然回復の可能性があります。プロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射や
陰圧式勃起補助具を用いながら経過が観察されます。
 器質性インポテンスで多くみられるのが、血管性インポテンスです。陰茎の血流がとどこおることに
よって起こります。
 軽度の場合は、プロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射が、性交の直前にその都度行われます。
重度の血管障害で動脈性インポテンスと診断された場合には、陰茎海綿体血行再建手術が選択される
こともあります。血行造影による確定診断の後、血管障害の部位などに応じて、手術方法が
検討されます。
 この手術では、下腹壁動脈と陰茎側の血管とを吻合するための皮膚の切開が必要ですが、
手術後瘢痕(はんこん)が残ることは比較的少ないとされています。手術後は、血管吻合部が
離れる恐れがあるので、最低6週間は性交やマスターベーション、激しいスポーツなどは控え、
陰部の打撲や圧迫を避けることが大切です。
 陰茎海綿体の内圧を調べる検査を行うと、静脈の閉鎖不全が原因で、勃起時に陰茎の静脈から
血液が漏れ出していることが明らかになります。
 こうしたケースは、陰茎の血液を流出しにくくするために、静脈をしばる手術が行われます。
こうした療法による効果がみられない場合には、陰茎プロステーシスというシリコン製の棒を
陰茎海綿体に挿入する手術が行われることになります。
 陰茎プロステーシスには、ノン・インフレータブル型とインフレータブル型があります。
ノン・インフレータブル型は、鋼線を束ねて棒状にし、シリコンゴムで覆ったものです。
手術では、陰茎の冠状溝や恥骨の上部などに切開を加えて、陰茎海綿体に挿入されます。
性交時以外はプロステーシスを寝かせた状態にしておき、性交時に手で立てて使用します。
 インフレータブル型は、伸び縮みが可能なシリコンシリンダーとポンプ、リザーバーという
袋から出来ています。シリコンシリンダーは陰茎海綿体に、ポンプは陰のう内に挿入されます。
性交時には、リザーバーの中の液体を、ポンプによってシリンダーに移動させることで陰茎を勃起させます。

パートナーの理解と協力が大切
 インポテンスの多くは心理的な要因が深く関わっています。たった一度の、勃起が不十分だったという
経験が不安を招き、次の勃起を不可能にしてしまうというケースもしばしばあります。そしてだんだんと
悪循環に陥ってしまうものです。本人の性的不安を解消し、治療の効果を高めるには、パートナーの
理解と協力が欠かせません。一緒に治療に取り組み、精神的ゆとりを保てるような環境を
整えることが求められます。
インポテンスの治療薬
 インポテンスの薬物療法では、次にあげる薬が単独で用いられたり、
併用されることがあります。
・アルプロスタジル(病院)
 プロスタグランジンE1というホルモン製剤です。血行を改善する効果があり、陰茎海綿体への
注射によって投与されます。持続勃起症、頭痛や発熱、血圧の低下、不整脈などが起こることがあります。
・塩酸トラゾドン(病院)
 抗うつ薬ですが、副作用として勃起が持続することから、インポテンスの治療に用いられるように
なりました。性交の1〜2時間前や夕食後に服用します。血圧の変動、低血圧、動悸、眠気、
錯乱などが現れるケースがあります。
・エナント酸テストステロン(病院)
 精巣でつくられる男性ホルモンの一つにテストステロンがありますが、血液中のテストステロンの
量が少ない人に対して、補充を目的に処方されます。男性不妊症の治療にも使われる薬です。
月に1回の注射によって投与されます。中高年の人には、長期にわたって投与される場合もあります。
副作用として、肝機能障害、陰茎の肥大や持続勃起症が起こったり、前立腺ガンが発症しやすくなる
ケースがあります。
・ビタミン剤(薬局)
 ビタミンB12やE、ローヤルゼリーがあります。
・漢方薬(薬局)
 八味地黄丸や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などがあります。
中年以降で体力が低下していたり、冷え、疲れやすい、倦怠感、頻尿や尿量の減少、
陰茎の萎縮などの症状に適応となります。
副作用として、発疹やかゆみ、便秘や下痢などが指摘されています。
血液循環を改善する
ビタミンE
精神的ストレスを緩和する
ローヤルゼリー

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