肺がん
早期であれば、高い確率で治るのが肺がんです。症状が出ないことが多いので、
年に1〜2回は検診を受けて早期発見に努めましょう。
| ヘルスチェック こんな症状に注意! ・咳が長期間続いていますか? ・血痰が出ませんか? ・ヘビースモーカーですか? ・胸に痛みはありませんか? ・肩や首が痛くないですか? ・関節が痛みますか? ・吐気やめまいはありますか? ・食欲がありませんか? ・頭痛や脱力感はないですか? |
| どんな病気ですか? 肺に発生する悪性腫瘍 肺は背骨と肋骨で囲まれた胸部の空間にある大きな臓器で、右側の肺には上・中・下葉の三つ、 左側の肺には上・下葉の二つの肺葉があります。肺とのどをつないでいるのが気管です。 気管は、気管分岐部で左右の主気管支に分かれて、それぞれの肺葉に入り、 さらに肺葉気管支、細気管支、呼吸細気管支など20回ほど分岐を繰り返し、最終的に 血液中の二酸化炭素と酸素を交換する肺胞に入ります。 肺がんは呼吸である肺と、それにつながる気管や気管支に発生する悪性腫瘍です。 通常、進行度によってT〜W期に分けられ、T〜V期はさらにAとBの2段階に分類されます。 日本でがんは1981年以来、死亡原因の1位です。そのなかでも特に肺がんによる 死亡者の増加は著しく、1996年の死亡者は約48,000人にもなって、40年前の約15倍にも 増えています。特に男性では、胃がんを抜いて死亡率はトップとなっています。年代別では 40代から増え始め、70代でピークを迎えます。 ・発生部位による分類 [中心(肺門)型肺がん] 気管から主気管支、さらにその先の区域気管支に発生するがんを中心型肺がんといいます。 この部分は肺の入り口に当たるため、肺門型肺がんともよばれます。 ここに発生するがんの多くは扁平上皮がんといわれるもので、男性や喫煙者に多くみられます。 [末梢(肺野)型肺がん] 肺の奥にある末梢部分に発生するがんです。この部分を肺野とよぶことから、肺野型がんとも いわれます。形態的には腺がんが多く、主に女性に多く発症します。 ・がん細胞の種類・形態による分類 [扁平上皮がん] 気管や気管支の内側表面を覆う上皮細胞である腺毛円柱上皮細胞が、がん化したものをいい、 肺がんの約35%を占めます。中枢の太い気管支に発生しやすく、進行はそれほど早くないの ですが、隣接する臓器に広がりやすいのが特徴です。 ほかの器官には転移しにくいので、早期に発見すれば完全に切除できます。 タバコが発生要因とされているため、以前には男性によく発生していましたが、女性の喫煙者が 増加し、女性の発症例も増えています。 [腺がん] 気管支腺の腺細胞や末梢の細気管支上皮細胞、肺胞細胞に生じるがんです。 肺がんの約45%と最も大きな割合を占めながら、発生の原因はよくわかっていません。 肺の末梢部分に発症する代表的なもので、進行速度は遅いものの、リンパ節などに転移しやすい 性質をもっています。女性に多く発症するといわれていましたが、最近は男女共に増加しています。 [小細胞がん] 発育が早く、小さいうちから転移しやすい悪性度の高いがんです。肺門部に発生しやすく、 さらに抗がん剤や放射線治療の効果がないなど、悪性度が極めて高いがんです。 肺がんの約10%を占めます。 肺門と末梢部の中間部分と、肺野の両方に発生しますが、肺野部への発生が特に多く みられます。 |
| 原因 タバコには発がん物質がたっぷり がんは、正常な細胞が何かのきっかけでがん細胞に変化し、それが異常増殖して起こる 病気です。最近の遺伝子の研究から、人間はがん化させるがん遺伝子と、それを抑制する がん抑制遺伝子をもっていることがわかってきました。 がん抑制遺伝子が欠損すると細胞のがん化が始まり、がん細胞の増殖に歯止めがきかなく なります。 肺がんもほかの多くのがんと同じように、さまざまな因子が関係して発症すると 考えられています。そのなかでも最も危険なのが呼吸に関する要因です。 まず私たちが日常吸っている空気には、自動車の排ガス、工場の煤煙などから排出される 大気汚染物質が含まれています。なかでもダイオキシンは最近話題になっている 発がん物質です。 汚れた空気を長期間吸いつづけることは、がん発症のリスクを高めることになります。 同様にアスベストなどの有害な粉塵がでる作業に従事することも、発症の危険を高めます。 しかし、何と言っても一番の危険因子はタバコです。タバコの煙の中には、20種類以上もの 発がん物質が含まれているといわれています。そのなかでも最も危険なのが、 タバコのタールに含まれているベンツピレンとよばれている物質です。これらの危険な物質を 日常的に体内に取り込んでいる喫煙者の肺がん発症率は、非喫煙者の4,5倍に上ると いわれています。 男性のがんによる死亡者数が女性の約3倍にもなっているのは、男性に喫煙者が多いためです。 肺がんのなかでも、肺門部にがんが発生する人のほとんどがヘビースモーカーといわれる 喫煙指数が400を超える人たちです。喫煙指数は、1日の平均的な喫煙本数と年数を 掛けることで算出します。 タバコとの密接な関連が明らかになっているのは、扁平上皮がんと小細胞がんです。 喫煙者は非喫煙者に比べ5〜10倍もがんになりやすいという報告もあるほどです。 また、食生活とのかかわりも指摘されています。動物性脂肪、加工食品、塩分の多い食品、 焦げた肉や魚などは、発がんを促す食品として知られています。 さらに、家族が肺がんにかかったことのある人に発がんの危険性は高いとされています。 |
| 症状 かぜに似た症状に注意 肺がんは早期発見すれば高い確率で治るがんであるにもかかわらず、治りにくいがんの 代表のようにいわれています。それは、肺がんのなかでも約半分を占める腺がんには、 ほとんど自覚症状がないため、早期発見が難しいからです。 一方、肺門部は非常に敏感なところで、ここにがんが発症すると、小さなものでも血痰や しつこい咳が出ます。かぜの症状と似ているため、肺がんとは思わず、発見が遅れるケースが 多くあるようです。肺がん予備軍ともいえるヘビースモーカーの人たちは、慢性気管支炎である ことが少なくありません。そのため、咳や痰といった症状に日ごろから慣れていることも、 発見を遅らせている原因の一つとなっています。 肺がんが進行すると、胸や背中の痛み、呼吸困難、発熱、しわがれ声などの症状が 出るようになります。それは、がんがある程度大きくなると、肺門部や肺を破って肋骨まで 広がって行くからです。肺がんのほかの症状としては、関節痛、吐気、めまい、頭痛、 脱力感などがあります。 末期の肺がん患者にみられる症状で、がんが脳などに転移していることが原因といわれています。 また、首や腕の血管が浮き出るようになることもあります。上大静脈閉塞症状といって、 静脈が気管周辺の腫瘍やリンパ節転移などで圧迫されるからです。 肺がんによってホルモンのバランスが崩れると、男性の胸が膨らんできたり、首の付け根の リンパ節が腫れ、指の先が太鼓のバチのように膨らむなどの症状が現れるケースもあります。 もし、かぜのような症状が1ヶ月以上も続くようなら、精密検査を受けましょう。 これらの症状が出てから検査を受けても中心型肺がんであれば早期に発見できますが、 末梢型肺がんではすでに進行して手術できる状態ではないことが大半です。 ですから症状がなくても1年に1〜2回定期的に検診を受けることが早期発見につながります。 |
| 検査 気管支鏡検査で確定診断 がんは肺のさまざまな部位に発生するため、通常いくつかの検査が行われます。 ・胸部X線検査 末梢型のがんの発見に効力を発揮するのがX線検査です。それは、末梢型のがんは肺の奥の ほうにできるので、X線によく写るからです。 これに対し中心型のがんは、肺門部に心臓があるため、動脈や静脈が交差していて、 がんが影として写りにくくなります。しかし、気管支の中で大きくなったがんは、太い気管支を ふさいで無気肺や肺炎を起すため、逆に写りにくくなることが、がん発生の情報として重要な サインになります。末梢型でもごく早期の直径数ミリの小さながんは、肋骨や心臓あるいは 血管の影になると、通常のX線では写りにくくなります。 ・痰細胞診 中心部にできたがんは、がん細胞がはがれ落ちて、痰の中に混じることがあります。 そのため、痰を採取して、顕微鏡で調べる検査が有効です。1日分だけでは発見しにくいので、 自宅で採痰容器に3日間採取して医療機関へ提出します。 早期の肺がん患者には痰の出ない人が40%ぐらいいるといわれます。しかも常に痰の中に がん細胞が含まれているとは限りません。そこで有効な痰を採るために、肺内に霧を入れる 方法がとられることがあります。この方法を使うと肺がんの発見率は85%と向上します。 より効果的にがんを発見するには、X線検査と痰細胞診の併用が望まれます。 ・気管支鏡(ファイバースコープ)検査 痰検査やX線検査で、がんの疑いが濃い場合、ガラス繊維の束でできた直径5mmほどの ファイバースコープや最近ではデジタルカメラを利用した電子内視鏡を使った精密検査が 行われます。検査ではのどに麻酔薬を噴霧し、次に反射を減らす為に筋肉注射をした後、 ファイバースコープを口から入れていきます。 医師はモニターテレビを見ながら、がんの発生場所を探したり、がんの大きさや浸潤の度合いなどを 確認します。同時に、ファイバースコープの先端に取り付けた器具で組織片や細胞を採取します。 末梢型のがんの場合は、スコープの先端からさらに細い管を病変部まで伸ばし、 組織を採る方法が行われます。 痰検査でみつかる肺がんは非常に小さいものが多いので、1回のファイバースコープ検査では 突きとめられないこともあります。また、痰の検査だけでは左右どちらの肺から出たものか わからないので、肺の上葉、中葉、下葉に分けて調べていきます。この場合ファイバースコープに よる検査は、数回行われるのが一般的です。ファイバースコープによって発見されるがんは 気管支の表面にある早期のものが多いので、手術をしないで治すことも可能になってきました。 診断装置はさらに進み、からだのもつ自家蛍光を利用した気管支鏡も開発されています。 ・CT検査 CT検査とは、断層撮影をコンピューターで解析することです。これまでのCTスキャンでは、 1回ごとに呼吸を止めても呼吸によるずれが断層画像に生じ、しかも時間がかかていました。 しかし、ヘリカルCTとよばれる機器が使われ始め、確実な診断が得られるようになりました。 ヘリカルCTでは、1回呼吸を止めてる間に数回の撮影ができ、短時間で多くの情報が得られ、 しかも連続したデータを使って立体的な画像を作成できます。ただし、この機器を導入している 医療機関はまだ少ないのが現状ですが、今後は普及するでしょう。 ・MRI検査 MRI(磁気共鳴撮影法)は、水や脂肪として体内に存在している水素の分布状態を コンピューターで映像化し、病変部を探すものです。肺がんの性状だけでなく、 特に脳への転移の検査に役立ちます。 |
| 治療 肺を切らない治療も登場 肺がんは転移しやすいことや、早期発見の困難さ、あるいは高齢者に多いといった理由から、 これまでは手術しても生存率は高くありませんでした。しかし、診断技術や治療法の進歩により、 治療成績はかなり向上しています。 肺がんの治療の基本は手術です。進行度やがんの性質、患者の年齢や体力の程度によって、 化学療法(抗がん剤)や放射線療法が選択されたり、いくつかの治療法が併用されることもあります。 ・手術療法 肺がんの手術は、がんに侵された部分を切除して、さらに肺門や気管近くのリンパ節をすべて 取り除いてしまうのが原則です。リンパ節を取り除くのは、がん組織がリンパ節の流れにのって 全身へ転移しやすいからです。 肺は人間の臓器のなかでも生命の維持に直接かかわるものです。そこで近年は手術後の 機能障害を避けるという考えから、可能な限り小さく切り取る機能温存手術の方向に進んでいます。 例えば肺の入り口にできる中心型のがんでは、以前は片側の肺を全部切り取ることもありました。 しかし、患者にかかる負担が大きいという欠点があるため、最近では病巣のある肺葉と 気管支だけを切除して、残りの健康な肺と気管支をつなげる気管支形成術を行うケースが 多くなっています。 ・内視鏡 早期がんの治療として、内視鏡を使った手術も行われています。この内視鏡を使った手術は、 大きく二つに分けられています。 一つは、気管支の表層にできた厚さ2〜3mmほどのがんに対して行われる気管支鏡による 治療で、さらに三つの方法に分類できます。 第1がフォト・ダイナミック・セラピー(PDT)と呼ばれる方法です。これはフォトフリン(ヘマトポル フィリン誘導体)という物質が光に対して敏感に反応する性質を応用したものです。 フォトフリンはがん細胞にとり込まれやすく、同時に外部からの光に反応して活性酸素を出し、 細胞を殺す作用があります。PDT治療では、まずフォトフリンを静脈注射します。 2〜3日たってこの物質ががん細胞に集まったころに、気管支鏡からエキシマレーザーを 照射します。するとフォトフリンはがん細胞の中で化学変化を起して、がん細胞を破壊します。 第2は、放射線腔内照射療法です。これは気管支鏡を使って、イリジウムやコバルトなどの 放射性物質を体内に送り、体内から直接がんに照射する方法です。からだの表面から 放射線を当てると、皮膚から患部までの健康な組織にも放射線障害が起こる可能性があるので、 この方法は障害を少なくするために有効です。 第3は、Nd−YAGレーザー照射法とよばれる高温レーザーで、がん組織を焼き切る治療法です。 この方法は、がんとその周囲の健康な組織との境目がはっきりしない早期がんでは、 あまり用いられません。 内視鏡を使ったもう一つの治療法は、末梢型で直径1cm以下のがんに対して行われる 胸腔鏡による治療です。肋骨と肋骨の間に1cmほどの穴を3〜4ヶ所あけて、そこから内視鏡や メスを入れて、モニターテレビで患部を観察しながらがん組織を切除するのです。 通常の肺がんの手術では、胸を大きく切り開きますが、この方法なら、手術後の痛みも少なく、 機能障害もほとんどありません。そのため、肺の機能が衰えている人や、高齢者に効果的な 治療法とされています。 以上は比較的早期がんに対して行われる療法ですが、がんが進行している場合は、 内視鏡を使って気管や気管支をふさいだがんを破壊して呼吸しやすくする療法もとられます。 この治療の目的は患者の生活を改善したり、維持したりすることです。再びがんが増殖して 気管をふさぐおそれのあるときは、気管の内腔を広げるステントという器具を気管内に挿入したり、 がん組織にエタノールを注入する療法をとる場合もあります。がん組織はエタノールに触れると 脱水症状を起して死滅します。 ・化学療法 抗がん剤は一般的には手術や放射線療法と併用されます。しかし、転移が早く手術による 治療効果があまり望めない小細胞がんには、積極的に用いられます。 現在、約70種類以上の抗がん剤が使われており、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質などに 分類されます。 これらのなかから、がん細胞の増殖サイクルや薬理作用を考慮しながら、数種の抗がん剤を 組み合わせて用いられます。 進行した肺がんの場合、前もって強力な化学療法を行い、がんを小さくしてから手術を行う こともよくあるそうです。 抗がん剤には副作用があることはよく知られています。投与し始めると吐気や嘔吐が起こり、 1週間くらいたつと白血球や赤血球、血小板の減少がみられます。口内炎や脱毛などの 症状が出ることもあります。最近では、副作用を抑える薬が開発されており、 以前に比べて症状は軽くなっています。 ・免疫療法 体内のがんに対する抵抗力を高める治療法を免疫療法といいます。最も多く用いられるのが、 OK432というがんの成長を抑制する物質です。免疫療法は、以前は手術や化学療法の 補助的な手段でしかありませんでした。しかし、最近はT期のがんの手術後に投与すると 再発率が下がるという効果が認められています。ただし進行がんでは、それほど高い効果は 期待できません。 ・温熱療法 がん細胞が熱に弱いという性質を利用した治療法です。大別すると、2種類があります。 一つはマイクロ波などの超音波で患部に直接加熱する局所温熱療法です。 もう一つは体外で加熱した血液を再びからだに戻す全身温熱療法です。 いずれにしても単独で用いられることはなく、化学療法や放射線療法と併用されるのが 一般的です。 |
| 予防 禁煙して緑黄色野菜をとる 肺がんの危険を未然に防ぐには、禁煙する、がんになりやすい食品をとらない、ストレスをためない などで発がん因子を遠ざけることです。積極的に集団健診や定期検診を受けるなどして、早期発見に 努めることもポイントです。 まず気をつけたいのが、食べ過ぎ・飲み過ぎは極力避け、十分な睡眠をとって疲れを翌日に もち越さないようにすることです。毎日散歩やジョギングをして血行をよくし代謝を促すことも 効果的です。 ストレスはあらゆる病気の原因にもなりますから、くよくよせずに明るく生きるように心がけましょう。 休日には仕事を忘れて気分転換を図ることが必要です。 食事にも気をつけましょう。バランスのとれた食生活が、健康なからだを保ちます。 特に緑黄色野菜を積極的にとることが、肺がんには有効です。緑黄色野菜には、 ベータカロチンやビタミンC・Eが多く含まれています。ベータカロチンには強い抗酸化作用があって、 細胞をがん化させる活性酸素を消去する働きがあるのです。 ビタミンAやCにも同様の働きがあり、葉酸には傷ついた遺伝子を修復する働きもあります。 何より効果的なのが禁煙です。ただし禁煙したからといって、発がんリスクが非喫煙者と まったく同じになるわけではなく、リスクが凍結されたと考えています。禁煙を守って10年以上を 経過すると、死亡リスクは非喫煙者レベルまで下がるという報告もありますから、 禁煙には大きな効果があることは間違いありません。 |
| 検診を積極的に受ける 肺がんには自覚症状が現れにくいため、早期に発見するのが難しいといわれています。 そのため、できるだけ定期検診を受けて、早期発見のチャンスをもつようにします。 自治体によっては、40歳以上の人を対象に年1回の肺がん検診をしています。 ただし、経費がかかるわりには、この検診は効率が悪いという批判の声も聞かれますが、 機会があれば地域や職場での集団健診には参加したいものです。 毎年の誕生日には検診を受けると決め、人間ドックに入るのもよいでしょう。 |