がん
すべてが不治や難治というわけではありません。
早期に発見すれば完治するケースが増えています。
| どんな病気ですか? がん細胞が増殖 日本人の4人に1人はがんで亡くなります。突然変異やからだの細胞の遺伝子がたびたび傷を受けると、 がん細胞ができます。がん細胞はからだの調和を無視し、勝手に増殖する性質を持っています。 遺伝子が突然変異を起こすのは、食品などに含まれる化学物質(発ガン物質)、ウイルス、放射線、 フリーラジカル(遊離基=強い酸化作用がある)などの影響のほかに、遺伝病、栄養状態、喫煙、 飲酒といった生活習慣にも直接、間接にがんの発生や増殖をうながすことがあります。 ただし、がんになりやすい人と、なりにくい人がいることから、がん細胞を監視して排除する免疫の力や、 化学物質の解毒作用、遺伝子の異常を修復する能力なども深く関係しているようです。 |
| ヘルスチェック こんな症状に注意! ・血痰がでますか? ・空腹のとき胃が痛みますか? ・急にやせてきましたか? ・便に血が混じりますか? ・乳房にしこりがありますか? ・不正出血がありますか? ・声がかれてきましたか? ・前よりも疲れやすいですか? |
| がんの性質 広がりと悪性度に注意 がんの治療でポイントになるのが、がんの広がりです。国際対がん連合では、がんの広がりに関して、 ”TNM分類”という分類法を定めていて、日本でも使われています。 Tは、はじめに発生した場所のがんの広がりを意味し、Nは、リンパ節の転移、Mは、遠隔臓器への 転移を意味しています。TNMにはそれぞれ右下に1〜4までの数字を付し、その程度を示すことに なっています。 例えば、T0はがんがないことを意味し、T1〜T4になるにしたがってがんが大きくなっているという ことです。胃がんでT2N2M0なら、がんの広がりは胃の一番外側にあるしょう膜にまで至り、 リンパ節転移も相当進んでいますが、遠隔転移はまだないということになります。 がん治療のいまひとつのポイントは、がんの悪性度の見極めです。がんは性質がおだやかなタイプと、 激しいタイプがあります。おだやかなタイプはがん細胞がたくさん集まって塊をつくりますが、 その塊からははみ出ません。これを拡大性の広がりといいます。 一方、性質の激しいタイプのがんは、個々のがん細胞が勝手きままに増えていき、リンパ管や 血管に入り込んで、あちこちに転移していきます。こうしたケースを浸潤性の広がりといいます。 小さながんであっても、活発に転移してしまうタイプは、悪性度が高いといういいかたをします。 この悪性度を考慮に入れて治療方針を立てないと、せっかく手術でがん細胞を取り除いても、 実はあちこちに転移していたということになりかねません。 |
| 診断 多様な方法を組み合わせる がんの診断には、いくつもの手法があります。がんの出来た臓器によって、それぞれの診断手法を 一定の順序で組み合わせて診断を下していきます。 ・画像診断 肺がん、胃がんなどのがんは、X線による診断が早期発見、一次検診の有力な手段に使われています。 肺の場合は、そのまま撮影する単純撮影が行われますが、胃の場合は硫酸バリウム製剤と 発泡顆粒を服用した後で撮影する二重造影法が用いられています。 胃、腸、気管支、食道、膀胱、膵管、胆管などは、内視鏡による診断が使われています。 内視鏡は人差し指ほどの太さのがらす繊維の束の先端にカメラを取り付けたもので、これを体内に 挿入することによって、からだの中をはっきりと観察することができます。 肝臓、膵臓、脾臓など、X線や内視鏡による診断が難しい臓器の検査には、超音波(エコー)診断が よく使われます。患者に苦痛がなく、X線被曝の危険もないのが利点です。 CT(コンピューター断層撮影)は、ほとんどのがんの診断に有効な優れた画像診断法です。 からだのまわり360度方向からX線を照射して、その透過度をキャッチし、コンピューターによる 計算をもとにして、からだの横から断面を描き出すものです。また、CTの技術をさらに発展させて生まれた MRI(磁気共鳴映画像法)は、磁場を利用して原子や分子の密度をとらえる装置で、からだの横の 断面はもちろん、縦の画像を得られます。 ・腫瘍マーカー がん細胞が増殖する過程で、がん細胞に特徴的な物質をつくりだします。この物質を腫瘍マーカーと よんでいます。腫瘍マーカーを見つけて、がんか否かを判別していくのが、この診断法です。 肝臓がん、膵がん、卵巣がん、乳がんなどは、腫瘍マーカーによる検査がよく行われます。 この検査は、手術後の再発を発見する手段としても有効です。 ・生検 がんではないかと疑われる細胞を取ってきて染色し、顕微鏡で見るのが生検とよばれる検査方法です。 がんであるかどうか、最終確認に使われることの多い診断法です。 顕微鏡で細胞を見ると、がんの場合、組織学的なタイプの違いがわかります。 胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵がんといったがんは、ふつう”腺がん”とよばれるタイプです。 各臓器には、分泌機能にかかわる”腺”とよばれる部分がありますが、この部分の上皮細胞ががん化する ため、こうよばれています。 次に多いのが”扁平上皮がん”です。咽頭・喉頭がん、食道がん、皮膚がん、子宮頚がんなどは このタイプです。このほか肉腫よばれるものもあります。腺がんと扁平上皮がんは、いずれも 上皮細胞からがんが発生するものですが、肉腫はそれ以外の場所から発生するものをいいます。 また、顕微鏡による診断では、分化度が高い・低いといった言い方をよくいいます。 がん細胞が正常細胞の組織に近いものを分化度が高い(高分化の)がんといいます。 高分化のがんは、一般に悪性度は低いといえます。逆に正常細胞とは構造がかなり違っているがんの ことを分化度の低い(未分化の)がんといいます。未分化のがんは、浸潤、転移を起こしやすく、 悪性度の高いがんです。 |
| 治療 さまざまな方法を使い分ける がんの治療は、がん細胞が発生してる臓器、広がり、悪性度、治療後の経過予想などの診断に加え、 患者の年齢や体力、合併症の有無、治療法への希望などを考慮して決定されます。 したがって、同じ臓器のがんであっても、治療法の異なることはよくあります。 ・手術療法 がんの治療で手術といえば、がん細胞が発生していると考えられる部分を切り取る外科手術を 意味します。従来はがん細胞が発見された場所だけでなく、周辺組織に浸潤している可能性を考え、 正常組織の部分も切り取る”拡大手術”が一般的でした。 しかし、手術後の生活の質を考え、最近では放射線療法や化学療法を組み合わせた治療を行うことを 前提に、周辺までは切り取らない”縮小手術”も行われています。もちろん転移の有無を確認したうえで、 縮小手術に適応するかどうかが判断されます。 また、内視鏡や腹腔鏡を利用した手術も普及してきました。がんが早期に発見された場合や、 外科手術を行うには体力に不安のある高齢者などには、内視鏡や腹腔鏡を用いた手術が有効です。 ・放射線療法 X線や電子線などをがん細胞に向かって照射し、がん細胞を焼き殺してしまうのが放射線療法です。 放射線療法だけで治療する場合と、外科手術や化学療法と組み合わせて行う場合があります。 悪性リンパ腫、精巣腫瘍、口腔がん、喉頭がん、子宮頚がん、皮膚がんなどに有効です。 乳がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がん、食道がんなどでも、リンパ節転移がないといった条件によっては、 放射線療法が有効です。 放射線療法は治療している時に患者の肉体的負担がほとんどなく、臓器も温存できるので、 有力な治療法です。ただし、放射線を大量に照射したり、正常細胞に照射したりすると、白血球が減少する、 組織障害が起こるなどの重大な副作用が現れます。 そこで、がん細胞にだけ集中的に放射線を照射することをめざしてガンマ線を360度から照射する ガンマナイフ装置が開発されています。すでに一部の病院で実用化されています。また、同様な視点から、 正常細胞に与えるダメージが少ない陽子線、重粒子線などによる治療も試みられています。 ・化学療法 抗がん剤とよばれる薬で、がん細胞をやっつけるのが化学療法です。白血病、精巣腫瘍、 悪性リンパ腫などの治療に効果的で、よく使われています。卵巣がん、膀胱がん、喉頭がん、 子宮頚がん、乳がんなどでも化学療法が比較的有効とされています。 ただし、抗がん剤を使用すると、激しい副作用だけでなく、骨髄の細胞を傷害し、白血球などが減少する 骨髄抑制が起こります。白血球が減少すると感染症を起こしやすくなり、生命の危険が出てくるので、 これを回避するため、自家骨髄移植や末梢血管細胞移植、白血球の回復をうながすG-CSFという 薬を使うなどの工夫がされています。 抗がん剤の種類によっては、悪心、嘔吐、食欲不振、口内炎、脱毛といった副作用が起こります。 人によっては、これらの副作用が強く現れるため、最近では治療後の患者の生活の質を考える観点から、 化学療法が適したがんか否か、患者の体力はどうかなどについて、より慎重に考えるべきだという 指摘も出ています。 ・温熱療法 がん細胞は熱に弱く、体温よりも数度高い温度で死滅したり縮小したりすることがわかっています。 放射線療法と局所を加温する療法を組み合わせたり、化学療法と全身を加温する療法を併用したりして、 治療効果を高めています。 ・免疫療法 薬によってからだの免疫力を高めて、がん細胞に対抗しようとするのが、免疫療法です。 免疫療法だけで劇的にがんが治るわけではありませんが、科学療法と併用することによって、 病気の進行を抑えることができる場合があります。社会的に話題となった丸山ワクチンは、 免疫療法の一種です。 ・サイトカイン療法(生物療法) 免疫療法の考え方を一歩進めて、生体の反応を総合的に考えて、治療していこうとするのが 生物療法です。細胞から分泌される生理活性物質(液性物質)のことをサイトカインといいますが、 主にこれを使って治療するので、サイトカイン療法ともよばれています。 インターフェロンなどが実用化されています。 |
| 種類 肺がん、胃がんが多い がんを種類別に、特徴と症状、治療法などについてみてみましょう。 ・肺がん 肺がんで亡くなる人が、男性では胃がんを抜いてトップになりました。死亡者数はこのところ年々増えて おり、今最も注意しなければならないがんです。 肺がんには大きく分けて2種類あります。太い気管支を中心にできる肺門部のがんと、細い気管支から 肺胞までの部分にできる肺野部のがんです。前者は扁平上皮がんで、喫煙と関係が深いことがわかって います。後者は腺がんで、喫煙とは関係ありません。 手術療法が中心ですが、ケースによっては放射線療法、化学療法が行われることもあります。 内視鏡を使ってレーザー光線をがん細胞に当て、焼く殺すレーザー療法もあります。 ・胃がん 最近死亡率は減る傾向にありますが、それでも男性では死亡者数が肺がんに次いで2位を占めています。 また女性では、胃がんは今も死亡者の一番多いがんになっています。 胃がんはまず内側の粘膜にでき、しだいに外側の層へと浸潤していきます。がんが粘膜下層に とどまっている状態なら、手術によってほぼ確実に治すことができます。症状は胃炎や胃潰瘍と同じで、 胃がん特有のものはありません。X線二重造影法や内視鏡検査で、沿い既発見することが大切です。 ・肝臓がん 男性では肺がん、胃がんに続いて3番目に多いのが肝臓がんです。肝臓がんの患者の4分の3は、 C型慢性肝炎から肝硬変へと進行した人から発生しています。 手術療法が難しい場合は、血管につめものをして血行を遮断し、抗がん剤の濃度を高めたり、 がん細胞への栄養補給を止めたりする塞栓療法や、がん細胞にアルコールを注入して殺す アルコール注入療法などが行われています。マイクロ波でがん細胞を凝固させる、 マイクロ波凝固療法なども新しく開発されています。 ・大腸がん 大腸がんはこの10年で約2倍に増えました。食生活の欧米化が原因と考えられています。 食物繊維の多い食べ物を食べ、排便をきちんとしていると予防につながります。 便に血が混じったり、腹の中にしこりを感じたり、下痢と便秘を繰り返したりといった症状が出た時は、 大腸X線検査か内視鏡検査を受けて、大腸がんかどうかを調べるとよいでしょう。最近は便の 潜血検査だけでも、かなりのがん患者が見つかっています。治療の基本は手術で、 早期ならほぼ確実に治ります。 ・乳がん 40歳以上の太った未婚女性に多いとされています。生理とは無関係に、乳房にしこりができるので、 注意深くさわってみれば、自分でも発見できます。乳房専門のX線マンモグラフィ、超音波などで、 診断することもできます。 また、女性ホルモンががんの増殖をうながすため、抗エストロゲン(エストロゲンは女性ホルモンの一種) をつかうホルモン療法もあります。ホルモン療法は手術後の再発の予防や治療に有効です。 ・子宮ガン・卵巣がん 子宮がんには、子宮頚がんと子宮体がんがあります。子宮頚がんは、膣に近い部分に出来る 扁平上皮がんで、日本人に比較的多いタイプです。細胞をこすり取って調べる細胞診や、膣拡大鏡で 診断できます。子宮体がんは、子宮の奥の内膜にできる膜がんで、子宮内膜細胞診か 子宮内膜掻爬組織診で発見できます。どちらのタイプも不正出血、帯下などが初期症状です。 子宮頚がんは手術が基本ですが、ごく初期のがんで子宮を残したいときには、レーザー治療を 行うことがあります。がんが進行した場合や高齢者では、放射線療法を行います。子宮体がんは、 子宮と一緒に卵巣も取る手術が一般的です。 卵巣がんは、あなかだ張ったり、腫瘍の腫れに気づくことがありますが、一般に発見が遅れがちです。 腹部超音波検査、シンチグラフィーなどで診断できます。 子宮と両側の卵管、卵巣などをすべて取り去る手術を行うのがふつうです。 |
| 早期発見が大切 がんは今や必ずしも不治の病ではありません。早期に発見し、適切な治療を受ければ、ほぼ100%に 近い確率で完全治癒の見込めるものもあります。定期的に検診をうけることと、初期症状があったら、 医師の診断を受けることが大切です。 |