男性の性感染症
性行為により細菌やウイルスに感染して発症する病気が性感染症です。
性意識の変化などで、性感染症は多様化してきています。
| どんな病気ですか? 性行為によって感染する疾患群 性病は、梅毒、淋病、軟性下疳(なんせいげかん)、 第四性病とよばれていた鼠経リンパ肉芽腫の四つが代表的な感染症で、 2000年より(2月に交付)、伝染予防法と性病予防法、エイズ予防法の3つは廃止・統合され、 「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」 (通称:感染症新法)と改められており、4つしかないわけでも、届け出の義務もありません。 しかし、性行為による感染症は時代の変化とともに多様化し、病原体も多彩になりました。 そこで、性病という狭義の概念を改め、この四つの性病を含む性的接触によって感染するすべてを、 性感染症という広い考え方でとらえようという動きが出てきました。1975年のWHO(世界保健機構)総会で 性感染症という言葉が用いられ、国際的な定義となりました。 性感染症の病原体は、細菌、スピロヘータ、マイコプラズマ、クラミジア、ウイルス、真菌(カビ)、 原虫、節足動物などさまざまなものがあり、性感染症として扱われる病気も、20種類にのぼります。 B型、C型肝炎やエイズも、性感染症の側面をもっています。 性感染症は、感染している人と性交渉をもつことによってうつるものです。性器だけに感染するわけでは なく、オーラルセックスやアナルセックスなどによって、口腔、咽喉、乳房、肛門、直腸なども 感染器官となります。口腔から性器への逆感染もあり、当然のことながら、男女間の性的接触だけでなく、 同性愛者の性的接触でも感染します。 海外渡航者の増加に伴って、海外で感染して帰国するケースも増えています。感染に気づかず、 知らないうちに感染源になっているケースも少なくありません。 性行為は人間の本能であり、生活面の一部を占めているものです。性感染症にかかる可能性は、 誰にでもあるといえるでしょう。 |
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主な性感染症の分類
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| 種類と症状 男性に多い性感染症は淋病とクラミジア 性感染症には、上の表のような実にさまざまな病気があります。そのなかで、ほとんどが性的接触に よってうつり、特に男性に多い性感染症には次のようなものがあります。 [淋病] 淋菌が感染して起こる病気で、性感染症のなかでも多くみられます。 男性生殖器の亀頭部と、女性生殖器の粘膜とが接触して感染するケースがほとんどです。 淋菌性尿道炎は、男性の場合、淋菌が侵入してから2〜5日ほどたって排尿時に激しい痛みや 灼熱感を覚え、尿道から黄色い膿が出るようになります。この段階で気づいて、すぐに治療を行えば 完治しますが、いったん症状が弱まるケースが多く、自然に治ったのかと思い、ほうっておくことが よくあるようです。 治療が遅れると慢性化し、淋菌は尿道の奥へと進んでしまいます。前立腺や精のう腺を侵し、 前立腺炎や副睾丸炎を併発することもあります。また、尿道にしこりを残し、数年後から数十年後に 尿道が狭くなって尿の出が悪くなったりするケースもあります。 淋菌は、尿道にばかり感染するわけではありません。オーラルセックスで口腔の粘膜に感染すると、 淋菌性口内炎を起すことがあり、また、のどに感染して咽頭炎を発症することもあります。 淋菌が付着した手指やタオルなどから目に感染すると、淋菌性結膜炎を起すこともあります。 アナルセックスで、直腸炎を招くケースもあります。 淋菌以外の細菌やウイルス、原虫などが性的接触によって尿道に感染し、尿道炎を起すことがあります。 やはり排尿時の痛みや膿などがみられますが、淋菌性のものに比べて症状は軽度です。 [クラミジア感染症] 淋菌による性感染症に次いで多いのがクラミジア感染症です。クラミジア・トラコマチスという 病原体の感染によって引き起こされる病気の総称で、男性の非淋菌性尿道炎の40〜50%から クラミジアが検出されるといわれています。 クラミジア感染症は淋病と同程度に、あるいはそれ以上にひろがっていると考えられていますが、 症状が軽いので気づかずにほうっておかれるケースが多く、潜在的な患者数は明らかではありません。 男性の場合、尿道に不快感を覚えたり、透明な分泌物が出てくることが多いようです。 淋菌性尿道炎と同様、前立腺や副睾丸炎を招くことがあります。精路がふさがってしまい、 不妊症になるケースもみられるため、症状が軽いからといって、ほうっておくことは禁物です。 [性器ヘルペス] 単純ヘルペスウイルス(HSV)による性感染症の一つです。HSVはT型とU型の二つに分けられます。 T型は口唇ヘルペスの原因となり、U型は性器に感染することが多いという特徴をもっています。 性的接触によってU型ウイルスに感染すると、2日から1週間ほどで発症します。男性は、陰茎の 包皮内板に症状が現れることが多く、直径1〜2mmの水疱、あるいは潰瘍ができて、 かゆみや痛みを伴います。この病気の大きな特徴は、自然に症状が治ってしまうことです。 感染は水疱ができる2〜3週間の間に性的接触をもつことで起こります。水疱はやがて消失しますが、 ウイルスは体内のどこかに潜伏していて、からだの免疫力が低下したときに、再び同じ部位に発症する ことが多いものです。症状が消えても、きちんと治療を受けておく必要があります。 [尖圭コンジローム] ヒト乳頭腫ウイルス(HIPV)が感染して起こる性感染症です。感染してから2〜3ヶ月後に発症し、 陰茎の包皮や亀頭冠状溝などに小豆大の腫瘍ができます。腫瘍は肛門の周囲などに現れますが、 オーラルセックスによって口に感染するケースもあります。 痛みやかゆみはほとんどありませんが、ほうっておくと腫瘍がどんどん大きくなっていきます。腫瘍は 肉眼でも確認できるので、異常に気づいたら、なるべく早く治療を開始します。 巨大尖圭コンジロームになると、痛みを伴うようになり、性交時に出血することもあります。 陰茎がんとHPV感染の因果関係も指摘されています。 [軟性下疳] ヘモフィルス・ジュクレーという細菌の感染によって起こる病気です。日本国内での感染はほとんど みられなくなりました。ほとんどが海外で感染して持ち帰ったものと思われます。軟性下疳は 東南アジアでよくみられる病気です。 性器に菌が侵入すると、1〜5日間くらいで感染した部分に潰瘍ができます。潰瘍が膨れて膿が 出てくるようになり、歩けなくなるほどの激しい痛みを引き起こすケースもあります。 通常、2〜3週間ほどで症状は治まりますが、梅毒との混合感染の可能性もあり、十分な注意が 必要です。 [その他の性感染症] 梅毒は、トレポネーマ・パリドゥムというスピロヘータの感染によって起こる病気です。治療を怠って 放置していると、やがて全身性の病気に移行し、さまざまな重い症状を引き起こすことになります。 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)との混合感染もあります。 感染後の経過は症状を進行度から4期にわけられていますが、たいていは1期か2期の段階で 治療が施されるので、日本では、3期以上の患者はごくまれになっています。 また、鼠経リンパ肉芽腫は、日本ではほとんどみられなくなりました。 ウイルスによる感染症で、性感染症の側面をもっているものとしては、B型肝炎、C型肝炎、 成人T細胞白血病、エイズ(後天性免疫不全症候群)などがあげられます。 肝炎ウイルスはいくつかの型にわけられますが、そのなかでB型肝炎ウイルスは性交渉によっても 感染します。ワクチンの投与や、抗体検査の徹底などによって母子間の垂直感染、輸血血液による 感染は激減しました。B型肝炎の現在の大きな感染ルートはセックスということにないます。 B型肝炎ウイルスの感染者は無症候キャリアが多く、自分では知らずに、性交渉によって水平感染 させる可能性があります。現在では、70%以上がセックスによる感染といわれ、別名ハネムーン肝炎 ともよばれています。 C型肝炎ウイルスも性交渉によって感染する可能性がありますが、はっきりしたことはまだ つかめていません。 成人T細胞白血病は、HTLV−1というウイルスの感染によって起こる病気です。 |
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性感染症発症のメカニズム
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| 検査と診断 泌尿器科で症状を詳しくチェック これまで述べた性感染症は、どれも泌尿器に主な症状が現れるので、患者はたいてい泌尿器科を 訪れるものです。泌尿器科ではまず、排尿時の痛みや熱感、膿の排出などについての詳しい問診が 行われ、尿検査をはじめとする、さまざまな検査が行われます。 性器診察結果と、尿検査の結果を総合して、病原体、感染部位、病状が確認され、治療方針が 決められます。 皮膚に主症状が現れるケースもみられますが、性感染症の多くは真菌や原虫、節足動物によるものです。 特に真菌による陰股部白癬、俗にいんきんたむしは、激しいかゆみを伴います。 ウイルスによる性感染症では、泌尿器科系や皮膚科系の症状が最初に現れることはなく、 血液を調べることによって感染の有無が判明します。 |
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| 治療 抗生物質の投与が基本 細菌による性感染症の治療の基本となるのは薬物療法です。特に抗生物質の内服や注射が 大きな効果を上げています。主な疾患の治療法には、次のようなものがあります。 [淋菌性尿道炎] 抗生物質の投与が第一に行われます。ペニシリン系の薬剤が有効で、薬剤の選択がうまくいった場合は、 だいたい3日以内に完治するとされています。 細菌は抗生物質に対して徐々に耐性をもっていくことが知られています。例えば、トロビシンという 抗生物質に対して、アメリカの淋菌の75%は耐性をもっているといわれています。 日本では、まだそれほど耐性化した細菌はいないといわれていますが、医師はどの抗生物質に対して 耐性をもつ細菌かを判断し、投与する抗生物質を選択しなくてはいけません。 また、きちんと淋菌を死滅させることができたかどうかも検査します。 [非淋菌性尿道炎] クラミジア感染症なら、テトラサイクリン系とマクロライド系の抗生物質が投与されます。 淋菌性尿道炎よりも症状は軽いのですが、治療期間は1〜2週間ほどかかります。 治療期間が長いのは、クラミジアが細胞の中にもぐり込んで増殖していく性質をもっているからです。 非淋菌性尿道炎の場合、病原体は多種にわたります。それだけに、病原体を突き止めることが 非常に重要になってきます。病原体によって、適応する薬が選択されます。 [性器ヘルペス] アクシロビルという薬剤の服用が効果を上げています。性器ヘルペスは潜伏期間が長く、また再発の多い、 しつこい病気なので、根気よく治療を続ける必要があります。 [尖圭コンジローム] この病気の治療は、皮膚科で行われます。抗生物質軟膏による保存療法が主となりますが、 電気焼灼やレーザー治療によって腫瘍を消滅させることもあります。 腫瘍が大きくなっているときは、手術で切除するケースもあります。 [その他の性感染症の治療] 梅毒は、ペニシリン系の抗生物質によって完治が可能になっています。 ウイルス性の性感染症については、専門科目で適切な治療が行われます。ウイルス性の肝炎を併発して 慢性化すると非常にやっかいです。特にC型肝炎については今のところ特効薬はなく、肝硬変、 肝がんへと進行していくケースもみられます。 真菌や節足動物による陰部の疾患は、皮膚科での治療となります。陰股部白癬は、抗真菌薬の外用で、 2〜4週間程度で治ります。患部を乾燥させて、常に清潔に保つようにしてください。疥癬や毛ジラミは、 外用薬の塗布で治ります。 |
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| コンドームの安全性 性感染症の予防のために、コンドームは最も手軽で確実なものといえます。もともとは避妊のための 方法でしたが、現在では、感染予防という副効用のほうが重視されているようです。 しかし、過信は禁物で、正しく使うことが大切です。 射精のときだけつけるのでは意味がありません。挿入の前に必ずつけるようにしないといけません。 また、外すときに体液が性器に付着しないように、慎重に扱う必要があります。 オーラルセックス、アナルセックスとなると、コンドームも万全ではありません。やはり、よく知らない 相手とのセックスは、危険が伴うということです。 |
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| 予防 不特定多数の相手との性的接触を避ける 性感染症は性的接触によって感染するわけですから、性的接触を避ければ感染リスクはゼロに なります。しかし、それは不可能に近い話です。 性感染症の予防は、性的接触をするという前提で考えなければなりません。まず第一にあげられることは セックスパートナーをよく知ることです。言い換えれば、よく知らない人とのセックスや、 不特定多数を相手にしたセックスは、性感染症にかかる可能性を高めているといえます。 また、妊娠を望むカップルを除き、コンドームを用いないセックスはきわめて危険であることを 知っておくべきです。コンドームは絶対ではありませんが、かなりの確率で感染を予防できます。 もし自分が性感染症にかかって、それが完治したとしても、性交渉の相手が病気をもっていれば 再び感染します。その意味からも、相手をよく理解することが大切です。性感染症の多くは免疫が できないため、何度でも同じ病気にかかる可能性があるのです。 自分が感染していると知っていながらセックスをしたり、口や肛門に病変があるにもかかわらず セックスに及ぶことは、非常に危険です。症状は、性器にだけ現れるわけではありません。 皮膚や肛門、口唇、咽喉などに異常のあるときは、セックスをしないようにしましょう。 セックスの前に性器などをよく洗って清潔にしておくことも、ある程度の予防になります。 買春は性感染症にかかる可能性がきわめて高い危険な行為です。性感染症を別にしても 自重すべきでしょう。 自らが感染源とならないためには、まず何よりも医師の診察を受けて、すみやかに適切な治療を 開始することが大切です。性感染症の実態がはっきりしないのは、病気を軽く考えたり、 恥ずかしさが先にたって、医療機関にかからない人が多くいるためと考えられています。 細菌性の性感染症は、比較的早い時期に症状が現れるものですが、、梅毒やエイズのように 潜伏期間が長いものは、早いうちには感染に気づきません。血液検査を行っても、抗体が検出されるのは、 梅毒で感染後6週間以上、エイズでは8週間以上たってからです。潜伏期間には陽性反応が出ません。 その間にも、知らずに人に感染させるおそれがあるのです。心配な人は、1年に1度は定期的に 血液を調べておく必要があるでしょう。 |
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| 日常生活の注意点 完治するまでセックスは控える 性感染症にかかった場合、とにかく完治するまでセックスは控えるべきです。医師の指示に従って、 許可があるまでは絶対にしないことです。飲酒も控えるようにしてください。 入浴は、発熱がなければかまいませんが、タオルや下着は使用後に熱湯消毒をしたいものです。 |
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| エイズという病気 一般にエイズとよばれる後天性免疫不全症状群(AlDS:Acquired lmmuno Deficiency Syndrome) は、その名のとおり、からだに備わった免疫力が低下し、さまざまな日和見感染を起す病気です。 原因はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染で、このウイルスが標的とするのは、免疫システムの 鍵を握るTリンパ球です。この細胞が、次々に破壊されていくのです。 感染しても、すぐに発症するわけではありません。平均8年から十数年という長い潜伏期間があり、 この時期を無症候キャリアといいます。しばらくは症状がなくても、やがて持続性の発熱や下痢、 体重減少、帯状疱疹といったエイズ関連症候群(ARC)が現れてきます。 さらに時を経て、カリニ肺炎やカポジ肉腫などに代表される日和見感染が現れます。この段階で エイズ発症とされるのです。 日和見感染というのは、免疫力が正常であれば感染しないような、病原性の非常に弱い微生物にも 感染してしまうケースを指しています。 HIVは、感染者と日常生活をともにしても通常の接触で感染するものではありません。 主な感染ルートは、性交渉と血液の接触です。血液を介する感染では、治療薬である 血液凝固因子製剤によって血友病患者に多くの被害者がでました。現在、輸血や血液製剤での 感染は考えられません。同じ注射器を使っての麻薬の打ち回しなどが大きな原因となります。 HIV感染症の治療法は、数ヶ月で変化するともいわれています。治療法がいまだにないことを 示しているともいえますが、プロテアーゼ阻害薬が導入されたことで劇的な変化をみました。 感染早期から抗ウイルス薬を十分に投与することで、ウイルスの量を減らし続けることが可能に なりました。 逆転写酵素阻害薬を2剤とプロテアーゼ薬1剤を毎日服用する治療を行うと、ウイルスが確認できなくなる ところまで効果を上げています。 ただし、副作用も十分に注意しなければないません。また、日和見感染症を合併するように なったら、その治療も並行して行わなければなりません。 エイズを不治の病ではなく、慢性病としてとらえる見解もあります。非感染者も正しい知識をもち、 偏見・差別を排除する努力が求められています。 |
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| まとめ 性のモラルを高めることが大切 抗生物質の普及などで減少し続けてきた性感染症は、1981年以降急増し、にわかにクローズアップ されてきました。 その大きな要因は、一言でいうなら性意識の変化です。初めて性交渉をもつ年齢が若年化し、 婚前・婚外交渉も多くなり、性のモラルが大きく崩れてきたことがあげられます。 海外で感染して、国内で発症するケースもしばしばあります。性感染症は、輸入感染症の側面も もっています。来日する外国人が持ち込む可能性も低くはありません。 性感染症の扱いは、人間の欲望にかかわることだけに、デリケートなものです。 一人一人がきちんとした性意識をもって行動する以外、性感染症を減らすことはなかなか困難でしょう。 確かに抗生物質は効果的ですが、抗生物質の乱用によって、細菌はどんどん耐性を持ち始めています。 薬剤と細菌のいたちごっこがおこなわれているようなものです。 性感染症は、自分が感染源になって病気を広げていく可能性を常に秘めています。 おかしいと思ったら、恥ずかしがらずに、とにかく病院で検査を受けるよにしましょう。 |