大腸がん
食生活に気をつければ予防することも可能です。早期に発見すれば
内視鏡的治療で完治します。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・血便が出ますか?
・下痢や便秘が続きますか?
・残便感がありますか?
・排便時におなかが痛みますか?
・おなかが張りますか?
・便が細くなっていますか?
・おなかにしこりがありますか?
・おなかが重苦しいですか?
・微熱が続きますか?
・貧血ですか?
どんな病気ですか?
10年で2倍に急増
 大腸は食べ物が通る消化管のひとつです。胃や小腸で消化・吸収された食べ物のカスが大腸に
送り込まれると、大腸は収縮したり弛緩したりして、これを肛門へと運び、この過程で水分を
吸収します。大腸の中にできるがんが大腸がんで、その患者はこの10年で2倍になっています。
しかもこれからは、日本人のがんではずっとトップだった胃がんを追い抜くという予測もあります。
 成人の大腸の長さは約1,5mあり、場所によって個別の呼び名があります。
右下腹部の盲腸に始まり、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸と続き、
肛門につながります。
 大腸がんは発生場所によって、大きく結腸がんと直腸がんに分けられます。日本人の場合、
以前は直腸がんが多かったのですが、最近は結腸がんが増えてきました。なかでも、
S状結腸がんが急速に増える傾向にあります。
 大腸がんの発生は60代が最も多く、次に多いのが50代です。50〜60代で全体の半数以上を
占めています。以前は男性患者のほうが多かったのですが、最近は女性患者も増えています。
原因
動物性脂肪が大きく関与
・食事との関係
 日本人はもともと欧米人に比べ、大腸がんいなる人が少なかったのですが、近年は患者数が
急増しています。その原因は、動物性脂肪を多くとる一方、食物繊維を多く含む食べ物を
あまり口にしなくなったという食生活の欧米化にあると考えられています。
 日本在住の日本人、ハワイ在住の日系人、米国在住の日系人について、大腸がんになった
人の数を比べると、米国在住の日系人が一番多く、次にハワイ在住の日系人が多いことが
わかりました。これは遺伝的な要因よりも、生活環境による要因が大きいことを示唆しています。
 脂肪の多い食品を食べると、それを分解するために、胆汁がたくさん分泌されます。
胆汁に含まれている胆汁酸は、腸内細菌によって二次胆汁酸に変化しますが、これが発がんを
促進すると考えられています。
 これに対し食物繊維は、腸内では消化吸収されず、便として排出されます。
食物繊維を豊富にとると、腸内で便の停留時間が短くなり、したがって発がん物質が腸の
粘膜に接触する時間も短くなるので、大腸がんになるリスクが少なくなるのです。
・遺伝との関係
 大腸がんは遺伝との関係もとりざたされています。祖父母、両親、兄弟姉妹、子どもに
大腸がんの患者がいる場合は、いない人よりも大腸がんにかかる率が高くなっているからです。
大腸がん患者の5〜7%には、同一家系内に大腸がんの患者がいます。
 大腸がんのなかでも”家族性大腸腺腫症”とよばれる病気がもとになって発病するものは、
遺伝が原因です。大腸に少なくとも100個以上の腺腫(ポリープ)が発生する病気で、
幼児期に腺腫ができはじめ、思春期を過ぎる頃から大腸がんを合併します。
放置すると大腸がんのために死亡することになるので、大腸がんが発生する前に、大腸を
すべて取り去る手術をしなければなりません。
 その他、大腸がんになりやすいケースは、潰瘍性大腸炎にかかったことのある人、
子宮がんに対して下腹部に放射線照射治療を受けたことのある人などです。
症状
便に血が混じる
 大腸がんは何年もかけてゆっくりと進行する特徴があります。初期のころはまったく症状が
みられず、なかなか気づきません。症状が現れたときは、ある程度進行しているケースが
ほとんどです。また、人によってはかなり進行しても、症状がまったく出ないこともあります。
 一番はっきりした症状は出血です。大腸の粘膜にできたがんの病巣と便がすれるため、
便に血が混じります。がんが盲腸や上行結腸など小腸に近い部分にある場合は黒っぽい便となり、
S状結腸や直腸など肛門に近い部分にある場合は、鮮血色のついた便が出ます。
 まぎらわしいのは痔による出血です。痔による出血の場合は、便が出た後に、便とは別に
ポタポタと血が落ちたり、拭いた紙に血がつきます。大腸がんの場合は便そのものに血が
混ざっているので、よく観察すれば違いはあります。ただし、ふつうの人がそこまで見分けるのは
難しいので、心配な場合はきちんと専門医の診療を受けてください。
 大腸がんでは出血以外にも、便に関する異常がみられることがあります。便が定期的に
出なかったり、排便時に絞るような鈍痛があったりする場合は、下行結腸、S状結腸、直腸に
がんがある可能性があります。また、直腸にがんがあると、排便の後に残便感が出る場合が
あります。下痢が続いたり、便の形が細くなったりすることもあり、まれにコロコロした便が
出ることもあります。
このほか、微熱が続く、貧血になる、突然痩せてくる、胸やけがする、腹部にしこりがある、
腹部膨満感、皮膚の一部が黒ずんでザラつく、といった症状が出ることもあります。
特に、高齢者で原因がわからない貧血があったときは、大腸がんを含む消化器系のがんを
疑わなければなりません。
検査
手軽になった便の潜血検査
 まず直腸指診を受けます。これは医師が肛門から人さし指を入れて、肛門と直腸の内部を
直接さわって調べるものです。特に直腸がんの場合は、約9割が直腸指診によって発見できます。
 次に、便に血が混ざっているかどうか、便の潜血反応を調べます。以前は食事に含まれている
肉や魚の血と、患者自身の血を区別することができず、食事制限の後に検査をしていましたが、
最近では人間の血だけに反応する免疫学的な検査法が開発され、これが主流になってきています。
ただし、歯茎や胃からの出血には反応します。
 見落としがないよう2日間の便をとる「2日法」も勧められています。
また、便の潜血反応検査は、集団検診に向いた方法なので、健康診断などにも取り入れられて
います。
 しかし、大腸がんでも常に出血があるとは限らないので、排便や腹部に異常がある人など、
何らかの症状がある人は、便の潜血反応が陰性だからといって、安心はできません。
 潜血反応が陽性の場合や、陰性でもくわしく検査する必要がある場合は、直腸鏡やS状結腸の
内視鏡による検査を行います。検査前に浣腸するだけなので、外来で受けられます。
大腸がんの多くが、直腸やS状結腸にできるので、大切な検査となります。
 次に行う注射X線検査は、大腸がんの診断を確定したり、大腸全体を調べる内視鏡検査の
一段階前の検査として実施されるものです。肛門から空気と造影剤(バリウム)を注入し、
大腸の内腔をX線で撮影します。
 最も詳しい検査は、大腸内視鏡によって、大腸のすみずみを観察することです。大腸内視鏡は、
小さなポリープや早期がんをその場で取り除くこともできますし、細胞を取り出して生検による
確実な診断を行うこともできます。
治療
早期がんなら内視鏡的治療
 大腸がんの治療は、病変部を取り除くことが基本です。内視鏡を使って切除する方法と、
外科手術によって切除する方法があります。
 大腸がんの場合、化学療法は一般的でありません。ただし、最近は化学療法と免疫療法を
組み合わせた免疫化学療法が、手術不能の患者などに対して、一部の施設で試みられています。
 また、直腸がんに対しては、ケースによって放射線療法が使われています。外科手術が
困難なほど進行してしまった場合や再発の場合、あるいは再発防止のための補助的療法として
用いられています。なお、放射線療法は結腸がんには効果が期待できないため、
使われていません。
・内視鏡的治療(ポリペクトミー)
 大腸の腸管は内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、しょう膜の各層からできています。
がんが粘膜から粘膜下層にとどまっているものを早期がんといいます。また、腸粘膜から
腸の内側にキノコ状に突き出たものをポリープといいます。ポリープは直径1cm以下なら
良性のことが多いのですが、1cmを超えるものは、一部もしくは全部ががんである可能性が
高くなります。
 肛門から内視鏡を入れて検査した際に、ポリープや、がんが粘膜下層にごく浅い部分に
とどまっている早期がんを発見した場合は、そのまま切除することがあります。
内視鏡の先端からスネアーとよばれる細い針金状の輪を伸ばし、この輪を早期がんやポリープの
突起部分にひっかけ、スネアーに高周波電流を流して切り取るものです。
この治療のことをポリペクトミーといいます。
 早期がんであっても、キノコ状の突起ではなく、扁平な形をしたものもあります。その場合は、
腫瘍の近くの粘膜下に生理食塩水を注入して、人工的に隆起をつくって切除を行います。
 胃と異なって大腸にできるポリープは、たとえ良性のものでも、全体の10%程度は将来、
がんになる可能性もあるので、見つけたら切り取ることになります。がんの発見が早く、
病変部が小さければ、複数のがんが見つかってもポリペクトミーだけで治ります。
 この方法は検査と治療が同時にでき、短時間で終わりますし、傷がつくのも腸の粘膜だけなので、
患者にとって非常に楽という利点があります。
・外科手術
 がんが粘膜下層の深いところまで達しているような場合、あるいはそれ以上進行している場合は、
外科手術で大腸の一部もしくは全部を切除しなければなりません。大腸は大部分を切り取っても、
消化・吸収にはあまり影響がありません。
 結腸がんは手術後に機能障害が残らないため、右側の結腸にがんがあれば右半分の結腸を、
左側にあれば左半分の結腸を切除するといった具合に、広く切除する方法がとられています。
 一方、直腸がんの場合は、がんの発生している場所や広がりによっては、手術によって排便、
排尿、性機能などの障害が避けられません。最近はこれらの機能をなるべく温存する手術法が
開発されていますが、やむをえずこれらの機能を犠牲にしたり、人工肛門をつけなければ
ならないケースもあります。
[肛門括約筋温存術]
手術器具の進歩で肛門括約筋温存術が可能になり、人工肛門を必要とするケースが
激減しました。直腸がんのうち約70%で、この手術法がとられています。
[自律神経温存術]
骨盤内のリンパ節を徹底的に切り取ると、自律神経を切断することになるため、自然排尿が
できなくなるほか、男性の場合は性機能も失われてしまいます。こうした事態を避けるために
開発されたのが自律神経温存術です。
がんの広がりを正確に把握する診断技術の進歩によって、がんの治癒率を下げずに機能温存が
できるよう、この手術法が試みられています。
[直腸局所切除術]
直腸下部にある早期がんの場合に用いられています。この方法をとれば、排便、排尿、性機能は
完全に温存することができます。
[直腸切除術]
がんが肛門に広がっていたり、肛門に近い部分にできた場合は、直腸切除術を行います。
このケースでは人工肛門をつけることになります。
人工肛門とはどんなもの?
 人工肛門はギリシャ語で「ストーマ」とよばれ、「口」を意味します。また、人工肛門を設置している
患者を「オストメイト」「オストミー」とよぶことがあります。かつては、大腸がんの手術といえば
人工肛門を連想しましたが、肛門括約筋温存術など手術法が進歩し、肛門の排泄機能を
残したまま大腸がんの治療ができるようになりました。
 しかし、がんの発生場所や広がりによっては、人口肛門が必要となるケースがあります。
肛門近くの筋肉を広く切り取ったり、肛門そのものを切除した場合は、人工肛門を設置しなければ
いけません。
 人工肛門は腹壁に穴をあけ、皮膚まで引き出した腸の一部に特殊な装具を張り、そこに
「パウチ」とよばれる集便袋を取り付けて排便する仕組みです。はじめは抵抗が
あるかもしれませんが、命にはかえられません。
 最近は人工肛門も患者のQOL(生活の質)を考えて、防臭性の素材が使われたり、
皮膚への刺激が少ない皮膚保護剤が開発されるなど、工夫されたのもが普及してきました。
 人工肛門の管理を専門とする看護婦のトレーニングシステムもつくられ、患者が生活のなかで、
なるべく自然体で人工肛門と付き合えるようなフォロー態勢ができています。
人工肛門を持つ患者の会も結成されており、情報交換や精神的なサポートを得ることもできます。
予後
早期がんならほぼ100%治る
 大腸がんの予後は比較的よく、早期がんなら5年生存率がほぼ100%となっています。
進行するとリンパ節やほかの臓器に転移することもありますが、その場合でも球状に固まってる
ことが多いため、再び手術で取り除くことができます。転移のある進行がんの場合、手術による
5年生存率は約60%です。
 また、大腸がんで手術した場合、手術後約25%に再発や転移が起きています。
がん組織から分泌される糖たんぱくやペプチドを目印にしてがんの有無を調べる腫瘍マーカーの
測定、肝臓の超音波検査、胸部X線検査などを定期的に行い、再発・転移をいち早く発見することが
大切です。再発であっても、早期に発見すれば、十分治療することができます。
予防
食物繊維を豊富にとる
 大腸がんを予防するには、食事に注意することが一番大切です。肉類や動物性脂肪の多い
食べ物、たとえばバターや生クリームをたっぷり使った洋菓子や肉料理などを控えめにして、
食物繊維を多く含む野菜やキノコ、海藻類を食べるように心がけるとよいでしょう。
昔ながらの和食が、大腸がんの予防には適しているということです。
 また、フィンランドでは大腸がんが少ないという報告があるのですが、その原因のひとつは
全粒麦パンをよく食べるためと考えられています。全粒麦に含まれるリグニンという食物繊維に
予防効果があるからです。
 食物繊維は水を含んでふくらみ、便を増やしたり、腸壁を刺激して、排便を促す働きをします。
その結果、発がん物質を便としてどんどん体外に排出してしまうので、がんになるリスクを減らす
ことができるのです。
 また、食物繊維は、がんの発生を促進させる働きがあると考えられている、二次胆汁酸を
吸着する働きもあります。二次胆汁酸は、脂肪をたくさん食べたときに多くできるものですから、
肉料理を食べるときは、食物繊維を多く含む食べ物を一緒に食べることが特に大切です。
食物繊維は消費エネルギー1,000Kcal当たり10g摂取するとよいとされています。
成人では1日20〜25gの食物繊維が必要です。
 食物繊維を多く含む食べ物は、ひじき、れんこん、にんじん、だいこん、ほうれんそう、かぼちゃ、
りんご、大豆、玄米、小麦ふすま(薄皮)などです。レタスやセロリなどは、食物繊維が多いように
思えますが、実際はそれほど多くありません。
 一方、大腸がんを発見するための定期検診も重要です。便の潜血検査は手軽に受けることが
できますから、40歳以上の人は年に1回は受けるとよいでしょう。また、日ごろから自分で便の
色をよく見て、血便が出るようなら、病院で詳しい検査を受けるようにしてください。
特に、家族に大腸がんにかかった人がいる場合は、注意しなければいけません。
まとめ
受診をためらわないこと
 大腸がんは、がんのなかでもとりわけ食事と関係が深いものです。したがって、食事に注意して
生活を送れば、十分に予防することができます。脂肪分の摂取を控え、食物繊維の多い
食事をとるように注意しましょう。
 また、早期に発見すれば、ポリペクトミーで完治することができますから、定期的な検診を受ける
ことが大事です。
 大腸がんの場合、症状があっても恥ずかしいという感情から、受診が遅れることが少なく
ありません。しかし、血便や便通異常(下痢や便秘)、腹部膨満感、残便感、便が細いなどの
症状が続くようであれば、ためらわずに受診しましょう。

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