C型肝炎
C型肝炎は、慢性肝炎の原因の約70%を占めるといわれ、
放っておくと肝硬変や肝臓がんに移行するおそれがあります。


ヘルスチェック
こんな症状に注意!
・1990年以前に輸血をうけたことがありますか?
・かぜのような症状が続いていませんか?
・全身のだるさがありませんか?
・白目や皮膚が黄色っぽくなっていませんか?
・おしっこの色が濃くなっていませんか?
・お酒がまずくなっていませんか?
どんな病気ですか?
HCVの感染によって起こる
 C型肝炎は、日本人に多いウイルス肝炎の一つで、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって
ひきおこされる病気です。
 人間のからだは、ウイルスや細菌などの異物(抗原)が侵入すると、たんぱく質の一種である
免疫抗体がつくられ、抗原を攻撃して排除する免疫システム(抗原抗体反応)を備えています。
 肝炎ウイルスに感染すると、肝細胞の中で抗原抗体反応が起こることがあります。
これが原因となって肝細胞が壊れ、その結果肝臓が炎症を起こします。
絶えず炎症が続いている肝臓では、次第に細胞が減少し、全体的な構造の乱れが
損なわれていきます。
 20年ほど前まではウイルス性の肝炎は、流行性肝炎とよばれたA型肝炎と血清肝炎と
よばれたB型肝炎の2種類だけと考えられていました。その後、A型でもB型でもない別の
ウイルスによる肝炎があることがわかり、当初はこれを非A非B型肝炎とよんでいました。
1989年に新たなウイルスの遺伝子が発見され、C型肝炎ウイルスとして正確な診断が
できるようになりました。
 現在、肝炎ウイルスはA型、B型、C型、D型、E型、G型の6種類が確認されています。
C型肝炎ウイルスは血液を介して感染するため、かつては輸血や血液製剤、消毒が
不十分な医療器具などによる医療行為が主な感染経路でした。C型肝炎の感染者の
多くが40歳以上の人に偏っているのもこのためです。
 しかし、現在は輸血血液の徹底したスクリーニングや使い捨ての注射器の普及などにより、
衛生環境が整備され、医療機関で新たに感染するおそれはほとんどなくなりました。
 このため、1989年以前は年間約7万人いたと思われたC型急性肝炎の発生者数が、
現在は減少しています。
 C型肝炎の大きな特徴は、自覚症状に乏しいことです。献血や人間ドック、健康診断で
偶然病気がみつかるケースが少なくありません。
 また、急性肝炎から慢性化しやすいことも特徴の一つで、いったん慢性化すると自然に治る
ことはありません。しかも、最終的に肝硬変や肝がんに移行する可能性が高いので、
十分な注意が必要です。
症状
感染しても自覚症状が現れにくい
 C型肝炎ウイルスに感染すると、4〜5週間後にC型急性肝炎を発症します。
急性肝炎にかかると、一般的には発熱や黄疸、全身のだるさ、食欲不振といった症状が
みられるものです。なかでも黄疸は、最も重要な初期症状とされています。また、急性肝炎の
初期には、肝臓が腫れるため、人によっては右のわき腹が痛むこともあります。
 ところが、C型急性肝炎に限っては、これといった自覚症状が現れず、黄疸がでることも
きわめてまれです。C型急性肝炎にかかって、体調がおかしいと感じる人は全体の60%ほどで、
残る40%の人はまったく自覚症状が現れません。また、たとえ体調がおかしいと感じても、
かぜや過労、ストレスなどと考えて見過されがちです。
  C型急性肝炎の発症者の約70%は、C型慢性肝炎へと進みます。急性肝炎が治る人と、
慢性肝炎へ移行する人では、初期症状の強さや肝機能の状態に違いがみられないため、
慢性化するかどうかを簡単に予測することはできません。
 しかし、輸血で肝炎になった人(輸血後肝炎)と輸血以外で肝炎になった人を比較すると、
輸血後肝炎のほうが慢性肝炎に移行する割合が高いことがわかっています。
これは輸血による感染のほうが体内に入るウイルスの量が多いためと推定されます。
 慢性肝炎は、ウイルス性肝炎が6ヶ月以上持続した状態と定義されます。
慢性肝炎に移行してからも、特に目立った自覚症状は出てきません。疲れやすくなったり、
皮膚がかゆくなったり、酒がまずくなったり、黄疸が現れたときは、すでに病気がかなり
進んでいると考えられます。
・慢性肝炎の自然治癒は期待できない
 C型慢性肝炎の場合、進行が止まり、症状が落ち着くことはあっても、自然治癒はほとんど
期待できません。ある調査によれば、ウイルスが自然に消えて治った人は、慢性肝炎になった
人の2%以下でした。また、慢性肝炎に移行してからの期間が長くなるにつれ、肝硬変へ
移行する可能性が高くなります。個人差はありますが、感染してから早ければ10年、
遅くても30年ほどで肝硬変に進みます。さらに、肝硬変になってから5〜10年経過すると、
肝臓がんに移行する確立も高くなります。
 このように、自分でも気づかないうちに病気が少しずつ進行してしまうことが、
C型肝炎の最もこわい点といえます。
検査
抗体の有無で感染を確認
 C型肝炎の検査には、血液中にウイルスがいるかどうかを調べるウイルスマーカー検査と、
肝臓の状態を調べる肝機能検査の2種類があります。
・ウイルスマーカー
 C型肝炎に感染しているかどうかを調べるには、HCV抗体検査とHCV・RNA(C型肝炎ウイルス
核酸)検査を行います。
 HCV抗体検査は、血液中にHCVに対する免疫抗体があるかどうかを間接的に調べる検査で、
陽性ならば体内にHCVが存在し、すでにC型肝炎になっていることが疑われます。
 一方、HCV・RNA検査は、HCVの遺伝子が血液中にあるかどうかを直接調べるものです。
HCV抗体検査では、過去にC型肝炎にかかったものの、現在は治っている人も陽性とでてしまう
ことがあるため、より確実な診断をするために、HCV・RNA検査を行うことが必要です。
HCV・RNA検査の結果が陽性ならば、ほぼ間違いなくC型肝炎ウイルスに感染していると
いえます。
・肝機能検査
 肝臓の状態を調べる肝機能検査の代表的なものは、GOT,GPTです。GOTとGPTは、
どちらも肝臓の細胞内に含まれる酵素で、何らかの原因で肝細胞が破壊されると血液中に
もれ出てくるため、通常より高い数値を示すようになります。したがって、血液中のGOT、GPTの
値をみれば、肝臓がどの程度障害されているかがわかります。
 また、C型肝炎は、急性肝炎から慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと移行するため、定期的に
GOT、GPT値を検査して変化をみていけば、肝炎がどの程度の早さで進行しているかも
わかります。
 さらに、肝臓の働きを見るアルブミン検査、胆汁の流れを見るビリルビン検査、慢性化の
進行具合をみるZTT、ICG負荷試験など、ほかの肝機能検査も併用して診断の参考にします。
また、血小板の数は肝硬変にどのくらい近ずいているのかの指標になります。
・画像検査・肝生検
 血液検査で肝機能の低下や異常が認められた場合、必要に応じて超音波(エコー)検査、
CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴映像法)検査などの画像診断や肝生検も
行われます。
 エコー検査は、画像検査のなかでも最も手軽で安全なものです。肝臓の表面の様子、
肝臓内部の結節(こぶ)や腫瘍の有無、血管や胆管の状態を観察できます。
 肝生検は、肝臓に細い針を刺して細胞の一部を取り出して顕微鏡で調べる検査です。
脂肪肝と肝炎の区別、急性肝炎と慢性肝炎の区別、慢性肝炎と肝硬変の区別など、
肝臓障害の状態をより正確に診断するために重要な検査です。
 C型肝炎では、将来の病状を推測したり、それぞれの症状にあった正しい治療をするために、
これらの検査を組み合わせて、総合的に診断します。
治療
抗ウイルス療法が効果的
 C型慢性肝炎の治療法としては、病気の原因であるウイルス自体を攻撃してとり除いてしまう
原因療法と、症状を和らげたり進行を防ぐ対処療法があります。
 原因療法で現在最も効果を上げているのが、インターフェロンという抗ウイルス剤の投与です。
インターフェロンには、アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)の3種類がありますが、
ウイルスを抑える効果があるのはアルファとベータです。
 治療ではヒトの細胞を培養してから抽出したインターフェロン、あるいは遺伝子を組み換えて
合成した人工的なインターフェロンを使います。
 インターフェロンアルファは、最初の2〜4週間、毎日筋肉注射で投与し、その後は週3回の
注射を4〜5ヶ月続けます。インターフェロンベータは、8週間、毎日静脈注射で投与します。
どちらにしても、効果のある人ならわずか1週間でC型肝炎ウイルス核酸が検出されなくなります。
 一般に、抗ウイルス剤といわれるものは、ウイルスが増えるのを抑えるだけで、ウイルス
そのものをなくすことはできません。しかし、C型肝炎に対するインターフェロンは、うまくいけば
ウイルスの遺伝子まで破壊して、完治させてしまうことも不可能ではないのです。
実際、これまでにインターフェロンによる治療を行った人の40〜50%はウイルスが減少し、
そのうち70〜80%の人はウイルスそのものが消失したという結果が出ています。
また、ウイルスが完全に消えないまでも、GOT、GPT値が下がり、肝機能が正常化しています。
肝機能の状態が正常に保たれていれば、肝硬変まで進む危険性は少なくなり、さらには
肝がんの発生率の低下にもつながります。
 このように、インターフェロンは、肝炎自体の治療はもちろん、肝硬変や肝がんへの進行を
防ぐという点でも、効果の高い画期的な治療法といえるでしょう。
 しかし、残念なことにインターフェロンによる治療は、すべてのC型慢性肝炎患者に有効という
わけではありません。C型肝炎ウイルスの遺伝子にはさまざまなタイプがあり、同じように
治療をしても、遺伝子のタイプによって、効果に違いが出てくるのです。
 ちなみに、現在判明している遺伝子のタイプは、6グループ28種類で、日本では主に
「1b」「2a」「2b」というタイプがみられます。このうち最も多いのが、「1b」ですが、
インターフェロンの効果はあまり高くありません。逆に、「2a」「2b」に対しては、
比較的効果を上げています。
 このほか、血液中のウイルスの量によっても治療効果に大きな差があり、ウイルスの量が
多いほど効き難いことがわかっています。インターフェロン治療には、多くの副作用が伴うため、
むしろ投与しないほうがよいケースもあります。
例えば、65歳以上の高齢者で、動脈硬化がみられる人は、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす
おそれがあるので勧められません。また、糖尿病や自己免疫疾患の人、循環器系の病気を
もつ人は、かえって病気を悪化させることもあります。肝硬変にまで至った人には、
むしろ投与するべきではありません。
 異常のような点から、インターフェロンの投与に際しては必ず肝生検を行い、適応条件を
満たしているかどうかを十分に検討したうえで、慎重に治療を進める必要があります。
 インターフェロンの副作用が強く出やすい人やインターフェロンの効果が期待できない場合は、
対処療法で肝細胞の破壊を防ぎ、病気の進行を抑えます。
 対処療法でよく使われる薬は、グリチルリチン製剤やウルソデスオキシコール酸などが
ありますが、肝臓の炎症に対して特に威力を発揮するのが、グリチルリチンを主成分とする
強力ネオミノファーゲンCです。使い始めてしばらくは、ほぼ毎日静脈注射で投与し、
GOT、GPTの値が改善したら、徐々に注射の回数を減らしていきます。
この薬は副作用も少なく、使い方次第では、GOT、GPT値を正常値近くまで下げることができます。
また、漢方薬の小柴胡湯の併用もGOT、GPTの値を下げる効果があります。
インターフェロンの副作用
 C型慢性肝炎のインターフェロン治療では、体内で自然にできるインターフェロンの量をはるかに
超える量を注入するため、どうしてもさまざまな副作用がでてきます。
 治療を始めて1〜2週間目の初期段階で、ほとんどの人に現れるのが発熱、悪寒、頭痛、
筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、悪心(吐気)、食欲不振などのインフルエンザ様症状です。
また、皮疹、下痢、たんぱく尿や、まれにけいれんなどの神経障害もみられます。
発熱の程度はだんだんと軽くなっていきます。
 2週間から3ヶ月の治療中期になると、10〜20%の人に脱毛がみられます。
また、甲状腺ホルモンの異常や糖尿病、不整脈や胸痛などの循環器系の症状、咳や呼吸困難
などの呼吸器系の症状がでてきたり、精神症状として、うつ状態になることもあります。
このほか、眼底出血、免疫異常などもみられます。
 特に注意が必要なのは、間質性肺炎です。間質性肺炎は、急性呼吸促迫症候群の形で
急に起こるのが特徴です。肺の広い範囲に炎症が及ぶと生命にかかわることもあるので、
症状が出た時はすぐに投与を中止しなくてはなりません。
 うつ病についても注意が必要です。前兆として、強い不眠症が現れます。家族にはうつ病になる
可能性があることをあらかじめ知らせておき、何か精神的に変化がある時は医師に連絡するように
しておくことが大切です。
 インターフェロンの治療中は、1〜2週間に1回は医師の診察を受けて、副作用の早期発見に
努めることが必要になります。
予防
血液感染ルートを知っておく
 C型肝炎ウイルスの感染は血液によるものです。かつては、輸血や人工透析が最大の
感染ルートでしたが、輸血血液のスクリーニングが徹底されるようになって、C型肝炎の発生は
激減しました。また、使い捨ての注射針や注射器を使うことで、医療行為から感染する心配は
ほとんどなくなりました。
 かわりに、近年問題になっているのが覚醒剤の静脈注射です。覚醒剤は同じ注射器の針を
替えないで回し打ちすることが多く、血液を介して感染するウイルスの大きな感染ルートと
なります。このため、覚醒剤常習者の約半数にC型肝炎がみられるといわれます。
 このほか、不特定の相手との性行為や入れ墨なども、確立は低いものの感染の危険性が
あります。
 覚醒剤の使用はいうまでもなく、こうした行為の危険性をよく理解し、自ら身を守ることが大切です。
なお、C型肝炎ウイルスを保有している母親から生まれた子どもの約10%にC型肝炎ウイルスが
感染するとされています。母子感染の予防法については、現在研究が続けられている最中で、
今後の予防抗体やワクチンの開発が期待されます。
日常生活の注意点
「焦らず気長に」が自己管理の基本
 急性期には、入院して安静と食事療法を行い、落ち着いたら1〜2週間ほど自宅で療養して
社会復帰します。
 問題は慢性化した場合ですが、肝生検を行うときやインターフェロン治療の初期の場合を除けば、
基本的には、ごく普通の社会生活を送っても、まったく支障はありません。要は、病気を意識しすぎて
焦ったり、悩んだりしないことです。慢性肝炎の治療は、長くかかるのが特徴ですから、
病気と仲良くつきあう気持ちで生活することが大切です。
 積極的にからだを動かすことも重要です。よく、肝臓病は安静第一といわれますが、これは
急性期のことです。慢性肝炎の場合、過度の安静は体力や筋力を低下させるだけでなく、
肥満を招いたり、ストレスがたまったりと、デメリットのほうが大きいものです。肝機能が安定している
とき、つまり肝臓の働きが損なわれていないときには、積極的に運動するように心がけましょう。
 ラグビーや格闘技、冬山登山、マラソンなどの激しいものは別として、例えばジョギングやゴルフ、
テニス、水泳など少しハードに思われるスポーツでも大丈夫です。
 ただし、慢性肝炎が一時的に悪化して、GPTの値が高くなったり、黄疸や倦怠感、食欲不振などの
自覚症状が出た場合は、安静が必要になります。
 肝臓病には、高たんぱく、高カロリー食がよいとされていますが、C型慢性肝炎の場合、それほど
神経質になる必要はありません。最近の食事はカロリーもたんぱく質も十分すぎるほどですから、
むしろ栄養のとりすぎによる肥満から、脂肪肝にならないように注意したいものです。
食事は高カロリーのものよりも、たんぱく質、ミネラル、ビタミン類などのバランスがとれた食事を
とるようにするとよいでしょう。
 お酒に関しては、原則として禁酒です。病気の状態によっては、完全に禁酒する必要がない
ケースもあるので、主治医と相談しましょう。
 さらに、自分自身が感染源となって、ほかの人に感染させないよう配慮することも、病気に
対する自己管理と同様に大切です。
 歯ブラシやカミソリ、ピアス、タオルなど、血液がつきやすい日用品は、必ず自分専用のものを
使用しましょう。
 また、歯の治療を受ける場合は、事前に医師に伝えて、予防策を講じてもらうようにしましょう。
まとめ
肝炎に対する正しい知識を身につける
 C型肝炎の治療法は、インターフェロンの登場などによって、最近10年間で確実に進歩して
きました。今もワクチンや治療法の研究、開発が続けられ、「一度かかったら治らない」とされてきた
肝臓病も完治が期待できるようになってきています。しかし、C型肝炎について正しい知識を
もっている人はまだまだ少ないのが現状です。特に、感染に対しては根拠のない恐怖心や誤解が
多く、C型肝炎患者であることがわかると、社会的に不当な差別を受ける例も少なくありません。
 また、C型肝炎の治療は、長期にわたることが多いので、医療費の自己負担が重くなることも
大きな問題です。
 正しい知識の普及や患者に対する助成などは、一部の自治体や民間団体で行われているものの、
十分にカバーされているとはいえません。
 感染者が適切な治療を受け、質の高い生活ができるように、社会的な活動や助成制度の整備
など、国や自治体での本格的な取り組みが待たれるところです。

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